![]() ■著書名 :日本の方言地図 ■ジャンル:言語学 ■著者名 :徳川宗賢 編 ■出版社 :中公新書533(中央公論新社) (発行日:1999年5月20日 第29版 定価:720円) ■ISBN4-12-100533-3 ■おすすめ度:★★★★ ====================================================================== ずっと以前の結婚した当初の夫婦の会話。 「あした,あさって,しあさって の次の日のことを何て言う?」 「ヤネアサッテに決まっているじゃないの!」 「へっ? なんやそれ。 ゴアサッテやないんか」 「なあにそれ,へんなの! シアサッテ・ゴアサッテって,それあなたの家だけで言ってるんとちがう?」 うちの奥さんは東京生まれの東京育ちで,なんといっても標準語地域の出身。 「ヤネアサッテ」に決まってるなんて言われたらもう反論のしようがない。そ れから15年間,極力この話題には触れないようにしてきた。 それがつい最近たまたま本屋に寄ったとき,「日本の方言地図」なる新書が 目にとまり,目次をざっと見てみたら,なんと例の「シアサッテ」の次の日の 呼び方分布地図が載っているというではないか。これはと思いページを繰って みると,なんと日本地図の上で「ゴアサッテ」は西日本全域を覆っており,逆 に「ヤノアサッテ(ヤネアサッテではない)」は関東地方にしか分布していな い。これは長年待ちに待った情報,勢いこんで買ってしまった。さて家に帰り 着いた私はもう勝ち誇ったように奥さんに本を突きつけ,「ほれみろ,このゴ アサッテ地図を! おそれいったか!」と息巻いてしまった。 * 何気なく普段使っている言葉が,どの辺の言葉と同じなんだろうか? 今で こそ標準語として偉そうにしている言葉が,実は本当に限られた地域でしか使 われていなかった言葉だったとか,ああこれは自分の小さい頃から使っていた 言葉と同じだとか思い出させてくれるし,「これが標準語よ!」と人をバカに している者に対しても自信をもって対処できる。さてさて何といい本であろう か。 「日本の方言地図」の中には,「シアサッテ,ゴアサッテ」以外にどんな言 葉が載っているかというと,「かたつむり」 「おてだま」 「かぼちゃ」 「まな板」 「おととい」 「ものもらい」 「くすりゆび」 「しもやけ」 「つらら」 「しおからい」などといったものが50語近くあげられており, いろんな地方でいろんな呼び方がされていることが判る。とくに「しもやけ」 などは面白くて,雪の多い地方では「ゆきやけ」と呼ばれていたらしく,これ なんかは都会人には,スキーに行って日焼けすることしか思い浮かばないだろ うなんて思う。 ところで,この本の元となったのは「日本言語地図」という30〜40年前 の調査報告書であるらしく,言葉の画一化の進んだ現在にあっては,もうここ に載せられているような方言もかなり消えてなくなっているかもしれないが, でも兵庫県の知り合いについ最近聞いてみたところ,「シアサッテ」の次の日 のことを「シシアサッテ」と言っていたところをみると,まだまだ方言は残っ ているのかもしれない。 (1999.12.21) |
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