「総司」
廊下の奥で息をついていると、後ろから声をかけられた。
ふり返れば、斉藤が気遣わしげな表情で歩み寄ってくる処だった。
「気分でも悪いのか」
「いえ」
ゆるく首をふり、窓の方へ視線をやった。
格子越しに見える外は、雪のようだった。夕刻あたりから降り始めた粉雪は、京の町を白く包みこんでゆく。
総司はそれを眺めながら、小さな声で呼びかけた。
「斉藤さん」
「あぁ」
「今まで……すみませんでした」
「え……?」
目を瞬いた斉藤に、総司は向き直った。大きな瞳で彼を見つめ、言葉をつづける。
「あなたを沢山傷つけて、酷い事をしたと思っています。あんな事をお願いするなんて、私は本当に愚かでした」
「総司……」
「私のことを罵っても憎んでも、構いません。斬りたいなら、果たし状を叩きつけて下さい」
斉藤は思わず苦笑してしまった。しばらく黙ってから、肩をすくめる。
「惚れた相手に果たし状叩きつける男が、どこにいるんだ。渡すなら、恋文だろう」
「でも、私はそれを受け取れません」
きっぱり答えた総司に、斉藤は僅かに目を見開いた。思わず言葉を返しかける。
だが、決然とした表情の総司に、唇を噛んだ。
総司を愛していた。
心から求め、愛してきた。それこそ、土方にも負けぬぐらい。
だが、一方で、常に総司の幸せを願わずにはいられなかったのだ。
本当は、ずっと願っていたのだ。
あの日から、斉藤の前で、総司はいつも悲しげに目を伏せていた。笑顔を見せてくれた事がなかった。
それでも、無理やり己に繋ぎつづけた。
自分のものになって欲しかった、その心が欲しかった。
だが、総司の瞳はいつも土方だけに向けられていたのだ。斉藤の腕に抱かれながら、それでも、その心には常に土方がいた。
総司が自分を愛することは、ない。
ゆっくりと顔をあげた斉藤は、総司の肩越しに見えるものに目を細めた。
胸奥が引き絞られるように痛い。
だが、もう手を離すべきだった。それがどれ程辛い事であっても、愛しているのなら。
否、愛しているからこそ。
「総司……」
ゆっくりと呼びかけた。
「もう一度だけ」
「え……?」
「最後にもう一度だけ、抱きしめてもいいか……?」
総司は一瞬、目を見開いた。だが、すぐに、こくりと小さく頷く。
斉藤は手をのばし、そっと細い躯を引き寄せた。きつく抱きしめ、目を閉じる。
愛しいぬくもりだった。
何にも代え難い、最愛の存在だった。
だが……
(おまえには……笑顔でいて欲しいから)
斉藤はきつく唇を噛みしめると、腕の力を緩めた。
そうして思いきるように手を離した。ゆっくりと歩き出してゆく先には、土方が佇んでいる。
斉藤は一瞥する事もなく、すれ違った。そのまま立ち去ってゆく。
「……」
総司はふり返り、一瞬目を瞠った。
だが、黙ったまま、歩み寄ってくる土方を見つめた。
私は、この人をどんなに愛しているのだろう。
黒い髪も、こちらをまっすぐ見つめる黒い瞳も。
一見冷たく見えながら、笑みをうかべれば少年っぽくなる端正な顔だちも。
何もかもが好きで好きで、たまらなかった。
彼の事を思うだけで、見るだけで、頬が火照ってしまうぐらい好きなのだ……。
「土方さん」
総司はそっと呼びかけ、両手をのばした。彼の腕にふれる。
珍しい総司の行為に、土方は目を見開いた。だが、すぐに優しく引き寄せてくれる。
「何だ」
「話があるのです。聞いてくれますか?」
そう云って、総司はきれいに澄んだ瞳で彼を見つめた。
もう嘘はつきたくないから。自分も彼も、偽りたくないから。
