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おじいちゃん 戦争のことを教えて
■著書名:【おじいちゃん 戦争のことを教えて】
■ジャンル:歴史
■著者名:中條高徳
■出版社:致知出版社
発行年:1998年 定価:1,400円
■ISBN4-88474-555-8
■おすすめ度:★★★
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書店に平積みにされていたので手にとってみた。題名とそして軍服姿の写真
の表紙を見ると,なにやら右翼っぽい本なのかなと思ってしまったが,作者の
名前に見覚えがあったのでパラパラと中味を見てとりあえず買ってみた。知ら
ない名前だったら手にも取らなかったかもしれない。こういうとき,名の知ら
れた人間は得である。
ニューヨークの高校に通う孫娘から著者のもとに一通の手紙が届いた。歴史
の授業で,第一次大戦・第二次大戦を経験した人の話を聞こうという課題が出
たから,おじいちゃんに当時の体験を教えてほしいとの話である。手紙には全
部で16の質問が並べられていて,本書の目次から抜粋すると以下のような質
問である。著者はそれぞれの質問に対して自分の経験と意見を分厚い手紙にし
たためた。そしてそれが本書となって出版されたわけである。
[質問1] おじいちゃんの生まれた頃の日本は?
[質問2] おじいちゃんが受けた義務教育は?
・
・
[質問5] おじいちゃんは戦場に行ったの?
[質問6] 終戦後,おじいちゃんはどうしたの?
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[質問9] アメリカとの戦争は正しかったと思う?
[質問10] 終戦直後の日本の様子を教えて
・
・
[質問14] 戦後のアメリカの影響について教えて
[質問16] 日本のこれから,そしてアメリカとの関係は?
*
高校生の孫娘に向けて書いたというだけあって,平易な言葉使いで文章も判
りやすい。250ページほどある本ではあるが,比較的文字が大きいせいもあ
ってか一気に読んでしまうことができる。改めて対戦前後のこと,そして戦後
の日本人というテーマについて好奇心を持つことができた。
自分が教えてもらった学校での歴史の授業を思い起こしてみると(もう何十
年も前のことで記憶は定かではないが),中学でも高校でも大概の場合,古代
からゆっくりと始まって明治維新過ぎあたりで学期末の時間切れだったような
気がする。
大正・昭和の頃は一切なしか,または大急ぎの読み飛ばしだっただろうか。
日清・日露そして第一・第二次対戦の時代についての背景などをきちんと授業
でやっていたら,また違った見方もできたかもしれないなあと思う。さて今の
学校ではどんな授業になっているのだろう。
もう50年以上も過ぎ去ってしまったが,大戦の時代というのは,やはり真
剣に捉えておくべきだと思う。
何故そういう世界になっていったのだろうかと,今更ながらに考えるための
トリガーにもなるだろうし,しかも読みやすいし,この後またいろんな本を,
そしていろんな考え方を吸収していくことに興味をもてればよいなあとも思う
ので,ちょっと手にとってみるのもいい本ではないだろうか。
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戦争の正邪は軽々しく判断すべきではないし,またできるものでもないと著
者は言う。それはそうだろう。戦争というのはやはりあってはいけないことで
ある。(とくに現在にあっては) 古く中国の三国時代ならいざ知らず(あの
ころの読み物は今となっては面白い)今もあちこちで戦争をしていることを思
うと,やはり心が塞ぐ。
ニューヨークのテロ事件。あれは戦争を始めてくださいといようなものなの
ではないか。人によっては真珠湾を,神風特攻隊を想起する人もいるともいう
が,全然時代背景も違うし,もしも今回のテロ事件と真珠湾を同一視するよう
な人がいるのなら,それはちょっと歴史教育が誤っていると考えるしかないの
ではないだろうか。
戦後日本の歴史教育は自虐史感にあふれているという。戦後になってそれま
での歴史感は180度変わったしまった。そういえばアメリカの教科書もベト
ナム戦争後に大きく変わったらしい。(アメリカの戦後というのはベトナム戦
争が境になるのだろうか)
こういったところは産経新聞が特集をやっており,各国の教科書を載せてい
るのでそこからある程度読むことができる。ベトナム戦争での長い年月,多く
の犠牲者が生まれ,そして何を得たか。なにも得るものはなかった。自分達の
視点は間違っていたのだろうか。ということから,インディアンの虐殺で当時
はヒーローであった人物が今では悪人に。南北戦争での北軍の英雄(カーター
将軍だったかな?)も今では決してヒーロー扱いはされない。そんな歴史観に
なってきているらしい。(ネガティブ史感と言われている)
話は変わって広島平和記念公園の原爆碑。そこには「安らかに眠ってくださ
い。過ちは繰り返しませんから」と記されている。さてこの文章の主語は誰だ
ろう? 自分がこの碑を見たときには,特には気にもしなかったのだが,確か
に主語がない。落とされた日本が悪いのか,それとも落としたアメリカが悪い
のか。こういう身近なところにも,いろいろと考えさせられることがある。
(2001.11.26)
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