20世紀最後の年,突如として謎の小惑星が発見された。
外形も組成も極くありふれたものであるが内部に空洞が存在する。
その小惑星(ストーンと名付けられた)は,偏心した地球周回軌道をとっている。
直径100km,長さ300km のじゃがいものような小惑星は,
内部が7つの空洞に区分された人工的な宇宙船で,しかも未来の人類が作ったものであった。
一つ一つの空洞は単純に割れば長さは50km程度のはずであるが,
第7空洞だけは極めて不可思議で,長さ方向には全く果てのないことが確かめられた。
300kmと限られた空洞の中に無限に続く空間が存在する。
これは未来の人類(平行宇宙から,こちらの宇宙にはじき飛ばされてきた)が造ったものであり,
道(ウェイ)と名付けられていた。
ストーン(小惑星)の第7空洞から道(ウェイ)をはるかに進んだ所に,
未来の人類は巨大な都市を形成していた。人類の殆どは「シティメモリ」と呼ばれるメモリ空間に,
電子的に保存され,その空間内において精神的に生きている。
また限られた一部の人間は実在の身体を造り(自分のすきなように)実体化して,シティを運営している。
この実体化した人間達は,好き勝手な形態をとることを許されており,魚のようであったり,
ただの風船形態であったり,そして喋る言葉は,
自分の周辺にアイコン(今のPCにも色々なアイコンがある)をピクトするといった具合である。
現在の我々からは想像もつかない世界である。
道(ウェイ)は,そのなかにゲート(入り口)を開くことにより,
いろんな世界に(平行宇宙)に通じることができる。このため,道(ウェイ)には人類だけでなく
種々の知的生物が生活していた。人類と交易を結ぶ種族もあり,また敵対する種族もあった。
そのなかで,完全に敵対し理解しあうことのない種族「ジャルト」がおり,人類はこのジャルトと
長い闘いを続けていた。ジャルトとは何者か?それは永遠に理解しあえることのない種族であった。
(ただし,この永劫の続編「久遠」では,ある程度判ってくる)
小さな小惑星から無限に延びた「道(ウェイ)」。しかもあちこちで平行宇宙に通じている。
これを実感するのは難しい。「道(ウェイ)」のイメージは,我等の腹の中に寄生するサナダムシ
を思い描くのがいいかもしれない。宇宙をつらぬくサナダムシ(しかも好きな場所で平行宇宙に
接することができる),なかなか異様なイメージではある。
物語は,まず小惑星を持ってきたファーストコンタクトもの。人類の未来を描いた未来もの。
異星人との戦闘もの。平行宇宙のイメージを描いた科学もの。
といった色々な側面があり,なかなかに読み応えがある。そしてラストシーンがちょっと
余韻を残し,涙ものにもなっており,とにかく興味深い物語である。
この続編として「久遠」があり,これにてこの物語は締めくくられるのであるが,
「久遠」では終局精神を持ち出してきたりして,舞台を拡大しすぎて収拾がつかなくなったような気がする。
まあとにかく,この「永劫」は読んで非常に面白い物語である。