![]() ■著書名:【はだしのブン】 ■ジャンル:児童漫画 ■著者名:永島慎二 ■出版社:朝日ソノラマ(SUN COMICS) (発行日:1978年5月1日 第3版 定価:350円) ■おすすめ度:★★★★★ ====================================================================== ある日小学一年の息子が帰って来るなり,こう言った。 「とうちゃん,今日『はだしのゲン』のビデオ見た。こわかったけど面白かっ たよ。うちでもビデオを買ってよ。」 「はだしのゲンならマンガがあるで,とうちゃんが昔買ったから。とうちゃん の本棚に置いてあるから,探しに行ってみ!」 と言ったら,すぐに探しに行ったがたちまち戻ってきて 「とうちゃん,ないで!」 「あほう,そんなはずないやろ。ちゃんと探したんか!」 と言いながら,今度は一緒に探しに行った。 「ほれみい,ここにあるやないか」 「でもこれちがうみたいやで」 何言うてるんやと思いながらよくよく見れば,その題名は『はだしのブン』。 * むかし田舎の学校には本校と分校とに分かれているところもあって,本校の 生徒たちは分校生をちょくちょく馬鹿にしたものである。かくいう私も小学時 代は本校の生徒で,よく分校生を馬鹿にしていたことがある。口に指を突っ込 んで真横にぐっと引っ張ってから「ぶんこう」と発音すると,「うんこ」と聞 こえる。子どもというのは罪はないとは言いながらも残酷なものである。 運動会ともなると,分校生も本校にやってきて一緒に競争するのであるが, はてさてどんな気持ちを持っていたのであろうか。今は分校というのも少なく なっているが,当時は何も考えずに差別をしたものである。反省反省!! * 『はだしのブン』は,そういう本校と分校の生徒たちの物語である。舞台は 東京から100キロほど離れた山の中の分教場。ここに77歳になる先生とそ の教え子である「ねえちゃん先生」,そして10人ばかりの生徒がいる。みん なの親は東京に出稼ぎに出ているので,生徒たちは分教場で寝泊りの集団生活 を送って暮らしている。 物語は,主人公の『ブン』が町に食料の買出しに出かけた帰り,本校の生徒 たちに囲まれてぶん殴られるところから始まる。傷だらけになって戻って来た 『ブン』は悔しくてたまらず,翌日本校生たちの所へ殴りこみに行くが,多勢 に無勢,返り討ちにあってしまう。 しかしそれを見越して駆けつけていた分校仲間たちが助けに飛び出し,なん とか『ブン』を救い出す。ところが中途半端に終わっておさまりのつかなくな った本校番長が決闘を申し入れたことにより,本校対分校の大決闘が始まる。 人数をそろえた本校に対して分校の勝ち目はなく,なんとかふいをついて血 路をひらこうとした矢先,番長格の分校仲間が石につまづいた拍子に頭をぶつ けて死んでしまう。 * しばらく経った後,本校の若い男先生の提案で,決着は運動会でつけようじ ゃないかということになり,決着は最後のマラソンにもつれ込む。『ブン』は 走るのは大得意で,どんどん皆に差をつけて走っていくが,途中で釘を踏んづ けてしまう。 それでも痛みをこらえ,足から血を流しながら走り続けるのだが,ゴール直 前になってついに倒れてしまう。やがて本校の選手たちが追いつき,これ幸い と抜き去ってしまうかと思えたところ,なんと『ブン』の身体を抱え起こし肩 を抱きつつ同時にゴールする。(ここは何とも泣ける場面) こんなふうにあらすじを書いていても,多分なんの感慨も受けないかもしれ ないが,実際に読んでいると本当に惹きこまれてしまう。 * 是非とも読んでいただきたい漫画であると思うのだが,如何せんもう20年 以上前のもので,最近復刻されていればいいのだが,さてどうだろうか。 息子が漫画を読んだのはこの本が初めてである。TVでは「どらえもん」な どを見てはいるが,本として読むのはこれが初めてで,始めて読む漫画にこう したもの(児童漫画としては素晴らしいと思う)を与えられて私自身本当によ かったと思う。 ただ,何度も何度も読み返しているみたいなので,せっかく私が20年あま りも大切に保管してきた本がクチャクチャになってしまわないかと,今はそれ が不安である。 (1999.12.28) |
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