「話?」
「えぇ……」
それきり黙り込んでしまった総司に、土方は形のよい眉を顰めた。
「まさか江戸へ帰せって話じゃねぇだろうな」
「いいえ、違います」
ゆるく首をふった。
「この間の事を……あなたに謝りたいのです」
落ち着いた声で、総司は云った。澄んだ瞳がじっと土方だけを見つめている。
それを見返しながら、訊ねた。
「この間の事とは、何だ」
「あなたを……傷つけた事です。病になった私を捨てるだろうと云った、あの……」
「あの事か」
土方は微かに顔をしかめ、ため息をついた。煩わしげに片手で前髪をかきあげる。
「あの時は俺も悪かったよ。かっとなって、手荒な真似をしちまった」
「いいえ、土方さんが怒って当然だと思います。私は、自分の弱さを棚にあげ、あなたにすべての責任を押しつけていたのですから。本当に申し訳ありませんでした」
そっと吐息をもらした総司は俯いた。組んだ自分の手だけを見ながら、言葉をつづける。
「私はずっと逃げていたのです。いずれ飽きられ捨てられるなら、いっそ始めなければいいと思っていた。始まらなければ、終らない。だから、片恋のままの方が幸せなのだと。でも、そんな身勝手のせいで、あなたも……斉藤さんも傷つけてしまいました」
「斉藤は……」
「さっき、別れを告げました」
静かな声で、総司は云った。それに、土方が微かに目を見開く。
「別れた?」
「えぇ。うわべだけの関係でしたが、それでも、きちんと別れる事にしたのです。もう……自分に嘘はつきたくなかったから」
そう云った総司は顔をあげた。僅かに潤んだ瞳が、土方を見つめる。
しばらく黙っていたが、やがて、ゆっくりと云った。
「あなたが好きです」
「……え?」
「土方さん、あなたが好き。あなただけを愛しています」
突然の言葉に、土方の目が見開かれた。驚いた表情で、総司を見つめている。
そんな男の前で、総司は長い睫毛を伏せた。緊張しているのか、唇はきつく噛まれ、細い指さきも微かに震えている。
「……」
しばらくの間、土方は押し黙ったまま総司を見つめていた。だが、不意に踵を返した。それに、総司は弾かれたように顔をあげた。
「……あ」
驚く総司を残し、土方はその場から立ち去ってしまう。
「──」
呆然と目を見開いた。
見捨てられたと思った。
やはり、もう遅いのか。
とうの昔に、彼は自分に愛想を尽かしてしまっていたのだろうか。
「……っ」
泣き出しそうになり、総司は俯いた。嗚咽をこらえ、きつく唇を噛みしめる。
その時だった。
突然、二の腕を乱暴に掴まれる。
はっと顔をあげれば、いつの間に戻ってきたのか、土方がどこか痛むような表情で見下ろしていた。
「泣く奴があるか、少し離れただけだろう」
「土方さ……」
「来い。ここじゃ落ち着いて話も出来ん」
呆気にとられている総司の腕を掴み、土方は歩き出した。たたらを踏めば、すぐさま肩を抱いてくれる。
すれ違う男女が、端正な男と美しい若者の二人連れに視線を向けたが、土方は平然としていた。総司はやはり身をすくめ、男の胸もとに顔をかくしてしまう。
それに、土方がくすっと笑った気配がした。
連れていかれたのは、奥まった部屋だった。先程手配したのだろう。
小綺麗な部屋はとても静かで、しっとりと落ち着いた雰囲気だった。むろん、花街なのでどこか艶めかしい。
部屋に入った土方はすぐさま総司を抱きしめてきた。驚いて顔をあげれば、熱く口づけられる。
「っ、ぁ……っ」
