「せい子ちゃんの話」
小学校4年生の保健で、男女の体の成長を学習します。指導要領に記載されているのだから、もちろん男女共修で学習します。問題はその先です。保護者の希望は「生理の手当ての方法を教えてほしい」なのです。かれこれ15年前には、「女性として、肯定的に受け止められるような性教育を望みます」と言った高度な要求をされたこともあります。でも、肯定的な指導ってどんなのかなあ・・いまだに答えが出ていません。
私は初経指導で次のようなことを目標にしています。一人ひとりが体の発達が異なり、顔が違うように、一人ひとりの生理も違うんだ、ということ。でも、みんなで助け合うことが必要なんだということを知ってほしいのです。
そこで、私はこんな紙芝居を用意しました。これは、ずーっと昔、「人間と性」という雑誌に掲載されていた漫画です。コピーしてバラバラにして色を塗りました。これを教材提示装置(OHC)でテレビ画面に大写しにします。実際の枚数はもっと多かったのですが、それこそ、暗いイメージを与える部分は削除して、毎回再構成しなおして、現在に至っています。本当に、時代の流れとは恐ろしいもので、昨年使ったものでも、翌年見ると「これは抜いておこう」というものが必ずあります。教材は使う前に吟味する・・・これは鉄則ですね。時代もジェンダーから男女平等教育に移行していますし、性教育は時代を映す鏡だといつも考えています。
さて、この紙芝居の使い方です。登場人物は名前があったほうが進行しやすいので、「初めて生理になったせいこちゃん」と名づけることが多いです。そして、アドリブてんこ盛りで、楽しく話していきます。この紙芝居のいいところは、最後です。最後の言葉に合わせて、そばにいる女性教員にふります。自分自身の経験を語ってもらいます。もちろん、私自身の経験も語ります。二人が話せば、一人ひとり違うんだということがよく理解できるでしょう。そして、驚いたり、恥ずかしがったりすることじゃなく、みんなが仲間だということもわかってほしいと思います。
性教育もなかなかデリケートに扱わねばならない時代になりました。一昔前なら、初経指導も「男の子は一生に一度しか聞けないことだし、一緒に学習させたい」という教師とも母親ともつかぬ希望が出て、それに応えて男女一緒に学習できる指導内容を考えたものです。ナプキン吸収実験・ナプキン分解実験やプールの見学クイズなどなど、ユニークな指導内容が展開されたものです。だって、テレビではナプキンの宣伝が普通に放映されているのですからね。横漏れガード、多い日も安心、などなど。男の子たちはどう思って聞いているのかなと不思議な気がします。私の息子には、生理痛の時には「生理で痛いから夕食の支度ができにくい」といったことを機会を見つけて話していました。だって、男女共同参画社会って、互いの体を理解するところから始まると思うから。
さて、話は元に戻って、今ではとてもじゃないけど、男女共修の初経指導は無理だねえ。児童の個々の理解の差があまりにも大きいのと発達の個人差も非常に大きな。どういう形態で指導するのか、担任と話し合った上で決めるのだけど、ここ数年は別々に学習することにしています。何でも一斉指導すればよいのでなく、個別指導で知識の補充をしていくことが必要ではないかと思うこのごろです。
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