子どもが育つ魔法の言葉


■著書名:【子どもが育つ魔法の言葉】
■ジャンル:子育て
■著者名:ドロシー・ロー・ノルト/石井千春=訳
■出版社:PHP研究所
   発行年:1999年   定価:1,500円
■ISBN4-569-60738-1
■おすすめ度:★★★★★

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 子を持つ親は,自分の子どもが明るく真っ直ぐで心優しい子どもに育ってい
ってほしいと願うのが常である。(たぶんそうだと思う) 親はなくとも子は
育つとも言うが,やはり親である以上,自分達できちんと育てていきたいもの
である。しかしこれがまたなかなか難しい。つい無闇に怒ってしまったり,冗
談でごまかしてしまったり,無視してしまったりと,知らず知らずのうちに子
どもの素直な成長を妨げてしまうことがよくある。

 そんなときに何かバイブルになり得るようなものがないだろうか。普段から
自分の潜在意識に刷り込むことができて,知らず知らずのうちに行動できるよ
うな,簡潔なバイブルがないだろうか。多くの親にとってはそんな願望がある
のではないだろうか。

 実はそれに類したものが,今から50年近くも前の1954年に書かれてい
た。(余談であるが,1954年というのは私の生まれた年である) 19行
からなる簡潔な詩で,題名を『Children learn what they live.;子どもたち
は、こうして生き方を学ぶ』という。

 書かれていることはすべて当たり前のことなのだが,えてして我々はこうい
った当たり前のことを忘れてしまう。そしてこの当たり前のことがなかなかで
きないのが我々大人なのである

                                 *

 本書は詩の一行ごとに章を設けて,子育てで大切なことは何であるかを解説
している。そして実際に子どもにどう接したらよいのかを実例を通して具体的
に示してくれている。

「またおもちゃ出しっぱなしなんだから」ではなく,「おもちゃ,入れておい
てね」 「また,ソックス脱ぎっぱなしなんだから」ではなく,「ソックス,
洗濯籠に入れておいてね」 こんなふうに言えばいいのです・・・と。

 自分で自分を好きになることは,とても大切なことです。自分自身を愛する
ことのできる心の安定した人間に,子どもが育ってほしいものです。健全な自
己愛は,生きるうえでのエネルギー源になります・・・と。

                           *  *  *  *  *

この詩の中に以下のような一行がある。

If children live with shame, they learn to feel guilty.
叱りつけてばかりいると,子どもは「自分は悪い子なんだ」と思ってしまう。

まさにその通り。毎日毎日叱られていたら,どんな子どもだって自分に自信を
なくすだろうし,どうせ自分は悪い子どもなんだ,とすっかりひねくれてしま
うのではないだろうか。

 頭ごなしに怒るのはよくない。テーブルの端っこに茶碗が置いてあったとし
て,子どもがちょっと袖を引っかけて落っことして割ってしまったとかいう場
合,その途端は子どもはきっと悪いことをしてしまったと思うのだろうが,ガ
チャーンという音を聞いた途端に「何してるの,あんたは!」とか言って怒鳴
ってしまうと,「ゴメンナサイ」という機会も失われてしまって,売り言葉に
買い言葉,「こんなとこに置いてるのが悪い!」と逆に脹れてしまうことも往
々にしてありそうだ。

 子どもの野球でもサッカーでも,試合のときに応援するのはいいのだが,コ
ートの傍に立って「そんな場所にいるな!,もっとあっちだ!,もっと走れ!
何してるんだ,しっかりやれ!」とか言ってると,応援どころか逆に子どもは
萎縮してしまうのも当然だろう。

                                 *

 ただ各章の具体的な例を読み進んでいくと,親はこうしなければいけないと
か,こうでないといけないとか,親は・・・,親は・・・,親は・・・という
文章がちょっと鼻についてこないでもないが,書かれていることはもっともな
ことである。

 ひととおり読んで詩の一行ごとの具体的な話を頭に入れる。潜在意識に入れ
込んだ後は本文を忘れて詩の19行だけを,あるいはその中のキーワードだけ
を覚えておくというのが,おそらく有用な方法であるのかもしれない。

 とにかく,常に笑顔のあふれる明るい家庭であれば,子どもは真っ直ぐに育
っていくものだということを再認識させてくれる。

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 アメリカにアマゾン・ドット・コムというインターネットの本屋があり,そ
このHPには市販本のそれぞれに関して読者のコメントが寄せられている。本
書の読者コメントの一つにはこんな事が書いてあった。

 子ども達がどんなふうに感じているかを真剣に考えている親たちにとって,
この本はとっても嬉しい本です。私は始めてこの本を読んで以来,バスルーム
にコピーを貼って,毎日ちょっとずつでも見るようにしています。

                                 *

最後に,後書きをちょっと引用しておく。

 みなさんは,わたしの詩を読まれて,「こういうことは,もう判っている」
と思われたかもしれません。たしかに,この詩は,みなさんが親としてすでに
気づいておられることを言葉にしたものなのです。本書では,そんな詩「子は
親の鏡」を一行ずつ取り上げ,詩の内容について詳しい解説を試みました。子
育てについて読者のみなさんと語りあっているような気持ちで,わたしはこの
本を書きました。詩「子は親の鏡」が,子育てをしているお母さんやお父さん
にとって,ますます身近な存在になってくれることを心から願っています。


(2001.10.24)

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