総司の瞳に感情が揺れた。
 今にも泣きだしてしまいそうな表情で、唇を震わせる。
 答えられるはずがなかった。
 先程の斉藤と同じように、総司もまた決して答えられないのだ。
 選べるはずもなかったのだから。その一人を選びたくとも、状況が総司にそれを許さなかった。
 どんなに想い焦がれても、愛していても、その人の傍にいることさえ許されぬ辛さ。
「──」
 斉藤の胸がきつく痛んだ。
 総司の気持ちは知っているはずだったのに、訊ねてしまったのだ。こんな残酷な問いかけはすべきではなかった。
「すまない」
 頭を垂れ、謝した。
「今すぐ選べるのなら、おまえも苦しまないな。本当に……すまない」
「斉藤さんは……」
 総司は微かに笑った。
「私の気持ちを全部、知っているみたいですね」
「……」
「私が誰を想っているか、何に思い悩んでいるか、全部……」
「全部、わかっている訳ではない」
 斉藤は出来るだけ想いをこめて、云った。
「けれど、わかりたいと願っている。せめて、おまえの気持ちは理解してやりたいと心から思っているんだ」
「ありがとう……斉藤さん」
 そっと長い睫毛を伏せた。
「わかってくれる人がいるのって、今の私にはとても大きな支えになります。土方さんが斉藤さんを信頼した理由もわかる気がする……」
「あの人はおれを信頼なんかしてないよ」
 斉藤は苦笑した。
「決して心を許さない人だ。土方さんが心を許すとしたら、総司、おまえだけだろう」
「まさか」
 総司はゆるく首をふった。
「そんな事あるはずありません。あの人を裏切った私など、心を許すはずもない」
「裏切り……?」
 訝しげに問いかけた斉藤に、総司はもう何も答えなかった。
 ふっと視線をそらし、こちらへ向き直った時は、いつもの総司だった。まるで何事もなかったように菓子の包みを開き、愛らしい笑みをうかべる。だが、その瞳にはまだ涙の名残があった。
 それを見つめながら、斉藤は何もできぬ己に、たまらぬ虚しさを覚えた。












 伊東甲子太郎による新撰組分離は明らかなものとなっていた。
 薩摩藩と渡りをつけ、準備も進めつつあるようだ。その事も皆、放った手の者により知っていたが、土方は冷ややかに傍観していた。
 むろん、伊東側も土方がこのまま放置しておくはずがないと、警戒している。
 近藤と土方は、年明け頃には、伊東が分離を申し出てくるだろうと予期していた。それは、間者として潜り込ませている斉藤の話からも、推測できる。
 公の事としては、それで良かった。
 だが、副長でなく、一人の若い男になると、到底それでは済まされなかった。
 この世で最愛の者が、手許から奪い去られていくのだ。それを見送ることしか出来ぬ己に、歯がみする思いだった。
 それでも、昼間は冷徹な副長として振る舞うことで、己の感情を吐露せずに済んでいる。伊東と寄りそい、無邪気に笑う総司を見ても、己の激情を一切表に出さず無表情でいられた。
 だが、夜は無理だ。
 夜の闇が落ちてくると、思い出すのは、あの山里での日々だった。
 幾度も抱きあい、愛しあった幸せな日々。桃源郷のような夢。
 あれほど愛していると誓いあったのに、互いだけを求めあったのに、今、その愛しい恋人は他の男の腕の中にいるのだ。ましてや、近いうちに、彼の手さえ届かぬ遠くへ奪い去られようとしている。


 ……気が狂いそうだった。


 苦しくて辛くて、じっとしている事さえ出来ない。衝動的に、夜、道場へ向い、一人で木刀をふるった事もあった。誰かに見つかれば、頭がおかしくなったかと思われるような行為だったが、焦燥感と怒りに、とても眠れそうになかったのだ。
 その夜も、土方は眠れなかった。
 何度も寝返りを打っていたが、とうとう諦め、身をおこした。髪をかきあげ、深くため息をもらす。
「……ざまぁねぇな」
 己の不甲斐なさに思わず舌打ちした。