深く唇を重ねられた。甘い唇を味わうように擦りあわされ、それに喘いだ処で舌がするりと入ってくる。
そのまま舌を絡められ、優しく執拗に舐められた。ぞくぞくするような痺れが腰から背筋を突き上げてゆく。
「んっ、ぅ…ん……っ」
総司は膝に力が入らなくなり、思わず土方の背に手をまわした。無我夢中で縋りつく。
だが、それに刺激されたのか、口づけはより深く濃厚になった。何度も角度をかえて口づけられ、頭がぼうっと霞んでくる。
「……っ、ぁ…は…ぁ……」
首筋にも男の唇が押しあてられ、きつく吸われた。それに感じて声をあげる。
とたん、総司の細い躯が男の両腕に抱きあげられた。ふわりと浮遊感が襲い、慌ててしがみつけば、土方は部屋を大股に横切ってゆく。
「……あ」
襖の向こうにある光景に、総司は思わず頬を染めた。
真っ赤な絹の褥が敷かれてあった。幾重にも重ねられた褥はそれだけを目的としているようで、思わず目をそらしてしまう。
部屋の中も、さすがに妖艶な雰囲気だった。
はり巡らされた美しい壁紙も瀟洒な造りの天井も、何もかもが、総司には初めてのものだ。だが、そこに連れこまれた事で、今から何をされるかわかり、思わず身を竦めてしまった。
怖いと、逆に自分を抱く男に縋りついてしまう。
「……可愛いな」
土方は抱きついてくる総司に、喉を鳴らして笑った。可愛くて仕方がないと云いたげに、その頬や首筋に口づけを落とす。
そっと褥の上に降ろさされた総司は、震えながら彼を見上げた。
自分は愛を告げたけれど、まだ返事を返されていないのだ。
それとも、今までのお返しに、土方は自分の躯だけを抱くつもりなのだろうか。気持ちがそこにないままに。
自分が今まで彼にしてきた仕打ちを思えば、それも仕方ない……と目を伏せた。
だが、それは杞憂だった。
羽織を脱ぎ捨て、土方はゆっくりとのしかかってきた。総司の頬を、両掌でそっと包み込む。
そして、優しい口づけの雨を降らせながら、囁いた。
「……愛している」
「……」
総司の目が見開かれた。息をとめ、土方だけを見上げている。
そんな総司に、土方は思わず苦笑した。
「何を驚いているんだ。今まで何度も云ってきた事だろう?」
「で…も……」
ゆるく首をふった。
「あなたを酷く傷つけたから……もう愛想つかされたと思ったのです」
「まだそんな事を云っているのか」
土方は肩をすくめた。
「俺の気持ちを疑うな。もう、ずっと昔から……それこそ、初めて逢った時から、愛してきたんだ。いったい何年になると思う?」
「え……」
総司は目を瞬いた。それから、少し迷ったが、小さな声で問いかけてしまう。
「でも、あの、以前……原田さんと話しておられるのを、立ち聞きしたのです」
「?」
突然、そんな話を始めた総司に、土方は戸惑ったようだった。怪訝そうに眉を顰めている。
「いったい、何のことだ」
「あなたには好きな人がいると……」
口ごもってしまった総司に、土方は目を見開いた。それに、男の襟元を細い指さきで弄りながら、言葉を続ける。
「だから、その人が小紫さんなのだと思って……」
「そんなの、おまえの事に決まっているだろう」
思わず、土方は強い口調で遮った。
だが、すぐ、彼自身の言葉で、総司がどれ程傷ついたかを察した。
どんなに思い悩んできたのか。今も潤んだ瞳で不安そうに見上げている総司が、たまらなく愛おしくなる。
「総司、おまえだけが好きだ」
柔らかな黒髪を撫でてやりながら、土方は囁きかけた。
「ずっと……おまえだけを愛している」
「土方…さん」
