電話越しに、彼の声が低く笑った。
『……たまにはいいだろう?』
「たまにはって、でも……どうして成田に?」
『もちろん、俺を迎えに来るためだよ』
「え?」
 それに、総司は小首をかしげた。





 春の昼さがりだった。
 総司が営む小さな、だがマニアの間ではよく知られた古書店の奥。小さなカウンターの前に坐り、総司は電話をかけていた。
 むろん、相手は云わずと知れた彼だ。
 大天使総司の恋人。
 それも、人であり悪魔であり。
 これは総司が知らぬ事だが、この世の誰よりも邪悪で残酷な魔王──土方が電話の相手だった。





「迎えに? どういう事ですか……?」
 思わず訊ねた総司に、土方はちょっと黙った。
 どこか怒ったような口調で、低く呟いた。
『おまえは本当に……つれないな』
「土方さん」
『二週間も音信不通だったのに、俺がどこで何をしているのか、確かめようと思わなかった訳か?』
「だ、だって!」
 慌てて、総司は受話器を握りしめた。
 そんなつもりではなかったのだ。
 本当はいつもいつも、傍にいたいのに。彼にふれていたい、見つめていたいのに。
 この2週間も、気がつけば彼の事ばかり考えてしまっていた。
 だけど、でも。
「ごめんなさい。でも、土方さんから連絡ない時ってすごく忙しいから……お仕事の邪魔したくなくて……っ」
『……』
「怒りました? 本当にごめんなさい! だけど、あの……あなたの事ばかり考えてたのは、本当なんです。1日中でも、あなたの傍にいたいけど、でも、そんなの我儘だってわかっているから、だから……っ」
『……』
 沈黙をつづける土方に、総司は泣きそうになってしまった。思わず頭の奥がつんと痛くなり、大きな瞳が涙で潤んでしまう。
 きゅっと唇を噛みしめ俯いた総司の耳に、土方のため息が聞こえた。
 思わず身構えてしまうと、低い声が囁いた。
『……すまない』
「え?」
『ちょっと意地悪した』
 男の言葉に、総司は目を見開いた。
「意地悪って……」
『おまえがつれなくて、勝手に拗ねて意地悪してしまった。本当にすまない』
「え、嘘。今の……怒ってなかったの?」
『音信不通で放っておいたのは、俺の方だろ。それに、おまえが可愛い事を云ってくれて嬉しかった』
 優しい声で囁いてくれた土方に、総司の躯から力が抜けた。
 が、ちょっとだけ唇を尖らせてしまう。
「もう……土方さんったら……意地悪です」
『だから、ごめんって。お詫びに、何でもするよ』
「何でも? じゃあね……」
 総司は甘えるような声で云った。
「今すぐ、あなたに逢いたい……です」
『……総司』
「それからね、2週間とは云わないから……そう、一週間ぐらいかな。ずーっとあなたと一緒にいたいの」
『……』
 総司の言葉に、土方は沈黙してしまった。
 きっと電話のむこう、困惑した表情になっているのだろう。
 政治家として多忙な日々を送る彼に、出来るはずもないのだから。もう何ヶ月も先まで、彼のスケジュールはびっしり組まれているのだ。その合間をぬって、総司との時間を出来るだけつくってくれている事にだけでも、感謝しなければいけなかった。

(……でも……)

 時々、我が儘を云ってしまいたくなるのだ。
 こんなふうに長い間逢えないでいると、どうしても無性に逢いたくて。
 彼が恋しくて恋しくて、たまらなくて───


「……ごめんなさい」
 小さな声で謝った。
 一つ息をついてから、言葉をつづけた。
「さっきの仕返しに、ちょっと意地悪を云いました。今のは忘れて下さい」
 沈黙をつづける土方に、そう口早に告げると、そのまま電話を切った。
 思わず深くため息をもらし、カウンターに突っ伏してしまった。両腕の中に顔をうずめ、ぎゅっと目を閉じる。