 こんなにも渇望するのなら、あの時、手放さなければよかったのだ。
 あの時も怯えていたが、それでも、総司はもともと彼を愛してくれている。なら、すべてを話し、愛していると抱きしめれば、応えてくれるはずだった。
 なのに、総司を残して去ったのは自分の意思ではなかったのか。
 そのくせ、今になって悔やみ、飢えたように求めてしまうなど、愚かな話だと思った。
 女遊びをさんざん繰り返してきながら、本気の恋になると、こんなにも不器用なのだ。否、本気だからこそ、どうしていいのかわからず、間違ったり迷ったりをくり返してしまうのか。


 土方は寝着の上に羽織をはおると、立ち上がった。素足のまま外へ出ると、ひやりとした冷気が足裏から伝わってくる。
 外はしんと静まりかえっていた。
 当然、宿直や夜の見回りに出る巡察もあるので、起きている隊士たちもいるはずなのだが、何しろ広い西本願寺の屯所だ。土方の部屋がある奥までは、その喧噪も伝わってこない。
 見上げると、紺色の夜空に満月が煌々と輝いていた。驚くほどの月明かりだ。
 昼間とは違う青白い光に辺りはつつまれつつ、樹木も花も皆、寝静まっている。まるで、世界に彼一人しか存在しないような、そんな不思議な心地さえした。
 だが、その孤独感がいい。
 土方は奇妙なほど浮立つ思いで、縁側から庭に降り立った。庭下駄に足をいれ、ゆっくりと歩いてゆく。
 さらさらと、風が彼の黒髪を吹き乱した。それをかきあげつつ、目を細める。
「美しい月だな……」
 思わず呟いた。


 山里での日々、あの時もこうして夜空を見上げたものだった。
 恋人同士になってからは二人縁側で寄りそい、美しい月を眺めていた。
 抱き寄せる土方の腕の中、少し恥ずかしそうに目を伏せたあの愛らしい顔までも、よく覚えている。


