![]() ■著書名:【自閉症だったわたしへ U】 ■ジャンル:障害 ■著者名:ドナ・ウィリアムズ ■出版社:新潮文庫 発行年:2001年 定価:819円 ■ISBN4-10-215612-7 ■おすすめ度:★★★★ ====================================================================== 「自閉症だったわたしへ」の続編。一作目の原題は「Nobody Nowhere」そし てこの続編は「Somebody Somewhere」。この題名の違いが著者の気持ちの変遷 を端的に表している。NobodyからSomebodyへ,NowhereからSomewhereへ。この 変遷はとても大きな違いである。(と思う) 「0」から「1」へ。何もない ところから少しでも存在のあるところへ。 自閉症だった(というか今も自閉症であるのだが)著者が,その自閉症であ った自分の幼い頃からのことを書いて本にした。それが大ベストセラーとなっ て世の中に出ていった。これが第一作目である。 本書は,前作「自閉症だったわたしへ」後の3年間の生活を著したものであ る。前作では自分というものを掴むまでの軌跡を描き,本書では自分自身の心 を開いていく過程,大の苦手である身体的接触を克服していく過程,そして数 多くの自閉症者との交流などについて,興味深く描いている。 一作目にはすごいインパクトがあったが,これは少しおとなしくて分析的な イメージがある。自分が自閉症であることを全面に出して,あちらこちらへと 出向いていき,ときには大学での講演もしている。 ただ決して自閉症が治ったわけではなくて,自分が自閉症であることを納得 した上でいかに自分をコントロールするかということを体得したおかげで,大 学での講演もできるようになったらしい。 * 本書は次のような言葉で締めくくられている。 ・わたしは自閉症と闘うことができるのだ。 ・自閉症をコントロールすることができるのだ。 ・自閉症がわたしをコントロールするのではない。 力強い言葉である。自閉症と闘い,自らをコントロールすることができるよ うになった勝利の言葉である。 * * * 本書を読んで自閉症者の内面世界が少し判った気がする。(判ったなどとい うのはおこがましいが・・・) 決して精神科医の書では得られない実感を掴 むことができた。 ただでさえ世の中には色んな人達がいる。 考え方,感じ方,行動の仕方・・・,それぞれが実際千差万別である。本書 を読んで,特に自閉症者の内面を覗けたというだけでなく,世の中には色んな 人達がいて(一人として同じ遺伝子配列を持ってはいないのだから),そうい ったゴチャ混ぜの中に生きているのだと。 だから自分の価値とは違う人達を拒否するのではなくて,優しい心,素直な 心,そして常に人々とあるということ,常に努力を忘れないで生きていくとい うことを再認識させてくれた。 (2001.8.16) |
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