いきなり抱きついてきた宗次郎に、戸惑った。
今、自分は酷く身勝手な言葉を吐いたのだ。宗次郎の気持ちや不安も無視した挙句、己の狂った情愛を剥き出しにした。
それに対しての答えなのか。
宗次郎は、彼の腕の中におとなしくおさまっていた。あまつさえ、歳三の胸もとに縋りつき、目を閉じている。
男にすべてを任せた仕草だとしか思えなかった。ならば、受け入れられたと考えてもよいのか。
「……総司」
その細い肩に手をかけ、顔をあげさせた。瞳を覗きこむ。
大きな瞳は潤み、揺れていた。甘く切ない表情に、たまらなくなる。
「総司、愛してる」
想いをこめて囁いた声は、彼にしては酷く掠れていた。それに、宗次郎は一瞬、目を見開いた。
だが、すぐにこくりと頷くと、小さな声で答えてくれる。
「私も……です、私も好き……大好き」
「総司……」
「歳三さんになら、どんな事をされてもいい……」
小さな声は幼くてあどけなくて、なのに、男の情欲をきつく射抜いた。たまらず、その細い躰を抱きしめ、口づけてしまう。
細い顎を掴んで仰向かせ、深く唇を重ねた。今までのような軽い接吻ではない。大人の、情欲を思い知らせるような深く激しい口づけだった。
それに、宗次郎の躰がびくりと震える。細い指さきが縋るように男の腕を掴んだが、それでも口づけた。
何度も角度をかえて口づけるうちに、宗次郎の躰から力が抜け、なめらかな頬が紅潮した。唇を離して見下ろすと、とろけきった表情で見上げられる。
「すげぇ……可愛い」
歳三は囁きかけると、その細い躰を両腕に抱きあげた。宗次郎も手をのばし、縋りついてくる。
隣の部屋に入れば、そこには褥が敷かれてあった。料理屋や料亭を出会い茶屋のように使う客が多いため、褥は朱色の艶やかなものだ。
ぼんやり灯された明かりが部屋を浮かび上がらせ、その光景に宗次郎は躰をすくめた。
固くなった宗次郎に気づいたのだろう。歳三は宗次郎の躰を褥に優しく降ろしてやりながら、囁いた。
「大丈夫だ……全部、俺にまかせていろ」
「歳三、さん」
不安げに瞳を揺らせる宗次郎が、胸が痛くなるほど可愛かった。
念兄弟になってから、当然のことだが、幾度も抱いた躰だ。だが、今はその躰の中に十四才の宗次郎がいるのだと思うと、酷く倒錯的な情欲がこみあげた。禁忌を犯しているような、妙な昂ぶりがある。
歳三は宗次郎に何度も口づけながら、着物を脱がせていった。背中に手をいれて少し抱き起こし、するりと着物を脱がせてしまう。
たちまち帯や着物が腕にまとわりついただけの白い裸身にされてしまい、宗次郎は羞恥に頬を火照らせた。
柔らかく優しく、男の手のひらが肌を撫で、それを辿るように唇が押しあてられていく。胸の尖りを丹念に舐め上げられ、躰が跳ねた。
「や、ぁっ」
「……ここが感じるだろう?」
くすっと男の声が笑った。脇下や首筋、胸、どこをさわられても声が出てしまうことに、宗次郎は困惑してしまう。
だが、考えてみれば、当然のことだった。歳三は総司として何度も抱いてきた躰なのだ。感じるように躾けられているし、彼も総司の躰を知りつくしている。
それでも、歳三の指や唇が引き出していく快感に、宗次郎は喘ぎ、怯えた。どんどん自分が変わっていくような気がするのだ。とくに、歳三が宗次郎の下肢に顔をうずめた時には、悲鳴をあげてしまった。
「い、やだぁっ」
顔を真っ赤にして男の頭を押しのけようとした。だが、歳三はしっかりと宗次郎の腰を掴んで離さず、その桃色の小さなものを柔らかく舐めしゃぶる。
羞恥と快感に、宗次郎は頭の中が朦朧とした。自然と涙がこぼれる。
「ぃや、ぁっあ、あ」
やがて、男の手のひらに蜜がこぼれるようになると、歳三は顔をあげた。まだ達してはいない。
涙目で見上げる宗次郎に、歳三が笑いかけた。
「久しぶりだからな……達さないほうが楽だ」
「? どういう……」
意味がわからず戸惑っている宗次郎の前で、歳三は傍にあった香油を手にとった。麝香を指さきに絡め、宗次郎の下肢に手をのばす。蕾を撫でてくる男の指に、宗次郎は腰を跳ねあげた。
「いやっ」
「しっかり準備しねぇと、気持ちよくならないぜ?」
「だ、だって……」
恥ずかしいと言いたかったが、そのまま口をつぐんだ。もっともっと恥ずかしいことを、これから、この男とするのだということに気づいたのだ。