 こんなにも愛しいなんて。
 恋しいなんて。
 大天使である自分が、人であるどころか悪魔の彼に、身も心も虜にされてしまっている。
 一分一秒でも長く、あの人の傍にいたい。
 あの人の綺麗な黒い瞳に、ずっとずっと見つめられていたい。
 そう心から願ってしまう自分が、少し怖かった。
 まるで引きずりこまれてゆくように、この恋に、愛に。
 溺れこんでゆく自分がたまらなく───





 もう一度、ため息をついた時だった。
 突然、また電子音が鳴った。びくっと震え、慌てて身を起こした。
「……土方さん?」
 そう呟き、確かめると、携帯電話だった。メール着信音が鳴ったのだ。
 画面を開いた総司は、目を見開いた。
「え……?」
 メールは簡潔なものだった。
 日時と待ち合わせ場所だけが記され、パスポートを持ってくるように表示されてある。
「……まさか、外遊にでも連れてゆくつもりじゃないよね」
 そう呟いた総司は不意に思い出し、ごそごそと新聞を取り出した。
 先日、土方の記事を見たのを覚えていたのだ。そこに、直近のスケジュールが書いてあったはずだった。
「あ、これだ。えーと……」
 記事を読んだ総司は、次の瞬間、目を見開いた。
「……え……?」










 携帯電話を閉じると、土方は切れの長い目をすっとあげた。
 タイトに締めたネクタイに、ベスト、白い糊のきいたカッターシャツ、濃紺のスーツのボトム姿が、ストイックでありながらこの男特有の色気を醸し出していた。
 ソファに携帯電話を放り投げながら、窓際へゆっくりと歩み寄った。
 ボトムの隠しに両手を突っ込み、窓ガラス越しの光景を眺めた。
「……」
 ホテルの厚いガラスの向こう──眩いほどの夜景が広がる。
 そびえ立つ高層ビル群の迫力が凄まじい程だった。
 世界の中心と云ってもよい、不夜城都市。
 ニューヨーク。
 あまりの人の多さ、迫力、渦巻く欲望と争いに、普通の人間なら呑み込まれてしまいそうだが、魔王である土方はそれに快楽さえ覚えてしまう。自分の指さき一つで、呆気ないほど人が邪悪さを剥き出しにしてゆく様が、おかしくてたまらないのだ。
「……」
 冷笑をうかべつつ、土方はここ数日の出来事を反芻した。
 むろん、ニューヨークを訪れたのは、政治家としてだ。仕事での外遊だった。
 だが、土方はそれだけで終わらせるつもりはなかった。表の顔である代議士としての仕事を終えると、夜の街に繰り出し、さんざん人々の欲望を操り弄んでやったのだ。
 斉藤などが傍にいれば、魔王たるものが何もわざわざと忠告しただろうが、もともと土方にはこういう悪戯っけがある。邪悪であるが故に、始末におけない奔放さだった。
(……すげぇ面白かったな)
 自分が引き起こした惨状を思い出し、土方はくっくっと喉奥で嗤った。
 その時、扉がノックされた。
「……失礼致します」
 背後で扉が開閉し、静かに秘書の山崎が入ってきた。
 それに、土方はふり返らぬまま云った。
「さっき連絡した事だが、もう手配できたか」
「はい」
 山崎は歩み寄ると、一通の封筒をさし出した。
「ここに詳細がございます。スケジュールの方も処理させて頂きました」
「そうか」
 土方はふり返ると、封筒を受け取った。中身を確かめ、満足げな笑みをうかべる。
「ご苦労だったな……もう休んでいいぞ」
「あの……」
 困惑したように視線をさまよわせた山崎に、土方は薄く笑った。
 しなやかな指さきで前髪をかきあげながら、かるく小首をかしげてみせる。
「何だ、云いたい事があるのか」
「……余計な事かもしれませんが……ご一緒されるのは……」
「あれに決まってるだろう」
 事も無げに答えた。
「総司だ。あの大天使さ」
「大天使と、一週間も日夜を共にされるのですか。そのような事をされて、もしも……」
「山崎」
 手をのばすと、すっと山崎の肩にふれた。びりっと走った魔力に、思わず山崎は息を呑んだ。
 土方は目を細め、冷ややかなまなざしで下級悪魔を眺めた。
「いったい、おまえは何を心配している」
「……」
「斉藤に何を云われたか知らねぇが、それこそ余計な差し出口だ。己の立場をわきまえろ」
「も、申し訳ありませんでした」
 山崎は慌てて後ずさり、頭を深く下げた。かるく手をふった土方に、小走りに部屋を出ていってしまう。
 それを見送る事もなく、踵を返した。再び窓際へ歩み寄ると、土方は封筒からチケットを取り出した。
 薄く笑いながら、それを指さきでかるく弾いた。
「……おまえの望み、叶えてやるよ」
 そして、愛しげに目を細め、囁いたのだった。