「俺は、おまえがいればいい。おまえしか欲しいと思った事はねぇんだ。今も……気が狂いそうなぐらい、おまえを愛している」
そう云った土方は、微かに笑った。
「いや、もう狂っちまっているかもしれねぇな。おまえを斉藤にとられた時、本気で殺してやろうと思った。総司……おまえが手に入るなら、すべてを捨て去っても構わねぇ。それぐらい、おまえを愛しているんだ」
男の言葉に、一瞬、総司の瞳が翳った。だが、すぐに両手をあげると、細い指さきでそっと土方の頬にふれた。
「愛しています……」
すべてを捧げた囁きだった。背をうかし、男の首を細い両腕でかき抱く。
「土方さん、あなただけを愛しています」
「総司……」
互いの名を呼びあい、二人は見つめあった。指さきをからめ、何度も口づけあう。
やがて、土方の手が着物にかかると、総司は素直に身をゆだねた。互いの着物を脱がせ、その肌にふれあってゆく。
ふれあう素肌は、泣き出したくなるほど心地よかった。身も心も愛しあうという事は、こんなにも幸せなのだ。
至福の恋人たちの夜。
「……愛している、おまえだけが好きだ」
柔らかく囁かれ、総司は男の腕の中で頷いた。熱い愛撫を受けながら、身をくねらせる。
初めての時と違い、総司はもう彼を愛している事を隠さなかった。その背に手をまわし、褐色の肌に口づけ、黒髪に指さきをからめる。
男のすべてを己に刻みこもうとするかのようだったが、土方はそれに気づかなかった。ただもう、無我夢中で総司の細い躯に溺れてゆく。
「総司……っ」
雪のように白い肌に、赤い花びらを散らした。男の激しい執着をあらわすように、それは着物で隠せぬ場所にまでつけられた。
「っ、ぁあ…ぁ、ん」
それを総司も拒まなかった。真っ赤な褥の上、白い裸身があまりにも艶めかしい。
さんざん遊んできた土方も、さすがに目を細めた。
「綺麗だ……」
「ぁ、土方…さん……」
初めての時以上に丁寧に愛撫し、躯を開かせていった。総司もそれを拒まない。
己のものを唇にふくまれた時は啜り泣き嫌がったが、結局は、男の髪に指をからめ、甘い嬌声をあげた。それに歓喜し、土方はより激しく愛してしまう。
土方は総司が吐露した蜜を指にからめ、下肢の奥へ手をすべらせた。なめらかな内腿を撫であげる男の手に、総司が小さく喘ぐ。
右膝を抱えあげられ、開かれた蕾に男の指が押しあてられた。ゆっくりと挿入されてくる。
「んッ……」
総司が細い眉を僅かに顰めた。唇を噛んでいる。
それを見下ろしながら、土方は指を奥へ進めた。先日、探りあてた箇所に指の腹を押しあて、ゆっくりと揉みこんでやる。
とたん、総司が短い悲鳴をあげ、腰を浮かせた。
「っひッ、やあッ!」
快楽の証に、総司のものからとろりと蜜がこぼれる。
土方は満足げに笑い、何度もそこを指で押しあげてやった。そのたびに、総司は顔を真っ赤にし、泣きじゃくっている。
それが可愛くてたまらず、土方は思わず細い躯を抱きしめてしまった。
初めての時は違ったが、今は互いに愛を告げあっている。恋人として愛しあう総司は、信じられないほど可憐だった。常では見られぬ素直さ、可愛さが、愛おしくてたまらない。
「総司……愛してる」
低い声で囁き、土方は総司の両膝を抱えあげた。ほぐされた蕾に男の猛りを押しあてると、総司の躯がびくりと竦む。
「ぁ……っ」
不安げに見上げる総司を、静かな瞳で見下ろした。
「怖いか?」
「少し……」
「大丈夫だ。優しく愛してやるから」
「はい」
素直に、総司は頷いた。そっと手をのばし、男の肩を抱いてくる。