 ため息をもらした土方だったが、その時になって初めて、自分が一人ではない事に気づいた。
 はっと我に返り、月明かりの向こうを透かし見る。
 樹木の傍に、誰かがいた。ひっそりと佇んでいる。
 相手も今、彼の存在に気づいたのだろう。困惑しているようだった。新入り隊士などが鬼の副長に気づき、怯えているのかもしれない。
 素知らぬふりで、土方は踵を返そうとした。
 その時だった。
「……土方、さん」
 小さな声が彼を呼んだ。それに、息がとまった。
 信じられぬ声を聞いた気がした。だが、確かに今、あの愛しい声が自分を呼んだのだ。
 ふり返った土方は、僅かに目を細めた。
 そんな彼の前、一人の若者がゆっくりと樹木の陰から歩み出る。白い小袖を纏った華奢な姿。
 確かに、総司だった。
 細い絹糸のような髪を一つに結わえ、綺麗に澄んだ瞳で彼を見つめていた。桜色の唇が柔らかで、少女のようだ。
「……こんな夜に何をしている」
 低い声で問いかけた土方に、総司は少し怯えたようだった。
 目を見開き、ぎゅっと両手を握りしめてしまう。
「眠れなくて……」
「……」
「外に出てみたら月が綺麗で、つい見入ってしまったのです」
「月が綺麗、か」
 土方は懐手をし、夜空を見上げた。
「そうだな……綺麗だな」
「……」
「だが、夜は冷える。その恰好では寒くないのか」
「大丈夫、です」
 そう答えたが、総司のなめらかな頬は少し青ざめていた。真冬なのだ。なのに、総司は小袖一枚しか着ていない。
 土方は己の羽織を脱ぐと、それを総司に手渡してやった。え? と驚く総司に促す。
「さっさと着ろ。少しはましなはずだ」
「でも、そんな事をしたら、土方さんが」
「おまえは病の身だ。大事にした方がいい」
 それでも躊躇っている総司に、土方は短く舌打ちした。とたん、びくりと細い肩が震える。
 また怯えさせてしまったと悔いながら、土方は無理やり己の羽織で総司の小柄な躯を包みこんでやった。
 大きな瞳で彼を見上げている総司が、可愛らしい。
 しばらくの間、二人して月を見上げていたが、やがて、総司が小さく身震いするのに気づいた。やはり躯が冷えてきたのだろう。
「部屋に戻ろう」
 そう云った土方に、総司は素直に頷いた。だが、何を躊躇うのか、足を踏み出そうとしない。
 土方は嘆息すると、その細い肩に手をまわした。ぐいっと強引に抱き寄せ、歩き出す。それに、総司は驚いたようだが、抗いはしなかった。黙ったまま男の腕に身をまかせている。
 縁側からあがった土方は少し迷ったが、いったんは自分の部屋に連れ帰った。覗いてみると、総司の部屋は酷く冷え切っていたのだ。それで、いったん火を起こし、あたたまったのを見計らってから帰した方がいいと判断した。
 総司はおずおずとした様子で土方の部屋に入ると、躊躇いがちに見回した。西本願寺に移ってから、総司は彼の部屋を訪れた事がない。山南の事件以降なので、壬生屯所の時から仲違いしていたためだった。
「坐れよ」
 そう云った土方に、総司は「はい」と大人しく頷いた。
 土方も腰を下ろすと、火鉢を引寄せ、火をおこし始める。もともと種火があった為、部屋の中はすぐにあたたかくなった。
 行灯の仄かな明かりが照らす中、総司は目を伏せ、火を見つめている。それは、まるであの山里での光景のようだった。あの時も、二人は囲炉裏の傍で、火を見つめながら言葉をかわしたのだ。
「もう怪我はいいのか」
 突然、訊ねた土方に、総司は驚いたように顔をあげた。それから、慌てて返事をする。
「あ、はい。治りました」
「酷い怪我だったが、残らなくて良かったな」
「ご迷惑をおかけしたみたいで……申し訳ありません」
 総司は小さな声で謝した。それを眺めながら、土方は言葉をつづけた。
「記憶は……戻らないのか」
「はい」
「何一つ覚えていないという訳か」
 ほろ苦い気持ちで呟いた土方を、総司は不安そうに見つめた。しばらく躊躇ってから、訊ねてくる。
「あの、何かいけない事をしたのでしょうか」
「いけない事?」
「土方さんの気にそわないような、何か。もちろん、怪我のせいで足止めになり、迷惑をかけたのはわかっています。でも、それ以外にも……」
「何もねぇよ」
 淡々とした口調で答えた。
「俺とおまえは、迎えが来るまであの家で過していた。ただ、それだけの事だ」