宗次郎も男との情交について少しは知識があった。どのようにして男を受け入れるのかは知っていたのだ。だが、知っているのと身をもって受け入れるのとでは、かなり違いがある。
歳三は宗次郎の肌に口づけたりしながら、丁寧に蕾を愛撫していった。少し柔らかく綻んだのを確かめると、指を挿しこんでくる。浅い処で抜き差しされる男の指に、宗次郎は喘いだ。
「っぁ、あ、ッん、あ」
「もう少し……深く入れような?」
甘い声で囁きかけ、歳三は指を蕾の奥に深く挿しこんだ。そのまま奥深くで動かし始めた男に、宗次郎は躰をびくりと震わせる。
「ああっ」
思わず甲高い声をあげてしまった。
男の指の腹で蕾の奥部分を擦りあげられるたび、甘やかな快感美が腰奥にじわりと広がるのだ。思わず男の腕に縋りついた。
「な…に? これ、やっ、あ、ぁあっ」
「おまえのいい処だ。すげぇ気持ちいいだろ? ほら……」
「あ、あ、あッ」
「後で、ここを俺のもので擦りあげてやるからな」
くっくっと喉を鳴らして笑いながら、歳三は宗次郎の蕾の奥を丁寧にほぐしていった。もう指も三本も突き入れられている。
そろそろ頃合いだと見たのだろう。
歳三は宗次郎の両膝を掴んで押し広げると、香油で濡れた蕾に猛りをあてがった。そのまま抗う暇もあたえず、一気に貫く。
「ぃ、ああああッ」
宗次郎は悲鳴をあげ、仰け反った。
ものすごい重圧感と重量だった。大人の男の太い楔をずぶずぶと蕾に突き入れられたのだ。男の腕の中で、宗次郎の華奢な躰が突っ張る。
「ひぃッ、やぁっあ、あッ」
ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
痛みと熱さと苦しさで、どうにかなってしまいそうだ。
宗次郎は泣きながら、首をふった。
「やっ、い、痛いッ……苦し、やめ…てぇっ」
「総司……息を吐くんだ」
「やだ、やだぁッ、歳三、さん、許して……っ」
「いい子だから、少し我慢してくれ」
懇願する宗次郎に構わず、歳三は宗次郎の躰を二つ折にしてのしかかった。ぐっぐっと最奥までしっかりと男の猛りを呑み込ませる。
そのたびに、宗次郎は「ひぃっ、ひっ」と悲鳴をあげた。いやいやと首をふりながら、男の胸を押し返そうとする。
その手を掴んで、指さきを舌で舐めあげた。
「総司……愛してる」
耳もとで囁かれた睦言に、息を呑む。
見上げると、歳三の熱っぽく濡れた黒い瞳がこちらを見下ろしていた。深く繋がった躰の部分が熱い。
額に、瞼に、頬に、唇に、口づけの雨を降らされた。
「愛してる……好きだ、総司、俺にはおまえだけだ」」
「……っ」
身の内が震えた。
私も好き、と心から思った。愛してる、と。
この世でただ一人、あなただけを愛してる。
私にはあなたしかいらないの、あなたが傍にいてくれれば、他には何も望まない。
愛してる、愛してる、愛してる。
この気持の強さを、激しさを、深さを、どうか知って。
私がどんなにあなたを愛しているか……
両手をのばした宗次郎に、歳三が微笑んだ。その背に手をまわして抱き起こし、深く唇を重ねてくる。そのことで躰の奥で男の猛りに角度がついたが、宗次郎は小さく呻いただけだった。
歳三が宗次郎の躰を半ば抱きおこしたまま、柔らかく揺さぶり始める。先ほど言ったように、宗次郎のいい処に己の猛りのくびれをおしあて、ぐりぐりと捏ね回した。それに、悲鳴をあげる。
「あ、あ、あーッ」
掠れた悲鳴をあげて仰け反る宗次郎を強く抱きとめた。いきなり泉のようにわきおこった快感に、宗次郎は混乱した。訳がわからず、必死になって男の背にしがみつく。
歳三は唇の端をあげると、宗次郎の躰を褥に押し倒した。両膝を掴んで押し開き、緩やかに己の猛りを突き入れていく。
そのまま奥深くを丁寧に擦りあげる男の動きに、泣き声がもれた。味わうように抜き差しを繰り返す歳三に、たまらなくなってくる。
「っ、ぁ、やぁッ、やだぁ、ぃっ」
「ここがいいんだろう? 気持ちよくねぇか?」
「も、もっと…やッ、ぁっ、もっと……」
泣きじゃくりながらねだる宗次郎が可愛くてたまらない。
歳三は宗次郎の膝裏に指を食い込ませ、躰を二つ折りにすると、いきなり激しく腰を打ちつけ始めた。男の太い楔が狭い蕾の奥を穿ち、引き抜かれる。