土方はその頬や首筋に口づけを落しながら、ゆっくりと腰を進めた。狭い蕾に男の猛りが突き入れられてゆく。
「……あッ、や…ぅッ」
総司が悲鳴をあげ、仰け反った。無意識のうちにか上へ逃れようとする。だが、勝手に動けばかえって怪我させてしまう。
土方はその細い肩を掴み、押え込んだ。そのまま、慎重に貫いてゆく。
「ん…あッ、あッ、苦し……っ」
「力を抜くんだ、総司」
「やっ、だめ……でき、な…ぁあッ」
総司の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。それが痛ましく、胸奥が苦しくなる。だが、今更やめられるはずもなかった。
「すぐに……よくしてやる」
そう囁きかけ、土方はぐっと腰を入れた。最後まで己を受け入れさせる。
男の腕の中、華奢な躯が仰け反った。
「ぁああッ!」
彼の肩に爪を食い込ませ、躯を震わせている。その痛みに眉を顰めたが、それでも手を離させようとは思わなかった。
しばらくの間、総司の躯が彼のものに馴染むまで、じっくりと待った。胸のぷくんとした乳首を舐めあげ、腋下から腰へのしなやかな線を両手で何度も撫で下ろしてゆく。
そうするうちに、次第に総司の躯が柔らかくなってきた。
潤んだ瞳で見上げ、桜色の唇が囁く。
「……土方、さん……」
「大丈夫か」
「えぇ……たぶん」
まだ不安げだったが、それに優しく微笑みかけ、身をかがめた。そっと長い睫毛に口づけを落としてやれば、子どもが驚いたような顔で見上げる総司が可愛い。
「動くぞ」
土方はそう云って、半分ほど己のものを引き抜いた。はぁっと総司が息を吐く。そこを見計らい、一気に最奥を穿った。
「ひッ! あッ」
総司は思わず彼の肩にまたしがみついた。だが、その声に苦痛の色はない。
それを確かめ、土方はゆっくりと抽挿を始めた。男の太い猛りが蕾に深く挿しこまれ、また引き抜かれる。
淫らな音に、総司は耳朶まで真っ赤になった。恥ずかしげに目を閉じ、快楽だけを追う。
「んっ、くっ…ぅっ、んっ」
声を出すのが恥ずかしいのか、片手の甲を唇に押しあてた。それを無理やり外させ、掠れた声で囁きかける。
「堪えるな」
「だって…や、あ…っ」
「おまえの声を聞きたいんだ……総司」
低めた甘やかな声で囁かれ、それにさえ感じて総司はびくびくと躯を震わせた。
男の大きな掌が総司のものを掴み、淫らに揉みこんだ。
土方が腰を打ちつけるたび、ぬぷっと蜜がこぼれ出した。だが、いきそうと思った瞬間に愛撫をとめられ、息がとまる。
「あっ、ふっ…ぅっ、ぅんッ」
いきそうでいけない状態に、とうとう総司は激しく身悶えた。泣きながら男の腕にしがみつき、懇願する。
「お願…いッ」
泣きじゃくる総司に、土方は目を細めた。意地悪く笑いかけてやる。
「何だ、云ってみろよ」
「……いかせ……いかせてぇっ…ッ」
それに土方は満足げに喉奥で笑った。可愛くて可愛くて、躯中すべてを舐めまわしてやりたくなる。
もっともっと苛めてやりたかったが、それでは可哀相だと思い、掌の中のものをきつく擦りあげた。もう限界だったのだろう、あっという間に、総司のものが弾けてしまう。
「あぁ……っ」
総司が頤を突き上げ、泣き叫ぶ。
とたん、蕾の奥がきゅぅぅっと締まり、土方のものをきつく甘く締めあげた。痺れそうな程の強烈な快感だ。
土方は思わず喉を鳴らした。たまらず、総司の両脚を肩に担ぎあげる。
何をされるか察した総司がはっと息を呑み、逃れようとした。だが、それを抱え込んで、力強い抽挿を始める。
