地 底 旅 行


■著書名:【地底旅行】
■ジャンル:SF
■著者名:ジュール・ヴェルヌ
■出版社:創元SF文庫
   発行年:1968年   定価:560円
■ISBN4-488-60602-4
■おすすめ度:★★★

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 地底旅行。これは面白い。古いけれど今読んでも楽しい。(決して自分が歳
を食っているからではないと思いたいが・・・)

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 アイスランドにある,とある死火山の噴火口から地球の中心を目指して地中
深く潜っていく探検(大冒険)物語である。読んでいると,若い頃に映画(T
Vでだったが)で見たシーンが,そのまま目の前に現れてくる。

 配役も面白い。頑固でパワフルなドイツ人鉱物学教授(彼はその分野では世
界的権威である),その甥でどちらかといえば恐がりな軟弱男,そしてポータ
ーとして寡黙でたくましいアイスランド人。この三者が奇想天外な大冒険を見
せてくれる。とんでもない危機が何度も訪れる物語であるが,いぶし銀的なア
イスランド人のおかげで,安心して読み進んでいける。

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 物語は1863年(今から1.3世紀も前である)のドイツで始まる。主人
公の鉱物学教授(名前をリデンブロックという)が古本屋から12世紀のノルウ
エー王(アイスランドを支配していた)の年代記を求めてきた。この本を喜ん
でいじっているうちに一枚の古びた紙が落ちてきたが,何とこれが16世紀の不
遇の錬金術者の暗号文で,地球の中心へ行く道を見つけて,実際に行って来た
と記してあるという。

 この暗号文をとくやいなや,くだんの教授は早速遠征の準備を始め,嫌がる
甥(名前をアクセルという)を引き連れて地球中心への入り口のあるアイスラ
ンドへと一路赴いていく。

 地底に入った後はもう大冒険の連続。飲み水がなくなり,あわやというとこ
ろで地底温泉を見つける。甥のアクセルが一人迷ってしまい,真っ暗闇のトン
ネルの中で,傷だらけになって死にかける。大地底海を横断中に巨大な恐竜の
闘いに巻き込まれる。もう次から次へとありとあらゆる事が襲ってくる。

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 こういった物語は通常ハッピーエンドで終わるもので,この「地底旅行」も
やはりそのようなエピローグを迎える。何とこの三人は噴火の溶岩に乗って,
地上に噴き上げられて戻ってくる。(この場面では,昔々に映画で見た場面が
明確に蘇ってきた)

 近年の地球学からはかけ離れているが(SFとは云えないかな),極めて面
白い(楽しい)物語である。百年以上を経てなお面白いと思えるのだから,や
はりヴェルヌは希有な作家なのだろう。    

 エピローグを語ってしまうのはよくないのかもしれないが,ただこの物語は
大体みんなも知っていると思うので,ここでは敢えて気にしなかった。

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 ところでつい先日,長男を連れて町の図書館へ行った際,この「地底旅行」
の小学生版(内容を抜粋して短くまとめてあるもの)が目にとまった。

 「お〜い,これ面白いから借りて帰って読んでみな!」と言ったところ,何
故か頑なに「これは読まない!」と言って拒否する。チラッと挿し絵を見て,
それが怖かったのだろうか・・・。

 子どもが読んでも絶対面白いと思うのだが,もしもそのうちにTVでこの映
画でもあったなら,是非見せてやりたいなあと思う。あるいはビデオでも買っ
て来ようかなと,ついつい思っている自分である。映画を見て興味を持って,
それから原作を読んでみるというのも楽しいものでもあるのだし・・・。

(2001.7.18)

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