ばくはあるいた まっすぐまっすぐ


■著書名 :【ぼくはあるいた まっすぐまっすぐ】
■ジャンル:絵本
■著者名 :ブラウン,M.W:文/坪井郁美:訳/林明子:絵 
■出版社 :ペンギン社 (発行年:1984年  定価:1000円)
■ISBN4-89274-036-5

■おすすめ度:★★★★★

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 我が息子に対して5歳の頃から「4つの約束」というのを言い渡している。
別段特別なことではないが,以下のようなものである。
 ・人にケガをさせないこと。
 ・人のものを盗らないこと。
 ・嘘をつかないこと。
 ・人の嫌がることをしないこと。
ほんとは,こんなことを言わなくとも自然に自分で判ってくれればいいのだが
(おそらくやがては判ってくるのだろうが),やはり親としてはついつい気に
なるものだから,こんなふうに言ってしまう。
 人を信じること,自分を信じること,そして素直に行動すること,そうであ
って欲しいし,周りの大人たちもみんなそうであって欲しいと思う。

                                  *

 「ぼくはあるいた まっすぐまっすぐ」 題名に魅かれてつい手にとってしま
う。原作は,1944年にマーガレット・ワイズ・ブラウンという作者により
作られたものらしい。1944年というと今からもう50年余りも前になる。
これを坪井郁美が訳し,絵のほうを林明子が描いている。(絵本の世界では,
林明子といえば大御所でファンもとにかくたくさんいる。我が家の本だなにも
林明子の絵本が結構な場所を占めている。)
 ところで,まっすぐまっすぐ歩くというのは,どういう話なのであろうか?
常日頃,我が家の息子にも「まっすぐ進むんやで!」と言っているが,さて絵
本の中で『まっすぐ歩く』というのは・・・。

 ある日小さな男の子が,おばあちゃんの家に電話をしたところ,「今から家
においで」と呼んでもらった。男の子はおばあちゃんの家が判らない。そこで
おばあちゃんは「とにかく,まっすぐまっすぐ来ればいい」と教えてやる。
 さてそこで男の子は家を出発し,とにかくまっすぐ歩き始める。家並みを抜
け,田舎道を抜け,途中で気に入った花なんかを摘みながら,森を抜け,牧場
を抜け,川を渡り,丘を越え,馬小屋を突っ切り,犬小屋を横切り,ミツバチ
小屋を横に見て,とにかくまっすぐまっすぐ歩いて行って,とうとう目指すお
ばあちゃんの家にたどり着く。

 男の子はとにかく一生懸命まっすぐに行こうとしているが,次々と難関にぶ
つかる。それは気になる花であったり,目の前に横たわる川であったり,大き
な丘であったりといろいろなことがあるが,男の子は「うわっ!」とか言いな
がらも夢中で乗り越えていく。

 いろんな難関があろうと,まっすぐ行こうと決心した男の子は,とにかくま
っすぐに突き進んでいく。読み聞かせをしている親としては,ページを繰るご
とに「がんばれ!,がんばれ!」とつい声をかけそうになってしまう。読んで
もらっている子どもは,はてさてどんな思いで見て(聞いて)いるのかはよく
は判らないが,でも一生懸命見入っていた。

                                  *

 おばあちゃんに言われたとおり,とにかくまっすぐ行けば目的の『おばあち
ゃんの家』にたどり着ける。その言葉を信じて,そして自分を信じてまっすぐ
に突き進む。別に今の大人たちと比べようという気がある訳ではないが,自分
の信じた道をまっすぐに行くという清々しさが,この絵本の微笑ましさと一緒
になって,私のような大人にとっても本当に気持ちよく読む(見る)ことので
きる絵本である。

(2000.2.22)

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