達したばかりで敏感になっている蕾に、男の太い楔を打ち込まれた。
総司は目を見開き、甲高い悲鳴をあげた。
「ぁッ! ぁあっ…や、ぁあーっ」
いやいやと首をふるが、躯を二つ折りにされ脚を押し広げられ、もっと深く男を受け入れさせられた。そのままの姿勢で、蕾の奥を何度も男の猛りで抉られる。
突き上げる強烈な快感に、堪えようのない悲鳴が唇から迸った。
「ひぃっ、ぃああッ、アッ…ぁああッ」
「……総司っ、たまらねぇ……っ」
「もっ、や…ぁああッ、ぁっひぁあッ!」
一際甲高い悲鳴をあげた瞬間、再び、総司のものが弾けた。それと同時に、蕾の最奥へ土方の熱が叩きつけられる。
総司は泣きじゃくった。
「ぁっ、ぁあっ…ぁあ、あ……っ」
注ぎ込まれる男の熱にさえ感じて、腰を何度も跳ねあげた。強烈な快感が怖くて、必死になって土方の背にしがみつく。
それを抱きしめ、土方は最後まで腰を打ちつけ続けた。すべて注ぎおわると、はぁっという満足げな吐息が男の唇からもれる。
それに、総司はふるっと躯を震わせた。深く繋がったままだからなのか、彼のすべてに感じてしまうのだ。
土方は汗ばんだ黒髪をかきあげ、そっと口づけてきた。まだ繋がったまま、何度も唇を重ねあう。
「ぁ、んっ…ぅ……っ」
情事の後の口づけは、総司をうっとりと夢心地にさせた。抱きしめてくれる男の力強い腕も心地よい。
そんな総司を愛しげに見つめ、土方は何度も口づけた。可愛くて可愛くてたまらない。
ようやく手にいれた恋人が、何よりも愛しかった。世の中に、こんなにも大切なものがあるのかと思った。
この幸せのためなら、何を失ってもかまわない。
「……愛してる」
そっと囁いた土方に、総司は幸せそうに微笑んだ。そして、手をのばすと、男の首をかき抱き、また深く唇を重ねたのだった……。
朝だった。
柔らかな陽光が部屋の中へ射し込んでいる。
それがちらちらと目に眩しく、土方は思わず顔をしかめた。片手で目をおおい、吐息をもらす。
「……ん……」
今、何刻なのだろうと思った。少なくとも朝である事は確かだ。
そう思いながら、片手で傍らを探った土方は、一瞬にして目が覚めた。褥の中を見下ろしたとたん、愕然となる。
「総司ッ!?」
そこには、誰もいなかった。
見回せば、周囲に散らばっていたはずの着物もない。ぬくもりさえない事から、随分前に出ていったのだとわかった。
なのに、その気配にさえ気づかず、眠り込んでいたとは。ようやく最愛の者を手に入れた安堵感、それに輪をかけたのは、連日の激務による疲れだろう。
それでも、目覚めなかった己が酷く悔やまれた。
「あいつ……っ」
すぐさま頭に浮かんだのは、江戸へ向ったのではないかという事だった。
あれ程、何度も云っていたのだ。そうに違いなかった。
土方は慌ただしく着物を纏うと、そのまま部屋から走り出した。通りがかった仲居に聞けば、やはり、総司は大門が開いたと同時に出ていったらしい。
それを聞いた瞬間、躯中の血が逆流するような怒りに襲われた。
何故なのだ。
昨夜、あれほど愛しあい求めあったのに。
おまえは何故、逃げるんだ。
どんなに愛しても求めても、気を許したとたん、彼の手の内から逃げてしまう総司に、激しい怒りを覚えた。
店を出ながら、土方は奥歯をぎりっと食いしばった。袴の裾をひるがえし、足早に、まだ明けやらぬ花街を歩いてゆく。
「……逃がすものか」
押し殺した声で呻く男の瞳は、狂気じみた情念を湛えていた……。