 それだけであるはずがなかった。
 あの山里で、二人は愛しあったのだ。 
 静かに、深く、愛しあったのだ。


「……そう、ですか」
 総司は視線をおとした。その横顔が愛らしくも、美しい。
 長い睫毛がなめらかな頬に翳りをおとし、桜色の唇が微かに震えた。艶やかな花のような色香が、ふと匂いたつ。
「……」
 思わず視線を吸い寄せられた。
 この細い躯は、男を知っているのだ。男に組み敷かれ、抱かれる快楽を覚え込んでいる。それを教えたのは、他ならぬ土方だった。
 山里で、何度も躯を重ねた。それこそ、身も心もとけあうほど交わり、愛しあったのだ。何もかも知っている。なめらかで絹のような肌の感触も、細い躯の奥にある熱も、交わった瞬間、あげた甘い泣き声も……。
「……っ」
 ぞくりとした。
 飢えが、欲情が、こみあげてくる。
 どれほど長いこと、ふれていないのか。抱きしめていないのか。
 躯中が燃えそうなほど総司が欲しかった。今すぐ、この場で抱いてしまいたくなる。
「……土方、さん?」
 視線をそらせた土方に、総司が小首をかしげた。余程、彼の様子がおかしかったのだろう、珍しいことに自ら近づいてきた。
「どうしたのですか? 土方さん……?」
「──」
 見下ろした男の視線の先で、総司は長い睫毛を瞬かせた。潤んだような瞳に、袷からのぞく白いなめらかな肌が、彼を狂わせた。
「!」
 気がつけば、細い躯を抱きすくめていた。驚く総司を膝上に抱きあげ、そのまま深く唇を重ねる。
 突然あたえられた口づけに、総司は半ば呆然としているようだった。それに構わず、土方は激しく貪るように口づけた。甘い唇を吸い、震える小さな舌を舐めあげる。
 そのままびくりと震えた細い躯を、ゆっくりと手のひらで撫でまわした。とくに、総司が一番感じやすい腰骨あたりを撫でてやる。
「っ、ぁ…ん……っ」
 彼の腕の中、総司が小さく喘いだ。唇から、くぐもった甘い吐息がもれる。
 やがて、土方は若者の躯を褥の上にそっと横たえた。それに、総司はおとなしく従った。
 この先、男に何をされるのか、気づいていないようだった。でなければ、こんな従順に身をまかせているはずがない。
「総司……」
 土方は総司の躯にのしかかり、何度も口づけた。そうしながら、着物の下へ手をすべりこませ、感じやすい部分を撫であげていってやる。首筋や胸もとに、唇を押しあてた。そのたびに、総司は甘い吐息をもらしている。
 驚くほど、総司は従順だった。何一つ抗うことなく、男に身をまかせている。
 土方はそれを訝しく思ったが、考えてみれば、総司は彼に想いを寄せてくれているのだ。ならば、無理やりでない限り、身をまかせてくれるのは当然かもしれなかった。
 それに、彼の方も今更やめる事など到底出来なかった。総司が欲しくてたまらないのだ。今、総司を抱かなければ、気が狂ってしまいそうだった。
 むろん、手荒な事をするつもりはなかった。優しく丁寧に愛撫し、総司の躯に快感だけをあたえてゆく。
 久しぶりだったし、何よりも総司は初めてだと思っているため、受け入れさせる準備には時をかけた。部屋にあった丁字油を潤滑油にし、小さな蕾を柔らかく開かせてゆく。それに、総司は羞じらい、小さく身を捩った。
「ぃ、や…ぁっ、ぁ…っ」
 耳朶まで真っ赤にして恥ずかしがる総司は、いたいけで可愛かった。それに何度も口づけをあたえ、丁寧に愛撫した。どこがどう感じるか、すべて知り尽くしている。後は、総司の中にある快感を引き出すだけだった。
 やがて、土方は総司の両膝裏に手をかけると、押し広げた。濡れそぼった蕾に己の猛りをあてがい、突き入れてゆく。
「ぅ、く……ッ」
 総司がきつく唇を噛みしめ、仰け反った。
 やはり、狭い。だが、熱くてとろけそうだった。今更やめられるはずもない。
 土方は総司の躯を二つ折りし、強引にのしかかった。ゆっくりと最後まで刺し貫く。
「ぃ、ひッ…ぃぁああッ」
 奥までずんっと突き上げた瞬間、総司が泣き叫んだ。びくびくっと小柄な躯が震える。
 それを抱きしめ、土方は大きく息をついた。僅かに身を起こし、総司の顔を覗き込む。乱れた髪をかきあげ、囁きかけた。
「痛いか……?」
 問いかけに、総司は小さく首をふった。あまつさえ、笑みまで浮かべてみせる。
