「引き継ぎノートをつくろう〜自分のために」@

 はじめまして。小学校勤務25年間を経て、私は今年から高校に勤務しています。校種が変われば仕事も変わる…それが養護教諭の宿命でしょうか。戸惑いながら、新規採用の頃を思い出しながら毎日を過ごしています。そんな私ですが、小学校での執務を忘れないように(自分の認知症防止のため?)今までの保健室経営をふり返って、つらつらと書き綴っていきたいと思います。どうぞ宜しくお付き合いください。
 さて、介護事情(年々深刻で先が見えない日々を過ごしています!同じ状況の方がたくさんおられるのではないかと思いつつ…。)を抱える私は、ここ6年間で4校と非常に目まぐるしく勤務先を変わっています。不審な目で見られそうですが、別に悪いことをしたわけでなく(ホントだよ)、自分の家庭状況や意志で異動してきたわけです。まあ、理由はどうであれ、養護教諭が異動するのは大きなイベントです。短期間で異動すると「パワフルだねえ」と半ば呆れたような眼差しを向けられますが、同じ学校で長年勤務して任期満了で異動しても新しい職場に慣れるまで同じ苦しみを味わうことになりますよね。着任早々はどっちにしても大変…。たくさんの学校を勤務した経験がある〜即ちたくさんの養護教諭の引継ぎを経験したともいえます。ということで、スタートは、引き継ぎノートを作ろう〜自分のためにから始めます。
 さて、7回の引継ぎを経験した中で、S先生から受けた引継ぎは忘れることができません。S先生を真似て、それ以降毎年「引継ぎノート」を作成することにしました。
<手順:引継ぎノートの作り方>
 大学ノートを1冊用意して、順にページを作っていきましょう。順序は何でも構いませんが、タックシールを貼って使いやすくしておきましょう。項目は次の通りです。
1.校医先生・学校薬剤師  
  住所・連絡先(電話番号:かかりやすい時間帯があれば記載しておく)・検診の都合の良い曜日、等々を記載しておきましょう。(耳鼻科の○○先生は左利きなので、検  診器具を左側に置くと楽なようです…といった調子で、S先生は記録を残しておられました。さすが、細かな気配り。)
2.医療機関 こんなけがには、この病院がお勧めということがありますよね。ちょっとした気づきも書き留めておきます。
3.関係機関 校区周辺にある保健所・相談施設等、活用できそうな関係機関を列記しておきましょう。担当者の名前も忘れずに。
4.保健行事
 全ての健康診断の手順を詳細に記載しましょう。保健室全体を生かした検診の配置図を残しておきましょう。私はデジタルカメラでいろいろな角度から検診風景を撮影しておき、それを印刷してノートに貼り付けていました。記録を残すことは後任者のためだけでなく、自分のためにも役立ちます。何せ各科の検診は年1回だけという場合もあります。次年度はそれを参考にして設営すればよいので楽ちんですよ。従来通りに設営することで、担任も児童も混乱せずに円滑に健康診断を進行することができます。もちろん、前年度までを参考によりよい方法を見つけられたら、もっといいのですけれどね。
5.学校行事(養護教諭が参加するもの)
 修学旅行、野外学習、スキー教室等に関しての記録を簡単に残しておきましょう。事前調査の有無、使った調査票、持参した薬品等。下見に行くことが少ない養護教諭にとって、ちょっとした記録が参考になるものです。
6.最後に、学校保健の取組を
 「学校教育目標」「学校保健安全計画」「保健室経営案」「肥満児指導計画」「歯の取組」「性教育年間計画」等々。実践したことの記録を簡単に残しておきましょう。紙面に書ききれないっていわれる方もあるでしょうね。
 1〜6について、ノートに残していけば「引継ぎノート」は完成です。1冊の「引継ぎノート」ができたら、翌年はボールペンの色を変えて変更事項を追記していきます。<引継ぎノートがあれば、いつでも病休を取れる!?>
 通算の勤務年数が長く(つまり年をとったということですが)なれば、いろんなことが起こるものです。自分の体調管理も大変で、介護の問題は常に目の前にあります。急な病休もあれば転勤もあります。このノートをつくっておいたおかげで、急に転勤しても後任の方に迷惑をかけずにすんだかなあと思っています。余談になりますが、引継ぎがギクシャクして、その後の人間関係に影を落とすこともあるとか。引越の準備で忙しいのはお互い様。でも、自分が勤務した間の埃は拭き取り、不要な書類の山は必ず処分して(保存年限は確認した上で)保健室を出て行きましょう。「立つ鳥跡を濁さず」これが私の気持ちです。お互いに大人ですから、気持ちよくバトンを渡したいと思うのですよ。
 引継ぎと言っても前任者の通り踏襲する必要はありません。養護教諭各自の方法があるでしょうし、年を重ねるごとに、その方の個性に染めていけばよいと思います。年度が替われば、教職員集団や取組の状況が一変することはよくあることです。しかし、その学校での前年度までの記録は貴重なものです。養護教諭はほとんどの場合一人で勤務しますから、余計にそう思います。前任者の厚意を温かくいただきながら、勤務が円滑にできることを感謝していた記憶が残っています。
 さて、「引継ぎノート」はこれだけではありません。もう一冊「配慮の必要な児童」のノートが必要です。それは次回に…。

