持久系スポーツの身体能力アップには有酸素トレーニングが必要なことは誰でも知っています。オリエンティアは走ることが本職なのでランニングという手法を取ります。有酸素トレーニングを効率よく行うには、運動中の「血中乳酸濃度」や「酸素摂取量」を指標にして行われるのが常識です。しかしこれらの測定には専用機器が必要で手軽にはできません。そこで血中乳酸濃度と心拍数は数値的に関連しているという事実を用い、心拍数を指標にして有酸素トレーニングを行うことが一般になされています。これを心拍トレーニングと呼びます。心拍数は心拍計(ハートレートモニター・HRM)で測定できます。値段はピンキリですが1万前後でしょう。POLAR(ポラール)社が超有名で、日本でも買えます。
運動の仕組みは次の具合です。トレーニング強度が低い時は、酸素の存在下でグルコースや脂肪を燃焼させるので、十分なエネルギーを供給するという点で代謝にトラブルは起きません。しかし、強度が高くなると、脂肪を燃焼させ続けるだけの酸素を心臓と肺が供給できなくなります。すると、身体は酸素を必要としない短時間の化学反応でグルコースを燃焼させて埋め合わせ、その老廃物として乳酸が生産されます。血中に乳酸が過度に蓄積すると運動の強度の閾値が下がり、数十秒間しかこの強度の運動を続けられません。
各ゾーンの適正心拍数=(最大心拍数−最小心拍数)×各ゾーンの運動強度+最小心拍数
最大心拍数の測定
一般的には
男性:220−年齢
女性:226−年齢
ですが、個人差がややあります。
最大心拍数は同一人物であっても、運動の種類によって異なるのでオリエンティアはランニングで測定します。
測定法は平地で遅い楽なスピードから、1分毎に徐々にスピードアップし、同じスピードを1分間維持出来なくなるまで行い(走っている時間が8-12分間)、このテストの終盤の最大値を最大心拍数とします。ただし一人でやろうとしても最大まで上げきることは困難を極めるので、自分よりも優れた身体能力を持つ人と競争するのが良いでしょう。それでも、頭に銃口を向けられているくらいの気概で走る必要があり、やや危険でもあります。
最大心拍数は、トレーニングによってもほとんど変化しません。生まれつきと年齢で決まります。
【僕の場合、理論値で220−24で196ですが、1人で頑張ってみても185までしか上がりませんでした。昔、監督杯で1500mの記録会をした時に、ギリギリの状態になりましたが、そのあたりが最大値だったんだと思います。でももう1回あんなくらい走るのはちょっと・・と思います。196にしておきましょう。】
最小心拍数(安静時心拍数)の測定
測定は(目覚ましは使わないで)朝目覚めてすぐ、起き上がらないうちに測定します。手の内側で親指の付け根から2cm程下のところ(一般的な脈拍)に指を当て、60秒間の脈を数えます。1週間にわたって測定し、一番低い値を選びます。ホントは睡眠時の起きる1時間ほど前が最小値で、それなりの道具が必要です。
最小心拍数は、トレーニングによって心肺能力が上がるほど少なくなります。
【僕の場合、3日にわたって起床後計測し、
52(前日5.5kmのジョグ)
でした。また起床前数時間の就寝時の心拍も測定していて、その時の最小心拍数は43でした。よって最小心拍数は43です。起床後すぐに測定してもこれに比べて5ほど高くなっています。】
51(前日4.5kmのジョグ)
48(前日オフ)
運動強度
下記数値。
4つの有酸素トレーニングゾーン
レベル1・運動強度75%以下(血中乳酸値/1.5mmol以下)【僕の場合、142−157】
1.初心者(運動を初めて3−10ヶ月)が運動に体を慣らす 2.ダイエットする 3.ハードなトレ続き後の回復をはかる という効果があります。 ・乳酸は安静時の正常値(1.5mmol)のままです。 |
備考
・運動初心者以外の人にとって、有酸素性エネルギー機構にはあまり効果がありません。 ・誤解しがちですが、レベル1では燃焼する脂肪の割合は多くなりますが、最終的な脂肪燃焼量はレベル2で運動する方が多くなります。これはハードな運動の方がエネルギー消費の絶対量が多いためです。
