何が知っている、だ。
 何が四十八手全部やっちゃった、だ。
 あいつは、俺を何だと思っているんだか。


 土方は風呂に入りながら、はぁっとため息をついた。
 確かに、江戸の頃からさんざん遊んできたことは否定できない。京にのぼってからも同じくだった。
 だが、昔はともかく、総司への想いも、理由の一つなのだ。あのすべすべした白い肌にふれたい、蕾みたいな唇に口づけたい、華奢な躰を思うさま抱きしめたいと、何度何度思ったことか。
 その欲情を発散させるため、島原や祇園に通っていたというのに(いや、少しは楽しんだことは認めるが)、あの総司はあどけない笑顔で、「四十八手全部やっちゃった」などと、とんでもない事を云ってくるのだ。
 可愛い顔で、きれいな声で云うから、始末におけない。
 もっと子供の頃なら一喝して叱りつけた処だろうが、総司も大人だ。色恋沙汰の知識があるからと云って、叱る訳にもいかないのだ。
 だが、男として、恋人として、面白くない事は事実で……


「……複雑だよな」
 湯をかけながら、呟いた。


 新選組副長という立場にある自分の傍におくためには、総司が大人である必要があった。
 どんな事にも動じない冷静さと、凛とした芯の強さが必要なのだ。
 だが、一方で、いつまでも子どもであって欲しいとも願ってしまう。
 何も知らない、無垢で可愛い総司でいて欲しいのだ。


 土方は風呂場から出ると、手早く浴衣を身につけた。気持ちを切り替えるように、帯を締める。
 部屋に戻った土方に、ほっとした様子の総司がいそいそと寄ってきた。大きな瞳にうかぶ不安げな色に、思わず苦笑してしまう。
 手をのばし、指の背で頬を撫でてやった。
「もう怒っていねぇよ」
 男の言葉に、総司も安堵したようだった。可愛い笑顔で、男の腕に抱きついてくる。
「よかった……。さっきは本当にごめんなさい」
「別に、怒られるような事はしてねぇだろ」
「でも……土方さん、怒っていたでしょう?」
 覗き込むようにして訊ねられ、思わず黙り込んでしまった。
 仕事の事なら、どんな偽りでも策略でも、平気で応じることが出来るのに、総司相手になると駄目なのだ。どこまでも不器用で正直な男になってしまう。
 土方はため息をつき、片手で黒髪をかきあげた。
「……確かに怒っていたな」
「やっぱり、でも、どうして?」
「それを聞くな」
 苦笑まじりに答え、頬に口づけを落とした。細い肩を抱きながら、隣室へ入ってゆく。
 そこに敷かれた褥を見たとたん、総司の躰が強張ったのを感じた。土方はできるだけさり気ない口調で、云った。
「今夜はこのまま寝ても構わねぇよ。おまえも……色々あるだろうし」
「色々って、そんなの別にありません」
 総司は視線を落としながら、云った。
「怖いことは確かだけど……私はもう決めているから。でも、土方さんが私を望まないと云うなら……」
「望んでいるさ」
 きっぱり云いきった土方に、総司は安堵したようだった。ほっとしたように笑うと、彼の胸もとに凭れかかってくる。
 その従順さにたまらぬ愛しさを覚えながら、土方は総司の細い躰を抱きすくめた。唇を重ねる。
 何度も口づけをかわしながら、褥の上に坐りこんだ。そのまま互いの着物を肌けさせてゆく。
 男の大きな手のひらが細い躰を撫でまわし、白い肌のあちこちに唇を押しつけられた。そのたびに、総司が甘い声をあげる。
 褥に二人して倒れ込んだ時には、総司の頬は上気し、瞳も艶めかしく潤んでいた。そのまま両手をのばし、男の肩に縋りついてくる。
「ぁ…ん……っ」
 土方が総司のなめらかな肌にふれるたび、桜色の唇から甘い喘ぎがもれた。
 その細い腰から腿にかけての線を、手のひらで優しく撫でおろした。下肢を開かせると、総司の頬にぱっと朱がのぼる。
 宥めるように腿の内側に口づけ、押し広げた。そのまま、総司の下肢に顔をうずめる。
「ひ、土方さんっ……」
 総司が目を見開いた。顔を真っ赤にして恥らい、必死に逃れようとするが、土方はやめなかった。総司のものをしゃぶり、舐めまわしてゆく。
「ぁ…あっ、やだぁ……っ」
 いやいやと首をふり、総司はすすり泣いた。だが、その声さえも甘く、男を煽るばかりだ。
 先っぽに舌をねじ込むようにしてやると、総司が「ひぃっ」と悲鳴をあげ、腰を跳ねあげた。とたん、白い蜜が迸る。
