「救急処置あれこれ@AB」原文は2回分ですが、3回に分けて連載しました。
私が着任した年、いつも購入してきたものがあります。それは、救急処置台の薬戸棚に使うためのプラスチック製のキャビネットです。どこのホームセンターでも手に入る代物です。この救急処置の整理箱は、複数配置勤務の時に一緒に働いた若い(当時は)H先生から教えてもらいました。しかし、実のところ、転任した早々には、なかなか購入してもらえないのですよ。こっちも遠慮がありますし、今まで特に支障がなかったわけですから。なぜ購入したいのかを説明しなくちゃいけません。そこで、考えた理由は次の通り。〜養護教諭が不在の時でも、先生方が薬品を適切に使えるように。間違いがあっては大変!ですから。〜
「出張に行きます」つまり「保健室は不在です」ということなのですけどね。よくある反応が「困るなあ」「早く帰ってきてね」等々。そこで、いつ留守にしてもよいように救急箱の整理整頓しておきましょう。思い切って整理してみると、いろんなことに気づきます。不在の時に、誰かが使ったことが手に取るようにわかるし、不足している薬品も一目で把握できます。薬品管理に神経を使う昨今ですから、この際、整理整頓をしちゃいましょう。
<救急処置戸だなを作ろう:作成手順>
1.4段引出のプラスチック製のキャビネットを用意する。(もっと使いやすいものがあれば勿論それでいいです。)プラスチック製の方が水に強くて汚れにも強いし値段も安いよ。
2.下から二番目の引出を抜き、キャビネットの上に置きます。
3.一番下の引出にピンセット・消毒液等、背が高いものを収納します。ピンセットは埃を避けることが出来て重宝します。
4.上から2番目の引出は間仕切りをして使うと便利。小さな箱で仕切ってもいいですよ。私は、主に軟膏類を収納しました。軟膏の種類は用途別に、抗生物質・筋肉痛用・虫さされ用に大別できます。それらに合わせて仕切ってください。
5.一番上の引出には、湿布剤を入れました。
6.キャビネットの上には、エアサロンパスや水洗い用のスプレー*(これについては後で紹介します。)等を置いていましたね。
7.横にはネット包帯等、ご自由に。
C:エアサロンパス・水洗い用スプレーなど
A:湿布など |
B:軟膏・傷絆創膏(要仕切) |
D:消毒用薬品瓶・マキロン・ 消毒済ピンセット |
薬品を収納したら、引出にラベルを貼ります。薬品名と用途を(どんな場合に使う薬なのかをわかりやすく)書いておきましょう。中に何が入っているかを明記すれば、これで救急箱の用意は完了です。さて、きれいになった救急箱。どの児童も「きれいになったね」と嬉しそうに言います。「けがをした時に安心して保健室に来れるなあ」「きちんと手当をしてもらえそう」と思うからでしょうか。
<救急処置のお役立ちグッズ>
1.水洗い用のスプレー
小学生(中学生はそうでもないかも知れませんが)のすり傷は、ほとんど汚れた傷です。コンクリートの上で転んだりすると土の汚れがめり込んで、自分で洗い流しているつもりでも汚れを流せていない場合があります。傷口の汚れが流せないのに、靴下だけがビチョビチョに濡れてしまう…なんてことは小学校では日常茶飯事ですよね。そこで、霧吹きスプレーに水を入れて用意しておき、児童の傷口を再度洗い流すようにしています。適度な水圧で、部分的に洗えるのでとても便利ですよ。傷の手当てについて密封療法が流行のようですが、傷口の汚れをきれいに洗い流すのが大前提ですからね。
2.常備しておきたい救急バッグ
救急車が必要な場合をはじめ、すぐに駆けつけないといけないような緊急時に備えて用意しておきます。私の後任に来られたM先生が完璧な準備をされていたのを紹介しましょう。ご自分で選択して常備されたらどうでしょう。
@連絡用:救急連絡先の一覧表・テレホンカード(10円玉5枚)・ボールペン・メモ用紙・スポーツ振興センター書類一式
A救急処置用:体温計・カット綿・綿棒・鼻栓・滅菌ガーゼ・テープ・消毒薬(マキロン等)・包帯・三角巾・救急絆創膏・ディスポー手袋
B生理用:ナプキン・下着
C全般:ビニール袋・ティッシュ(トイレットペーパー)・はさみ・爪切り・血圧計・聴診器、等。
3.保健室全体にラベルを貼ろう
救急箱のラベル表示だけでなく、保健室全体にラベル表示をしていたことがあります。児童が多く、けがの発生件数も多かった学校でのことです。私が保健室を留守にしたときに、起こったこと少し紹介してみると…。
1.高跳びに失敗して、上腕骨骨折(尺骨ととう骨が両方折れていた!)→救急時搬送先の連絡先を明記しておく!救急箱の内容(三角巾の場所も)が一目でわかるように!2.参観日に保護者が脳貧血で倒れ、たまたまそばにいた医師(参観日に来ていた保護者の一人)から血圧計を求められた。→血圧計の場所を明記しておく!ついでに据え置き式の薬品戸棚の中も整理もしておこう。
3.服を汚した。替えの服を探したが適当なサイズがなかった。→衣服整理箱にサイズ別のラベル(ex.130cmズボンとか)を貼っておく!往々にして、慌てたときは探せないものだからね。
救急箱の中身・血圧計の場所・衣服整理箱等々。いろんな所にラベルを貼れば、何がどこにあるか誰にでもわかりますね。以前、複数配置勤務をしていたときに「教職員向け保健室通信」を出していたことがあります。年度初めには必ず保健室の案内を紹介していました。どこに、着替え用衣服があるのか、冷蔵庫には何が入れてあるのか…。読む読まないは別にして、知らせたかどうかが問われると思うのですよ。教職員がいつでも使えるように、オープンな状態にしておくことが大切ではないかなあ。これで、いつ留守にしても大丈夫!さあ、大きな顔で研修会に出発です!