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レベル2・運動強度75−85%(血中乳酸値/1.5−3.5mmol)【僕の場合、157−173】
1.心臓の血液供給能力を高める 2.筋肉中の小血管を増やす 3.酸素代謝を司る筋肉内酵素を増やす 4.筋肉組織、腱、靭帯および骨を強化する という効果あります。 ・脂肪燃焼性の運動です。 |
備考
・有酸素性エネルギー機構にある一定のストレスをかけて長時間の運動に慣れる事を目的とします。いわゆるLSDはレベル2内の軽いレベル(75%)で行います。よく言われる「ゆっくり、長く」のペースよりも、少々高い負荷と感じます。またLSDで同じ距離を走るならゆっくりであればあるほど良いと言いますが、そうではなく有酸素性エネルギー機構の向上にはレベル2内で走る必要があります(初心者除く)。 ・レースもトレーニングのうちに含めて考えて、トレーニングの80%の量をレベル1の上限やレベル2で行います。 ・心肺能力の向上が体感できるのは最短で6週間です。
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レベル3・運動強度85−92%(血中乳酸値/3.5−6.0mmol)【僕の場合、173−183】
1.身体をより速いペースに「慣らす」 2.乳酸を発生させずに維持できるスピードが上がり始める という効果があります。 ・グリコーゲン燃焼性の運動です。 ・体の酸素を運搬して利用する能力が向上し、本来無酸素性トレーニングになりがちな筋肉繊維を有酸素性トレーニングで鍛えることになります。 ・血中の乳酸を処理しきれない地点ギリギリ(乳酸閾値)です。 |
備考
・体は燃料源として、主に炭水化物を利用するので、食事も大事になってきます。 ・初心者あがりの人はすべてのトレーニングをレベル3でしてしまうというミスを犯しがちですが、有酸素性エネルギー機構はさほど向上しません。その代わりに怪我をします。
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レベル4・運動強度92%以上(血中乳酸値/6.0mmol以上)【僕の場合、183−196】
・乳酸緩衡性、高強度持久性を鍛えます。 ・有酸素性エネルギー機構にとってかなりストレスとなり、乳酸耐性トレーニングにもなります。 |
備考
・インターバルをこのレベルで行い、最後の方では、心拍数が最大近くになります。 ・インターバルでは1本目から全力で走るべきと言いますが、レベル4内であればOKです。むしろ途中でオールアウト(無酸素トレーニングのレベル)に至らないよう気をつけます。初心者はそこまで追い込めないので、全力で走れと指導しますが。 ・また、有酸素エネルギー機構が確立する以前に、無酸素トレーニングを行うと、有酸素エネルギー機構の能力を低下させるので注意が必要です。 |
オリエンティアではレベル2・レベル3・レベル4で80%・15%・5%という辺りが妥当な線でしょう。ある程度経験を積んだトップオリエンティアであれば、70%・20%・10%くらいでしょう。
この数値は距離ではなく時間で計算しての値です。
また、激トレ月間の直後等に、安静時心拍数が慢性的に上昇している場合があります。その場合、体が慢性的に疲労している状態なので、トレーニング量を落とします。
インターバル
レベル4です。
急走期と緩走期を繰り返すトレーニング。コツは急送期の時にオールアウトにならないこと。急走期と緩走期で500m・500mもしくは500m・250mなら10回は繰り返した方がトレーニング効果は良いらしい。この前1人で挑戦してみたら、5回よりも強度を若干おとしてみたら結構できるもんでした。
トレイル
レベル3です。
しんどい割には心拍数はそんなに上がっていません。25−30分走るので当然ですが。むしろ筋力の方も苦しく、その兼ね合いでスピードが決まります。オリエンテーリングにとって重要なトレーニングだと思います。30分間登り続けられるトレーニング場が至近にあるのは恵まれています。うちの実家は大阪平野の真ん中なんで坂なんて全く存在しません。