− 夢紡ぐダウン症児は女子大生 −
![]() ■著書名:【走り来れよ,吾娘よ(夢紡ぐダウン症児は女子大生)】 ■ジャンル:障害 ■著者名:岩本甦子+昭雄 ■出版社:かもがわ出版 発行年:2000年 第11刷 定価:1800円 ■ISBN4-87699-363-7 ■おすすめ度:★★★★ ====================================================================== ダウン症の子どもでもここまでできるんだ! というのが本書を読んだ素朴 な感想である。両親に恵まれ,親戚に恵まれ,そして周囲の人たちに恵まれて 育てばどんどんどんどん成長し,多少時間がかかろうとも元気に育ち,心配な 知的遅れもそれほどでもなく育っていく。 ご両親の苦労は,それはそれは大変だったろうけれども,幼稚園から大学ま で育てていけたことは素晴らしいことで,ダウン症の子どもを持つ全国の人た ちにとって,とても勇気を与えてくれる書であると思う。 主人公の女の子は今から26年前,ダウン症候群の子どもとして1974年 に生まれた。本書はその子が生まれてから大学を卒業する直前までの記録を, お母さんが記したものである。 * ダウン症候群の子どもを育てていくには多くの心配がある。生まれながらに 色々な疾患を身体に持っていること。心臓,消化器系,呼吸器系などに疾患を 持つことが多く,とくに小さい間はちょっとした風邪でも緊急入院に至ること もあって,親にとっても子どもの生命の心配と同時に,自分の身体的疲労とも 闘わなければならない。 少し大きくなってから心配になってくるのは知的な成長である。最近では治 療と教育を併せて「療育」といい,とくに「早期療育」というシステムが動き 始めているが,本書の時代は今から30年近く前で,そのような療育もシステ マティックには行なわれてはおらず,ご両親の手探りで進められていった。 おそらく苦しいことや辛いことも多々あったであろうが,あまり辛いことは 記さずに,如何にして育っていったかとか,そして折々のトピックスやイベン トを交えて,こんなことで自信を持てるようになったとか,全体を通じて前向 きの姿勢で書かれている。 先にも書いたが,本書はダウン症候群の子どもを持つ人たちに希望を与えて くれる。難しい療育の本を読むのもいいが,本書のような実践録を読んで,気 分を明るくするのも非常にいいのではないだろうか。 * * * 生まれてから20数年も経って本をまとめられる。おそらく小さな頃から記 録や日記を付けてこられたのであろう。子育てというのは時間に追われ,日々 の家事だけでも大変で,なかなか記録を残しておくというのは難しい。よく後 々になっても書けるだけのことを残しておけたものだと感心している。 私も妻が2ヶ月の入院をしている間,日々の家事と育児と,そして仕事に追 われ,とてもものを書いたりすることなどできず,しかもパソコンでのメール チェックさえ殆どできない日々を送っていたことを思い起こすと,本当にたい したものだと感心している。 * * * * * 前向きにすべてを捉えて育てていくということ。 これから子どもを育てていく人たちににとっては,是非一度目を通しておか れたらいいのではないだろうか。 (2000.12.15) |
書評のトップページへ | ホームページへ |