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今回も、前回に引き続き、救急処置のお役立ち情報を紹介します。
保健室=救急処置というイメージがありますが、それだけではちょっと淋しいですね。そのイメージを生かしながら、いろいろな仕掛けを考えてみましょう。
1.いつでもどこでも視力検査
使わない視力表を1枚用意します。使っている内に汚れて捨てようかなと思っているようなのが、どこの保健室でも1枚くらいありますよね。そんなのを再利用しましょう。1.0、0.7、0.3、0.1のランドルト環を使いましょう。正方形に周辺を測りCを切り取ります。厚紙に、切り取ったCをきれいに貼って、ブッカーでコーティングします。裏にマグネットシートを貼れば、移動式ランドルト環の完成!スチロール製の戸棚の横などにくっつけておきましょう。めざとい子ども達が見つけたら、人気爆発。誰もが視力検査を始めるので、笑ってしまいますよ。
2.よくけがをする部位の解剖図
小学校でよく見かける掲示物として、「体の各部分の名称を考えさせるもの」があります。とても可愛らしい掲示物なのですが、もう一つお奨めなのが解剖図です。カラーの解剖図はインターネットでも手に入るかもしれませんね。「からだの地図帳(講談社編)」は高価ですが保健室に置いておくと重宝します。資料は何でもよいのですが、著作権に配慮しながら、けがをしやすい部位のカラー解剖図を掲示しておいてはどうでしょうか。あまりリアルじゃないもので、でも本物に近いものを掲示資料としてぶら下げておきましょう。ただぶら下げておくだけですが、「膝ってこんなになっているんや。」「骨をひっぱっているスジはこんなに細いスジの集まりなんや」と、小学生なりにいろいろな発見をしていました。興味をもつということは、何よりの学習の機会ですからね。学校教育の中の様々な場面で健康教育や保健学習が行われているけれど、最も学習効果が高いのは、児童生徒自身がけがをしたときだと思うのですよ。自分のけがという貴重な経験を通して、多くのことを学んで欲しいものです。この取組みは、先輩のK先生から教えていただきました。(私の実践には、多くの先生方のエキスが結集しています。いつもありがとうございますm(_ _)m。)
3.保冷剤の再利用
最近は、お造りやケーキなどに必ず入っている保冷剤。小学校の保健室では大変役に立つ代物です。小学生は、ちょっとした打撲は日常茶飯事。しかし、中には見過ごせないケースも含まれているので油断は禁物です。そこで、全身状態やけがをした状況(友達関係のトラブルが含まれている場合もありますね)を確認しながら痛みを訴える部位をこの保冷剤で冷やします。そのままでは、冷たすぎるので、保冷剤入れの布袋に入れるか、ペーパータオルで巻いてください。誰かに叩かれたら、痛みが増すものです。訴え方もオーバーになりますが、その訴えを一応は「痛かったねえ」と受け止めておきたいものです。気持ちが落ち着けば痛みも和らぐはずですから。さて、学校事情によっては必要がないと思われる方もあるでしょうが、保冷剤入れの作り方を紹介しておきます。
<保冷剤入れの作り方>
横10cm、縦14pの袋を作りましょう。(サイズは参考、自由に作ってください。)
不要の布を用意しましょう。パンツのゴムを通したら完成。
仕上がったら、なくしちゃいやよ・・・という願いを込めて(保)とマジックで書いておきました。
よくなくす学校(なぜかしら、きちんと返却される学校とそうでない学校があるんだよなあ。一時が万事、ほかの指導も同じことだと想像がつきますよね。養護教諭は中間管理職か!?)私は、着られなくなった息子のパジャマをよく利用していました。新しく布を購入する必要なんかありませんよ。この布袋は消耗品です。なかなか保健室に戻ってこないし、泥だらけの状態で落ちていることもありましたね。何度も職員会議で回収を訴えましたが甲斐もなく・・・。
A校に勤務している時のことでした。ほけんだよりに「布袋が戻ってこない!」という窮状をそれとなく書いているうちに、PTAが作ってくださることになりました。その話を聞いて、PTAに製作を依頼された学校もあったとか。きれいに洗って繰り返し使っていましたね。有り難かったです。高校勤務になってからは、熱中症の手当てで、腋下部を冷やすときに布袋に入れた保冷剤をよく使います。製氷機の氷もあるのですが、結構使い勝手がよくて…。
4保冷剤から学級が見える!?
小学生は、保冷剤をよく破損します。ウニュウニュしたのは何だろうと素朴な疑問を抱くのでしょうね。成分はでん粉と水ですから、さわっているうちに破裂して中身が出ても大丈夫です。保冷剤が残り少なくなってきたので、ほけんだより(別紙)で保護者に協力を求めることにしました。すると、持ってくるわ、持ってくるわ。予想以上に集まるものです。担任がほけんだよりを読んで声をかけてくれたA学級(えらい!)、児童がほけんだよりを読んで自主的に持ってきてくれたB学級(子どもがしっかりしている!)。保冷剤を預かったB組の若い担任は、「どうして持ってくるんでしょう?」と首をかしげていましたね(苦笑)。
ちょっとした働きかけで、学級での保健指導の様子を窺い知れたり、ほけんだよりを多くの保護者が読んで下さっていることがわかったり。いろんな楽しい発見ができるものです。
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