「引き継ぎノートをつくろう〜自分のために」A
前回に続いて、「引継ぎノート」のお話をします。今回は、配慮が必要な児童・生徒に関する引継ぎノートを作りましょう。
<年度初めは超忙しい!>
着任1年目は本当に忙しいですね。近年の小学校の状況を例にお話すると、年度初めには連日会議が行われるようです。会議が続くということは、即ち健康診断の準備をする時間がもてないことを意味します。保健室の諸整備、ほけんだよりの作成、保健指導や掲示物の準備、文書整理等々・・・山積みの仕事を片づける時間は自ずと遅い時間にずれ込み、その結果、毎日遅くまで居残ってしまうことになります。皆様、本当にお疲れ様です。ただただ頭が下がります。(自分も同じなのですけどね。)さて、たくさんの仕事がある中で、私が最優先して行ってきたことは、児童の情報把握です。
過去の苦い経験を思い出してみる(今だから冷静に思い出せるけど…)と、「しまった!」「えらいこっちゃ!」というケースが走馬燈のように頭をよぎります。慌ただしくて余裕のない時…保健室だけじゃなくて、学校全体がそんな時ってありますよねえ。(えっ、毎日がそんな状態の学校だって?それは、それは…。きっと、養護教諭のあなたが学校の守り神になっているはずですよ!)そんな時に限って、大きな事故や判断ミス、また連絡の不味さによってトラブルが起こるんですよね。とにかく、着任早々であっても、緊急時をはじめとする様々な対応を養護教諭は的確に行っていかねばなりません。けがは待ってくれません。些細なことでも、対応のミスが積み重なると、保護者や教職員から信頼を回復することは難しく、その後のさまざまな取組に響きます。
 そこで、次の2点を必ず用意するようにしてきました。
1.児童の名前の一覧表を作ろう
 新年度、最初に行ってきました。厚めの紙に1年1組から順に6年生・育成学級まで全校児童の名簿を貼ります。年度初めは、健康診断に関わる児童名のハンコ押しがたくさんあります。その完成した名簿を縮小コピーして貼っていきましょう。(縮小の程度?小さい方がコンパクトで扱いやすいけど、老眼には少々きついものがあります。まあ、あなたのお好みのサイズで)。女子は黄色のマーカーで着色し(男女混合名簿なので名前だけでは性別がわからないことがあるため)、完成したらブッカーで補強しておきます。欄外に学級ごとの男女別人数と総数をかいておいたら統計の時に便利です。
 大規模校の場合は全クラスの名簿を回収して貼るだけでもなかなかの仕事ですが、小規模校の場合は表の面を男女混合名簿・裏の面は男女別名簿にして活用していたこともありますね。使いやすいように工夫してください。
児童が来室した際には、その名簿を手に取り確認しながら記録用紙に来室記録を記入していきます。もちろん、来室児童が多い学校では、児童が必ず記録を書くように粘り強く習慣づけていきます。(そんなの無理!という声が聞こえてきそうですが、継続は力なり。最初が肝心です。学級経営もどれだけ徹底できるかが鍵になりますね。)その後、来室記録はパソコンにデータとして打ち込みますから、よく来室する児童ほど早く名前を覚えることになります(といっても、年々、名前と顔が一致しなくなっているのは事実。残念!)。
 高校勤務になっても来室記録は必ずとっています。「保健室に行っていたので遅刻しました」と理由をつけて遅刻した生徒の問い合わせを教科担任からうけることがあります。すぐに記録を確認して返答することができます。小学生だって、「保健室で休んでいたので遅くなった」と平気で親に言い訳していたケースもありますよ。記録があれば誤魔化すことはできませんからねえ。
 児童数の多い学校ほど、記録をとるのは大変でしょうが、後々のトラブルを防止するためにも必ず記録を残す…これは鉄則です。
2 「マル秘ノート」を作ろう
 普通の大学ノート(罫線は太めの方が記入しやすい)の見開きを1学級分として、私は左を男子、右を女子にして名簿を貼っていました。大学ノートの罫線に合わせて、名簿を拡大コピーし、その名簿の横に、保健調査票から配慮したい事柄を記入していきます。詳細は個人情報に関わるので割愛しますが、養護教諭が仕事を進める上で必要だと思われる情報を全て書き込んでいくのです。

 書いていた項目は、保健室で関わる上で配慮すべきこと全てです。参考までに、列記しておきましょう。
@疾病について…病名・内服等状況・担当医等 Aアレルギーについて…除去する食品・禁忌薬品・他 B(喘息・アトピー性皮膚炎等)C就学援助等対象児童 D家庭的に配慮すべきことがら Eとにかく何でも 保健調査票から抽出した事柄を中心に書き出していきましょう。Fさらに校内研修会の記録を追加していきましょう。
 いろいろな研修会は、児童生徒に関わる情報を集める貴重な機会です。このノートに必要なことを記入していきましょう。手間がかかるように思うでしょうが、これ一冊あれば内科検診や受診の際には大変重宝します。また、後任者や中学校への引き継ぎの際にも慌てずにすみますよ。
 このマル秘ノート」は、複数配置勤務だったときに相棒だったM先生教えて頂いた方法です。ベテラン養護教諭はさすがにポイントを外さないなあ…と勉強させてもらったのを懐かしく思い出します。
このノートを作成することによって、一人ひとりの児童に対する情報が共有され、同じ目線で対応をすることができたのではないかと思います。当たり前で大切なことですが、現実にはなかなかできないことでもあります。
さて、次回は救急処置に関するあれこれをお話ししましょう。 

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