壬生にある新撰組屯所。
浪士組と呼ばれていた私達は容保公に認められて
新撰組という名前を頂いた。
それから何ヶ月か経った頃、島原や祇園で小さい祭りが開かれていた。
もちろん、そういう賑やかで楽しそうな場所が好きな総司は
土方を誘ってみようと思い、彼の部屋に向かった。
実は昔、土方も祭りが好きで、よく一緒に連れて行ってもらったのだ。
「宗次」
私の名前を呼んで、嬉しそうに駆け寄った私の頭を撫でてくれる。
優しくて格好良くて・・素敵なお兄さんなんだと思っていた。
祭りでは宗次が欲しいものを必ず買ってくれる。
周りの人たちはまるで父親の溺愛状態のように見えていたらしい。
もちろん土方は子供が好きではない。むしろ苦手だ。
しかしそんな土方が宗次に対しては本当に優しくて
最初は素敵なお兄さんだと尊敬の眼差しで見ていた宗次も、
日に日にその優しさに惹かれていったのだ。
その自分の思いは片思いなのだと歳が増えるにつれて理解していった総司だった。
そう思っている九歳年下の宗次に土方はべた惚れだった。
初めて会った時から愛らしい微笑みに一目惚れしたのだ。
こんな年下の奴に・・と最初は思っていただが、
会うにつれて気持ちは高まる一方だったのだ。
自分の気持ちを伝えたいと思っているが、
こんな年下の子供に理解させるにもまだ早すぎる。
自分の存在を最大限に伝えようと宗次に優しく接することに決めた十七歳の土方だった。
その甲斐があって宗次は土方を見ると、嬉しそうに綺麗な微笑みを見せてくれた。
可愛くて愛しくて・・いつだったか抱いてしまいたい衝動に
陥られそうにもなったがぐっと理性を保ち、乗り切ってきた。
あれから十数年。
宗次郎は総司と名を改め、二十歳になった。
土方も二十九歳となり、お互い心も身体も立派な大人だ。
だがあの頃の気持ちは変わらずに自分の心をまだお互い伝えてはいない。
怖いのだ・・どのような結果になり、伝えることで今の関係を崩してしまうのが。
だが今の現状に不満はない。
だが欲を言えば、愛し合える関係になれればと・・願う二人であった。
〜♪
総司は楽しそうに彼の部屋に向かって歩き出す。
自分の部屋からそんなに遠くない部屋に行くと、先客がいるらしく話し声が聞こえた。
「行こうぜ。土方さん」
「たまには息抜きも必要だよ?」
「仕事ばかりしてると身体壊すぜ」
そこには自分と同じ副長助勤の永倉・藤堂・原田が飲みに行こうと誘っていたのだ。
――皆で飲みに行っちゃうのかな・・。
そう考えつつも総司は取り敢えず聞いてみようと思い、静かに開けようとしたのだが。
「俺は行かねぇよ」
土方のその返答に襖を開ける手を止めてしまった。
「なんで?」
「仕事」
断言した土方の机の上にはたくさんの仕事の山。
それに納得したのか三人は仕方なくその場を去っていった。
「土方さん」
開かれた襖からひょっこり顔を出した総司は土方を見た。
彼の机上は仕事のものでいっぱいだった。
「ん?総司か。どうした?」
覗き込んでいる総司に気が付いた土方は、軽く手招きして自分の傍に来るように促す。
そんな土方の行動に嬉しくなった総司は小走りに歩いて土方の傍に寄った。
そして、土方は昔と変わらず優しく髪を撫でてやるのだ。
なんとも幸せな一時で、総司はどきどきという胸の鼓動の早さに驚いた。
やっぱり私は土方さんが好きなんだ・・。
この幸せな時は自分の想いを再認識できる時でもあった。
総司が自分がする行動に拒否しない所為か
土方もこのような行動が日常的になっていた。
まるで恋人のようだ。
いや、もしも恋人だったら・・と彼は心の中で呟いている。
いつかこのような関係になれたらと思う、思い合う二人の心。
だがそれはまだ伝わってはいない。
勇気と行動と想いと感情と・・伝えるためには色んなものが必要だ。
今はまだ準備期間の時。
「・・・土方さん」
沈黙を破ったのは総司。
ん?と優しく問いかけると「お仕事忙しいんですか?」と尋ねてきた。
「まぁな。どうしたんだ?そんな事気にして・・」
少し顔を俯いている総司を見て優しく髪を撫でてやる。
「・・あの、一緒にお祭りに行かないかなっと思って・・」
髪を撫でてくれる心地よさに総司はそっと顔を上げた。
姿勢の状態で総司の顔は無意識に上目になる。
可愛らしい表情に理性を崩さない男などこの世にいるのだろうか。
だが土方はぐっと理性を保たせた。
堪えなければ総司を傷つけてしまう・・土方はそう思ったからだ。
「・・行くか?祭り」
「本当ですかvv・・あ。でもお仕事が・・」
「こんな仕事、夜までに終わらせるさ」
嬉しそうな表情に土方の顔も緩む。
そして愛しい人への自分の愛情表現に笑いが込み上げた。
やはり自分は総司には甘くて、そして喜ばせたいのだと
土方はつくづく心の中で思ったのだった。