 土方が口許を手の甲で拭いながら顔をあげると、信じれないという表情で、総司が彼を見ていた。真っ赤な顔で目を見開いている。
「ま、まさか……飲んだ、のですか」
「あぁ」
「どうして、そんな!」
「可愛いおまえのものだ。あたり前だろう」
 平気な顔で答えてくる男が信じられない。
 この人にそんな事までさせてしまった自分が信じられず、呆然としていると、突然、くるりと向きを変えさせられた。うつ伏せにされ、腰の下に枕を入れられる。
 慌ててふり返った。
「な、何……っ?」
「下準備だ。何も心配するな」
「心配ですっ、初めてなんだから」
「初めてだからこそ、だ。おまえは俺に従っていればいいのさ」
 そう云いながら、土方は部屋の中を見回した。普通の宿なので、さすがにふのりなどは用意されていない。仕方がないと、火をつけていなかった油をつかう事にした。
 皿の油を指にとる彼に、総司が呼びかけた。
「土方さん」
「何だ」
「土方さんは、綺麗な若衆を抱いたことあるの?」
「……は?」
 一瞬、何を云われたかわからなかった。
 というか、この切羽詰まった状態で何を云いだすんだ、こいつは、である。 
 呆気にとられた顔で見下ろすと、総司は拗ねたように褥に突っ伏していた。
「そりゃ、隊には可愛い小姓もいるし、土方さんがそういうの好きなら仕方ないけど……」
「あのなぁ」
 思わず深々とため息をついた。とりあえず皿を横に置き、後ろから総司の躰を両腕に抱きすくめてやる。
 素肌がふれあい、とても心地がよかった。
「そんなもの関心さえ持った事ねぇよ。可愛いのなんかいたか? 俺は、おまえしか目に入らないから、全然わからねぇな」
「嘘つき……」
「嘘じゃねぇよ。俺は、同性を抱くのはおまえが初めてだ。上手くいくか、ちょっとひやひやものさ」
「でも、さっき、従っていればいいって」
「おまえ、女も抱いた事ねぇだろ?」
「……」
 沈黙してしまった総司に、土方はくすっと笑った。とたん、ばたばた暴れ出した若者を愛しく思いながら、言葉をつづけた。
「俺がおまえの初めての男か……すげぇ嬉しいよ」
 耳もとで囁かれた言葉に、総司が息を呑んだ。目を見開いてから、少しずつ顔が赤くなってゆく。
 その首筋や背中に口づけてから、土方は濡らせた指を下肢にすべらせた。蕾をくすぐるように指の腹で撫でれば、ふるりと総司の腰が震える。
 可愛いと思いつつ、何度も指の腹で縁をなぞるように擽っていると、やがて、総司の唇から甘い喘ぎがもれるようになった。
 頃合いを見計らい、蕾の中心に指を沈めてゆく。
 とたん、総司が「ぁ……あっ」と声をあげたが、奥の方を擦りあげると、褥に顔を伏せた。
「ん…ぁ…っ、ぁあ……っ」
 総司の声音を聞きながら、ゆっくりと指を動かしてゆく。
 奥の方にしこりのような部分があり、そこを擦りあげると、総司がより高い声をあげた。快感を覚えているらしい。
 それを知った土方は、執拗なぐらいそこだけを責めてやった。
「っ、ぃ…やぁっ、ぁんっ」
 やがて、総司の蕾はとろとろに柔らかく熱くなった。彼の太い楔を受け入れるには、さすがに痛みがあるだろうが、それでもかなりほぐれてはきている。
 土方はもう一度、総司の躰を仰向けにさせると、両膝裏を掴んで左右に押し広げた。恥ずかしい恰好に、総司の顔がぱっと赤くなる。
「いやっ」
 慌てて逃れようとする躰を抑えつけ、その蕾に己の猛りをあてがった。はっと息を呑んだ総司が抗う暇もあたえず、そのまま一気に貫く。
「……ぃ、ぁああーっ」
 甲高い悲鳴をあげ、総司がのけ反った。
 大きな瞳に涙があふれ、無意識のうちにか上へ逃れようとする。
 だが、それを土方が許すはずもなかった。細い肩を掴んで引き戻すと、ぐっぐっと最奥まで穿つ。
「っ、ひぃィッ……っ」
 総司は泣きじゃくりながら、子供のように首をふった。細い指さきが男の腕に縋りついてくる。
「や…だ、痛いっ…ぃっ、やめ……っ」
「今更無理だ……ほら、力を抜け」
「できな…ぁっ、ひぃ…ぅっ、っ……」
 苦痛に啜り泣く総司に、土方は眉を顰めた。さぐってみたが、怪我はさせてはいないようだ。
 耳の裏や首筋に、何度も口づけて愛撫した。
「よくしてやるから……総司、力を抜くんだ」
「っ、は…ぁっ、ぁ…土方…さ……」
