世界の窓

このページでは海外で現在活躍されているビジネスマンや暮らしておられる方の生の声を、掲載しております。
現在、海外で滞在されている方で、その国について、レポートして下さる方、広く募集いたします。

  fineview@hotmail.co.jp

◆ 海外特派員: イロ2(ペンネーム)



 
北マリアナ連邦・サイパンに在住されて、6年になるそうです。
「最近、体型がチャモロ化してきた!」とおっしゃるお茶目な方です。
 
 

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【もっとタフに?】  by イロ2
ここ2年を振り返って。。。。
ワタシハ ナニジン?  
慣れるとはツマラナイものです。
恥ずかしながらの英会話
サイパンの新しい顔の裏事情


(99/09/01 サイパンから便り)

◆  『日々、悲しいほどに怒ってます。』 イロ2@サイパン
 
 

先日、友人がショートバケーションため日本へ行った時の事。

「昔からの友人たちと集ってワイワイやってたんだけど、私の性格がとっても変わったって皆云うのよ。」

「日本に居た時は、そんなにいつも怒ってなかったって。」

「なんか、とっても話しが合わなくなちゃっうんだよね。」

多分、私がこちらでの暮らしを話したら、やはり昔の友人たちも同じ事を云うだろうと思った。

私たちの住む島に限らず、それは日本以外に住む人に同じ経験があるのではないかと。。。。
 

 観光地、それも南の島に住む身なので、日本から来たツーリストの人々には

「いいですねぇ、こんな暖かいところに住めて。」とか

「私も海外に住みたいと思ってるんです。」なんてしょっちゅう云われます。

他の国に住む知人や友人たちも、日本人に出会えば同じ事を云われているようだ。

中には「いいですねぇ、毎日遊んでられて。」と云われて激怒した知人もいるし。
 

 友人と私が島での暮らしで怒りんぼになったのは、別に「遊んでられてていいね。」と云われた訳ではないのだけれど、島で生きてゆく為にこなさなければならない雑務を毎回繰り返す度、結構おっとり派だった私たちは日本での『のほほぉ〜んモード』を解除しなくてはいけなくなった。それは電話代や病院の支払いであったり、クーラーの故障であったり、至る所に怒りんぼへの変身モード・スゥィッチが隠されている。

「どうして前回支払ったのに、また請求がきているの?」

「あんたが払ってないからだろ。」

「払ってるよ。ちゃんと確認して。」

「だから、コンピュータには残金って表示されてるだろ。」

こんな時は何も用意して来なかった自分を悔やむしか手立てがない。直ぐさまレシートのある場所へ行き、証拠品を相手に叩き付けなくては『負け』なのである。レシートの行方がわからなくなったらOUT!
冷静な態度で接し続けねばならないのだけれど。

 これは政府機関でも同じこと。何も信用なんて出来ない。税金の支払いでも『政府機関だから確かだろう』なんて考えは甘いのである。理不尽な態度に『勝つ』ためには、全ての書類と証拠品を用意して、淡々と問題になっている部分をクリアし続けて、やっとコンピュータに入力されている『虚実』の部分を削除出来る。でも、そのコンピュータ入力をしきれる人物がその場にいなければ、また後で!になってしまう。おまけに彼等は「Sorry」なんて云いやしない。自分のミスでなければ関係ないのだし、自分のミスでも彼等にとって謝ることは『負け』だから。
 

 『勝ち負け』については、米国人と結婚した友人との会話でも出てくる。

 彼女の夫はとてもおおらかで素敵なヒトなんだけど、時々彼女は外で本当におおらかに振る舞う彼を、理解出来ない時があるようだ。でもあまり文句も言えないで苦しむ時があり、ちょっと涙してしまった時、幼い娘が父親にそれを告げた。彼は彼女の涙に対しては心配し、状況を説明したけれど絶対に「Sorry」とは云わなかったそう。

 「どうして一言でも謝ってくれないのかしら?」という彼女の言葉に私は、

「どんなに素敵なヒトで、状況判断出来るヒトでも、やはり米国で教育を受けたヒトだから、『勝ち負け』が刷り込まれているのかも?」

どうだろう?もちろん彼女の夫とはそんな話しはしないけれど、ただ一言の「ごめんなさい」で、それまでの心のざわめきが落ち着く事って多いんじゃないかな。謝れば事が済むと思われるのはシャクではあるけれど、そんな気持ちになれるように刷り込まれた日本人って多いでしょ?
 

 日本人ツーリストとも出会う機会が多いと、島での常識は通じない。例え自分のミスでなくとも、おまけにただ提携しているだけの日本サイドの問題でも、『(私たちのミスではないのですが、)こんな事になって大変でしたね。申し訳ありませんね。』のような言葉を一言、いや何回か発しないと問題が更に大きくなってしまう事が多いし、自分が相手の立場になった事を想定すれば、自ずと相手を思い遣ってそういう言葉が出てきてしまうもの。こんな時に島の常識でしか対応出来なければ、日本人同士でもギクシャクしてしまう。
 

 某人は島在住10年をとっくに過ぎ、既にオーナーでもある。ある日、買い物ついでに知人のところへ寄ると、その某人から電話が入ってきた。目前での会話だっただけに、話しの内容は丸聞こえで、その内容に私はとても驚いてしまった。

「依頼書をfaxで送信しなくてはいけないのだが、どうやって書くのかな?」

あまりにも簡単なレンタル依頼。ただ相手の名前と自分の名前を書いて、レンタルするものと利用する日付けを記入するだけ。電話を切ってから知人は

「知らないでもやってける事が多いのよ。」

「でも、オーナーでしょ?政府とのやりとりとか、、、、」

書類関係は全て、日本語も理解する島の事情に明るい人物に頼んでしまえば何もしないでいいのだろう。でも、それでいいのか?あんたは島で生きて行こうとしてるんじゃないのか?と驚きを通り越した気持ちになった。

 

 日本以外の国に住んでも、日本人コミュニティーにどっぷり浸かり、お金を使って日本語を流暢に操る人へ面倒な事は全て任せていれば、日本で刷り込まれた日本人の暮らしを続行出来るだろう。それには相当信頼のおける人物を選ぶ必要があって、選べたとしても、選べなかったとしてもお金にまつわるトラブルは付きもの。選べなかったら渡したお金は持ち逃げされ、選べたとしても時間の経過と共に割高なベースアップを要求されたりするケースが多すぎる。では自分たちで、となると、何度も電話を掛けたり、相手のオフィスに足を運び、理不尽な扱いを受けている自分たちの書類を探し出し、「早く終わらせてね!」と何度も確認を取らなければいけない。時間の経過とともに「ここは日本ではないのだから、この国の方針を守らないといけない。英語をもっと理解しろ!」と開き直る。こういうパターンが多いので、何度も確認をとっているのに、急に母国語が違うから、お前は解ってないんだろ!と言い渡されてしまうと、私が日本人である事は、この島では意味がないんだな、と悔しい思いもしてしまう。そして、ちょっと場所を変えれば『日本人=金の成る木』扱い。

 まぁ、この島の人間だけではなくて、仕事上の付き合いのある米国人とて自分にとって不利益だと判断すればやれ弁護士を間に入れて、とか法律云々を持ち出し、かといって自分だちはレイジーな対応で同じ事なんだけど。。。。

 

 外部とも接触をしなければならない私たちは、そんなこんなを数年し続けて日々鍛えられてしまったのだ。だから、疑い深くなってしまい、直ぐに怒りんぼモードになってしまうのを、「嫌な性格になったね。」と云わないでね。