『小学校3・4年生を対象とした保健学習』
ps:この原稿は、厚かましくも、野津先生に指導していただきました。お忙しいところ、大変お世話になり、ありがとうございました。

1 はじめに
 「数多く行ってきた実践の中から一つを深めて紹介して欲しい」との原稿依頼がありました。正直なところ、体育科保健領域の授業(以下保健学習と表記します)については模索中で、実践も多くありません。全国的には、早々に兼職発令を受け、授業実践を重ねておられる方も多いと聞きます。京都市では、ようやく兼職発令が現場におりてきたところで、養護教諭が保健学習の授業に関わる機会をなかなか持てない状況があります。それらをお含みいただいた上で、昨年度前任校で行った実践を紹介させていただきます。

2 3年生「健康な生活」〜雪山教室を前にした保健学習〜
 3年生は40人満杯の一クラス。とても明るいクラスです。私は、毎年歯みがき指導に行くのを楽しみにしていました。ちょうど、2月に1泊2日の雪山教室があり、それに関連付けた保健学習を計画できないかと以前から考えていました。学級担任と相談の上、4時間の保健学習を養護教諭が生活面を3時間、学校栄養職員(京都市では数ヶ校に1人が配置されている)が食事面を1時間担当することにしました。

3 児童の実態と単元について
 前任校では、毎月の保健の日に生活習慣に関する知識を繰り返し学習していました。今回の指導計画を立てるに当たって、指導要領をみたところ、保健学習で3年生が学ぶ内容と重なっていたように思われました。
 そこで、保健指導で得た知識を整理し、意見交流しながら、実践的な理解に焦点を当てた指導内容を計画することにしました。
 そして、保健学習との初めての出会いが、児童にとって楽しく新鮮なものになるようにブレインストーミングを取り入れることにしました。また、自分の生活に生かし、多くの意見を出す手がかりとなるように健康チェック表を活用することにしました。

4 指導計画 
@健康な生活をすごすためには。(1H:指導案 1参照)
A野菜について考えよう。(1H:学校栄養職員による。)雪山教室の食事はバイキングです。その事前指導として、野菜の大切さを指導してもらいました。
B雪山教室に向けて、健康マップを作ろう。(1 H:指導案2)    
Cグループで調べたことを発表し合おう。(1H)、Bでまとめたことを各グループで発表し合いました。

5 体育科(保健)学習活動案*別紙
 子どもたちは、全員、雪山教室から元気な顔で帰校しました。誰一人体調を壊さず、食事の際のバイキングでは栄養のバランスを考え、すすんで野菜をとって食べていたと聞きました。
 4時間の授業を受けて、子どもたちは保健学習がとても楽しく、自分の健康にとって大切な教科であることを理解してくれたようでした。

6 知識理解が基礎になる
 現在校で、5年生の野外活動前の保健指導として、第1時間目のブレインストーミングだけを実施しました。今回は保健学習ではなく、1回だけの短時間の保健指導で行いましたが、その中で次のようなことを考えました。
 まず、楽しく学習できるはずのブレインストーミングに参加できなかった児童が目に付きました。着任早々の私が十分に学級実態を把握していなかったことが大きな原因だったと感じています。高め合う学習集団であるかどうか、参加しにくい児童は誰であるか等を把握しておくことが、養護教諭が授業に入る際に必要だと改めて感じました。
 また、5年生であるにも関わらず、意見がなかなか出ず、その数が少ないのも気になりました。今回は短時間の保健指導でしたが、これまでの保健学習で基礎基本となる知識や保健指導で修得しておいて欲しいことがらの理解が不十分ではないかと感じられました。健康や生活習慣に対する関心の低さもそこに起因しているような気がしてなりませんでした。
 前任校では、日常の保健指導を充実してきた結果、3年生での実践的な理解に焦点を当てた保健学習が可能になったのではないかと気づかされました。保健学習の基礎基本の中でも、知識の理解は大切にしていきたいと思います。

6 おわりに
最後に、2000年7月に開催された全国養護教諭連絡協議会主催の「養護教諭が行う保健学習」研修会で、筑波大学の野津有司先生から学んだことを記して結びとします。
「養護教諭の専門性を生かした保健学習」というフレーズをよく聞きますが、ここで言われる養護教諭の専門性って一体何でしょうか?学習指導要領の内容は学級担任であれ、養護教諭であれ指導しなければならないものであり、本質的には変わらないはずです。そこでは、養護教諭でなければ指導できないような医学的な知識が求められているはずもありません。また、保健室で得られた様々の情報も不用意に、教室での授業に持ち出すことは許されません。そこで「養護教諭の専門性」と敢えて言うならば、考えつくことは「健康教育の価値を最も理解していて、熱意を持って指導しようとする姿勢」なのかも知れません。
しっかりと保健室経営を行い、来室児童を一人一人ていねいにみていくことは、私たちの大切な仕事です。他にも養護教諭としての重要な職務はたくさんあります。それらに加えて、保健学習に関わることは負担も多いですが、それだけに得るものもたくさんあると思います。保健室で不満や悩みを訴え、苦しそうな表情しか見せなかった子どもたちが、学ぶ楽しさを感じる授業の中で元気を取り戻し生き生きとしていく姿を目にしました。数少ない授業経験の中でも、そんな子どもたちの姿が心に残っています。
今後も研修を重ね、よりよい保健学習の実践を目指して取り組んでいきたいと思っています。

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