「いい子だな……総司……」
 あやすように抱きすくめられ、何度も口づけられているうちに、総司も少しずつ落ちついてきたようだった。強張っていた躰の力も抜け、頬に赤みが戻りはじめる。
 それを確かめ、土方は動き始めた。いったん腰をゆっくりと引き、再び深く慎重に突き入れてゆく。蕾の奥を擦りあげられる感触に、総司がのけ反り泣いた。
「ひぃ、ぁあっやぁっ、ぁ」
「大丈夫だ……怖がらずに感じてみろ」
「ぁ、ぁっぁあっ」
 総司は必死になって喘ぎ、ぽろぽろ涙をこぼした。
 土方はその膝裏を掴んで押し広げ、腰を打ちつけた。その抽挿が早まるにつれ、快感の熱がどんどん高まってゆく。
 訳のわからない強烈な快感に、怖くなった総司は泣いた。男の肩に手を突っぱね、逃れようとするが、膝裏を掴まれた状態ではもう犯されるままだ。
「や…だぁっ、も、やめ…てぇっ」
 泣きじゃくり嫌がるさまが、より男を煽るのか。
 懇願した総司に、土方は喉を鳴らし、より激しく腰を打ちつけてきた。蕾の奥を男の太い楔が力強く穿つ。それを何度も何度もくり返され、総司は躰の芯がかぁっと熱くとけるのを感じた。
 腰が痺れたようになり、次第に、もっと激しくめちゃめちゃにされたくなってくる。太くて硬い猛りがぎちぎちの蕾の奥を抉る快感に、頭がおかしくなりそうだ。
「ぁぁあっ、ぁ…はぁっ…ぁ――」
 逞しい男の躰の下で、総司は甘い声で泣きじゃくった。土方は深く唇を重ね、深く穿ったまま腰をまわしてくる。蕾の奥を淫らに捏ねまわされ、総司はくぐもった悲鳴をあげた。
 次の瞬間、総司のものが弾けてしまう。白い蜜が飛び散ったとたん、総司の蕾がきゅうっと締まった。それに、土方が喉を鳴らす。
「……たまらねぇ」
 獣のように低く呻くと、土方はすらりとした総司の足を抱え込んだ。ぐっと身を乗り出して、総司の躰を無理やり二つ折りにすると、激しく腰を打ちつけ始める。ぱんぱんっと音が鳴る程の烈しさだ。
「いやあぁあッ」
 目も眩むような強烈な快感美に、総司は泣き叫んだ。達して感じやすくなった蕾を、男の太い楔に穿たれるのだ。
 やめて、許してと懇願するが、土方は一切容赦しようとしなかった。のしかかり、身動き一つできないようにした状態で、激しい抽挿をくり返す。
 総司は自ら望んだとおり、めちゃめちゃに犯されながら、泣きわめいた。
「ッ、ぁあっぃ、ぁあっはぁっ」
「……総…司…っ」
「ひぃ、ぃぁあっぁっ、ぁああーっ」
 一際高い声をあげた瞬間、総司の蕾の奥に、男の熱が叩きつけられていた。どろりとしたものが注がれる感触に、目を見開く。
 反射的に逃れようとしたが、土方は総司の細い躰を抱えこむようにして、腰を打ちつけ続けた。
「ぁ、ぁあ…ぁっ、ぅ――」
 初めて男の熱を感じた総司は、半ば呆然としたまま啜り泣いた。その首筋に、頬に、土方がむしゃぶりつくように口づけてくる。
 掠れた声が耳もとで囁いた。
「すげぇ……可愛い、可愛くてたまらねぇ」
「土方、さ……」
「もう一度いいか? 一度じゃ我慢できねぇよ」
「え……」
 意味がわからずぼうっとしていると、男が身を起こした。胡坐をかき、その膝上に総司の躰を抱きあげてくる。
 はっと気づいた時にはもう遅かった。
 腰を掴まれ、無理やり男の剛直の上に降ろされる。総司は悲鳴をあげた。
「ぃ、いやあぁっ」
 ずぶずぶと真下から貫かれ、凄まじい快感が一気に突き抜けた。もの凄い衝撃で、思わず男の肩にしがみついてしまう。
 だが、休む間もなかった。
 土方は総司の両膝を掴んで抱え上げると、無理やり上下させ始めたのだ。どんなに嫌がり泣き叫んでも、何度も何度も、男の太い剛直の上に坐らされてしまう。
「ぁあーっ、ぁーっ」
 悲鳴をあげる総司を、土方はうっとりと見つめた。
「すげぇ可愛い、最高だ……」
「ぃ、ぃぁあっやぁっ、ぁあっ、ぁ」
「おまえは俺のものだ……総司」
 一度箍が外れてしまった男にとって、総司はもはや貪りつくされる獲物でしかなかった。
 その小柄な躰は、逞しい男の腕にとらえられ、何度も何度も犯される。男の熱情が満たされるまで許してもらえそうになかった。
 再び褥の上に押し倒され、激しく腰を打ちつけられながら、総司は泣き声をあげつづけた。
 果てもなく続く蜜事は、今まで堪えてきた男の情愛の深さを、あらわしているかのようだった。