![]() ■著書名:【図解雑学 フェルマーの最終定理】 ■ジャンル:数学 ■著者名:富永裕久 ■出版社:ナツメ社 発行年:2001年 定価:1200円 ■ISBN4-8163-2697-9 ■おすすめ度:★★ ====================================================================== フェルマーの最終定理という言葉をご存知だろうか。今からおよそ350年 余り前の17世紀,フランスの数学者フェルマーが下のような定理を考えた。 「n≧3において,(Xのn乗)+(Yのn乗)=(Zのn乗)を満たす自然 数(X,Y,Z)は存在しない。」 シンプルな数式である。n=2の場合は,ただのピタゴラスの定理(三平方 の定理)で中学校で習い,例えば(3,4,5)などの組が存在する。ところ がnが3以上になると決してこのようになる数の組は存在しないという定理な のだが,これを証明するのが非常に難しい。 しかしながらフェルマーは,「この定理の驚くべき証明法を見つけたが,そ れを書く余白がない。」と,『算術』という本の欄外にメモを書き残して世を 去ってしまった。 問題の意味が簡単明瞭であること,またフェルマーの書き残した「驚くべき 証明」という言葉から,プロ・アマを問わず多くの数学愛好家がこの証明に取 り組んできたが,ことごとく敗北を喫してきた。そしていつしかこの証明を行 なうことが数学者のロマンとなっていったのである。 ところが,20世紀も終わり近くの1995年になって遂にその証明が確立 された。証明したのはアンドリュー・ワイルズ。プリンストン大学の研究者で あった。 * * * * * 前置きが長くなってしまったが,このような歴史とロマンを持った「フェル マーの最終定理」という言葉をタイトルに戴いているのが本書である。ただ本 書は決してこの困難な証明を長々と説明したものではない。そんなことをした ら,それは数学の専門書になってしまう。 本書は一般の人たちに数論への興味をもってもらうことを目的にして書かれ ている。まず数の概念や歴史から始まり,数の体系,数の発見(0の発見,マ イナスの発見,πの発見,虚数の発見・・・)と歴史を辿っていき,フェルマ ーの最終定理の属する「数論」の魅力と奥深さを紹介している。 歴史を追って,さらに図解を交えて順番に解説してくれていて,それなりに 読みやすいのであるが,やはり「数」に対する興味がないと続かない。でも途 中まで,少なくとも半分あたりまで目を通せば数論というものが,そこそこ頭 に入り,「ああこんな面白い式もあるんだな」と楽しむことができる。 * 本書の3分の2くらいまでは興味深く読める。数学を多少とも好きな人たち には,難しい知識がなくても読んでいける。中学生くらいでも,あるいはもう 社会に出て大分経って,勉強というのを忘れた人たちでも,「数」というもの が嫌いでない限りは,面白い読み物である。 しかし残りの3分の1程はちょっと難しい。いよいよフェルマーの最終定理 の証明に本格的に触れてくるからである。 本書の読み方としては,興味が続く限りの途中までで充分と思う。途中まで 読めば,「数論」というものの面白さが少しは頭に入ってきて,きっとそれが 記憶に残るだろう。完全には理解できなくても,面白いなと思うことができれ ば,おそらく著者の期待にも叶うのではないだろうか。 まあとにかく中学生以上の素人で,数が好きな人間向きの本であると思う。 ====================================================================== 数字アレルギーのある人には,いくら図解があろうとも読むのは数ページが 限度のような気もする。我が奥さんなら多分,パラパラとページをめくるだけ ですぐにも閉じてしまうだろう。 それとは反対に,現在,小学3年になる子どもは何故か興味を持って,20 ページくらい読むまでは「貸して,貸して」と言っては持って行ったが,その 後は「貸して」と言ってはこない。でももう少し大きくなれば,もっと興味を 持ってくれるかもしれないと,そんな淡い期待も抱いている。 (2001.12.6) |
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