 だが、その涙でいっぱいの瞳に、無理をしているのだとわかった。
 土方はたまらなくなり、もう一度、細い躯を両腕に抱きしめた。腕の中で、総司が小さく喘ぐ。
「ぁ……」
「こんな事をして、すまん。だが、俺はどうしてもおまえが欲しかったんだ。総司、おまえが可愛くて、愛しくて……」
 愛しくてたまらないと頬をすり寄せた土方に、総司はそっと目を閉じた。苦痛がまだあるはずだが、それでも、従順に抱かれている。
 土方は、総司の耳もと、首筋に唇を押しあて、手のひらをなめらかな肌にすべらせた。総司のものを手の中に包み込み、ゆっくりと揉みあげる。
「……っ」
 総司が小さく息を呑んだ。それに宥めるように口づけをあたえ、愛撫をつづける。
 やがて、なめらかな頬に赤味がさし、きつい締め付けも薄れた。それを確かめつつ、土方はゆっくりと腰を動かした。総司を決して傷つけたり怖がらせたりしないよう、慎重に抜き挿しをくり返す。
「ぁ、ぁあ…っ」
 小さな甘い声があがり、総司が身を仰け反らせた。感じやすい箇所だけを突き上げ、擦りあげてやると、たちまち仔猫のような泣き声をあげ始める。
 あの頃と同じだった。とても快感に従順だ。
 土方は満足げに笑い、本格的に揺さぶりはじめた。総司の細い腰を掴み、何度も己の猛りを突きいれる。奥まで激しく穿ち、くちゅくちゅと鳴るぐらい淫らに感じ部箇所だけを捏ねまわしてやった。
 それに、総司が身悶え、泣きじゃくる。
「ん…ふっ、ぅ…んッ、んッ──」
 総司は片手の甲を唇に押しあて、必死に声を殺した。屯所の中であるため、人に聞かれることを恐れているのだろう。
 安堵させるため、土方は優しく囁いた。
「大丈夫だ、総司」
「ぁっ、ん…ぅ、ぅ……」
「周囲は皆、空き部屋だ」
「……ほん…と……?」
 小さな小さな声が問いかけた。
 情事が始まってから、初めての言葉だ。土方は、ほっとするものを感じつつ、頷いた。
「あぁ。我慢する必要はねぇんだ」
「よかった……」
 総司が涙目のまま、小さく笑った。それに、この行為が受け入れられている事を、実感する。決して一方的なものではないのだ。
 愛しあうことを、総司自身も望んでくれている。
 その証に、総司は細い両腕をさしのばすと、彼の首をかき抱いた。口づけを求めるように、目を閉じる。
 たまらず唇を重ねた。甘い口づけをかわしあいながら、快楽の頂きへと昇りつめてゆく。
「ぁあッ、ぁ…ぁあっ」
 もう声は押し殺されなかった。
 二人は求めあい、強烈な快感に溺れた。激しく腰が打ちつけられるたび、総司は泣き叫んだ。ぐしゃぐしゃに乱れた褥と着物の中で、二人の荒い息づかい、甘い声がどこまでもとけあってゆく。
 逞しい男に組み敷かれた若者の躯は小柄で、肉食獣に貪られる小動物のようだったが、危ういほど艶めいた光景であることも確かだった。
「ひぃッ、ぃッ…ぁあっ」
「すげぇ締まる…たまらねぇ……っ」
「ぃ、や…ッ、ぁあッ、も…だめッ、だめぇッ」
 総司が泣きながら、己のものに手をのばした。
 だが、それを払いのけ、土方はその根本をきつく押さえた。そのまま、ずんっと奥を突き上げる。
 総司が「ひいっ」と悲鳴をあげ、仰けぞった。涙でいっぱいの目を見開き、堰き止められた快感に、唇を震わせている。
 それを見下ろし、土方は激しい律動をくり返した。躯が揺さぶられ、強烈な快感へと追いあげられる。
「い、いやぁッ、離してっ、いかせ…ぁあっ」
「総司、総司……く…っ」
「ひぃッ、ひっ…ぃぁああッ」
 一際甲高い悲鳴をあげた瞬間、総司の腰奥に男の熱が叩きつけられていた。それと同時に、解放された総司のものからも蜜が迸る。
 同時に与えられた快感美に、総司は狂ったように悶えた。「あぁっ」と泣き叫び、腰を何度も揺らしている。縋るものを求めるように土方の背に抱きつき、啜り泣いた。
「ぁ、ぁ…つい、あついの……っ」
「総司……可愛い総司……」
 額に頬に首筋に、何度も唇を押しあてられた。そうしながら、最後の一滴まで注ぎこむように、腰を動かしつづける。
 やがて、二人は熱い吐息をもらし、きつく抱きしめあった。何度も口づけをかわし、求めあう。
 身も心もとけあわしたいと、願うように。
 部屋の中に、甘い恋人のたちの時が再び訪れた──。