激しく容赦ない責めに、宗次郎は泣き叫んだ。
「ぃ、ぁああーッ……!」
ぱんぱんっと鳴る音に、宗次郎の悲鳴、男の息づかいが混じり、淫靡な空気をつくり出してゆく。
あまりにも凄い責めに反射的に躰が逃げを打った。だが、すぐさま両膝が掴まれ、乱暴に引き戻される。ぐりっと奥を穿たれ、泣いた。
「ぁっ、ぁあっ…やぁあっ」
「おい、逃げるなよ。おまえがねだったんだろうが」
「ひっぃっ、こ、んな…ぁあっ、ァッぅ…ぁあっ」
息つく暇もない激しい責めだった。男の猛りを何度も蕾に奥に打ち込まれる。そのたびに腰奥を貫く快感美に、躰中が痺れた。
気がつけば、男の膝上に座らされていた。両膝を抱えられ、何度も腰を下ろさせられる。そのたびに最奥まで貫く太い剛直に、悲鳴をあげた。
まるで味わうように、歳三は半ば目を閉じ、宗次郎の躰を無理やり上下させる。もう男の思うがまま、宗次郎は犯されるばかりだった。既に、腰奥に男の熱を一度吐き出されている。
だが、すぐさま始まった激しい交わりに、宗次郎は泣きじゃくった。
やがて、二度目の頂きが訪れる。
「ぁ、ぁあっ、や、も、堪忍…っぁあッ」
「……く……っ」
「ひッぃぁああっ、ぁああーッ!」
甲高い悲鳴をあげた瞬間、宗次郎の腰奥に二度目の男の熱が吐き出されていた。それと同時に、宗次郎のものも蜜を吐きだす。
歳三は宗次郎のものをぎゅっと手のひらで握り、しごいてやりながら、激しく腰を打ちつけた。己の熱を最後の一滴まで宗次郎の奥に吐き出す。
「はぁ……っ」
満足気な吐息をもらし、歳三は組み敷いた宗次郎を見下ろした。宗次郎は失神していなかったが、ぼうっと霞んだ瞳で彼を見上げていた。頬が上気し、潤んだ瞳が艶かしい。
それに、優しく唇を重ねてやった。
舌を吸いあい、互いの躰を重ねて抱きしめあった。深く繋がった二人の躰はとけあうかのようだった。
いつまでも睦み合う二人を、行灯の明かりが柔らかく包みこんでいた。
朝、起きると、歳三が優しい瞳で見下ろしていた。
目が覚めたとたん、きれいな笑顔をむけられ、どぎまぎしてしまう。
「お、おはようございます……」
それでも朝の挨拶をしたとたん、ぱっと昨日のことが思い出された。
記憶をなくした日もこんな朝を迎えたことがあるが、あの時と違うのは、彼と自分がどんな事をしたのか、どんな事をされたのか、全部覚えていることだ。羞恥に、かぁぁっと耳朶まで赤くなってしまった。
それに、歳三がくすっと笑う。
「すげぇ可愛い」
引き寄せられ、ぎゅっと抱きしめられた。それに、宗次郎は子供のようにバタバタと手足を動かした。
「は、離してっ、歳三さん」
「いやだ」
「いやって……」
駄々っ子のように言う歳三に呆れていると、濡れたような黒い瞳で覗きこまれた。
「こんな可愛いおまえをやっと抱くことが出来たんだ。それで何で離さなきゃならねぇんだよ」
「何でって……恥ずかしいから」
「恥ずかしいものか。おまえも俺も恋人なら当然のことをしたんだ、それとも、おまえはあれが嫌だったのか」
不意に、歳三は心配そうな表情になった。そっと背中を撫でてくる。
「もう二度と……したくねぇか?」
「そ、そんな事はないです。そりゃ痛かったし、苦しかったけど……でも、その……途中から気持ちよかったし」
「あぁ、俺もすげぇ気持ちよかったよ。おまえの躰……最高だな」
「歳三さん、そんな事を言わないでっ」
恥ずかしさに思わず叫んでしまったが、歳三は楽しそうに喉を鳴らして笑っているばかりだ。それに、宗次郎はため息をつきたくなった。
何しろ、もともと九つも年上だったのに、精神的にはもっと年が離れてしまっている。宗次郎にすれば、歳三はとても大人の男で、どきどきする事ばかりだった。
昨夜も訳がわからず、ただもう歳三に必死にしがみついているばかりだったのだ。あれで歳三が本当に気持ち良いと思ってくれたのか、不安になってしまう。
(私みたいな子供……本当にいいのかな)
そんな事を思っていると、なめらかな頬に口づけられた。
「またおかしな事を考えていただろう」
「……別に、おかしな事じゃありませんよ。ただ……」
「ただ?」
「記憶が戻った方がいいんじゃないかなって思ったのです。今のままじゃ、私、子供すぎるし……」
そう言ったとたん、歳三の黒い瞳が揺れた。