「俺の可愛い天使……」









 約束の日。
 総司はタクシーを降りると、不安げな表情で成田空港のロビーへ歩み入っていった。
 時間は2時前だ。
 土方が指定した日時だった。だが、どうもよくわからない。
 本当に外遊に連れてゆくつもりなら、ニューヨーク行きの前に云ってきたはずだった。
 日本への帰国時に迎えにこさせて、そのくせパスポートを持ってこいとは。
「……本当に、土方さんってわからないや」
 小さく呟き、総司はため息をついた。
 むろん、パスポートは総司も持っている。楽々と国境など越えてしまう天使である以上、あまり必要はないのだが、身分証明書がわりに使っているのだ。
 総司は待ち合わせ場所の、入国ロビーに立つと、きょろきょろと辺りを見回した。
 だが、そこにはそれらしい姿はない。
 土方の帰国ならば、いつも大勢の記者や秘書たちに囲まれているはずなのだ。一目でわかるはずだった。
「もしかして……これも意地悪?」
 総司は思わず小さく呟いてしまった。
 柱にもたれたまま、きゅっと唇を噛みしめる。
 そんな事、彼がするはずないと思っていても、いつも不安でたまらなくなってしまうのだ。
 彼のことが好きで好きでたまらないから、尚のこと、彼の行動一つで一喜一憂してしまう。それでも、溺れこんだ自分が怖くなるくらい、彼のことが愛しくてたまらなくて───

(……土方さん、逢いたいよ……)

 彼の事を思うだけで熱くなる胸を片手でおさえ、総司は俯いた。
 その時、だった。
 突然、その腕が柔らかく掴まれた。
「!?」
 驚いて顔をあげた総司は、もっと目を見開いた。



 いつのまに現れたのか、一人の若い男が目の前に佇んでいたのだ。
 色の濃いサングラスで、その端正な顔だちは半ば隠れてしまっている。すらりとした長身に、スーツではなく、淡い色のシャツにジーンズ、スプリングコートという格好だった。
 政治家どころか、ビジネスマンにさえ見えない。
 いっそ学生にさえ見えてしまう、その若い男は───
「……待ったか?」
 僅かにサングラスを指さきで押しさげ、彼は小さく笑ってみせた。
 濡れたような黒い瞳が、悪戯っぽい光をうかべている。
「……土方…さん……!」
 思わずその名を叫びかけた総司の唇に、そっと指さきが押しあてられた。
 くすっと笑う。
「成田を出るまでは、その名は禁句だ」
「……ご、ごめんなさい」
「別に謝る事はないさ。ほら、行こう」
 そう云うと、土方はすっと片手をさし出した。それに思わず手を差しだしてしまった総司に、優しく微笑みかける。
 手を繋いで歩きだしながら、土方は云った。
「それ程、時間をつまらせた訳じゃないが、一応手続きってものがあるからな」
「手続きって、いったい何ですか」
「パスポート持ってきただろう?」
「え、あ……はい」
「That’s right!」
 にっこり笑ってみせた土方は、総司を連れて入国ロビーから歩み出た。そのまま、出国ロビーへと向かってゆく。
 それに、総司は慌てて彼の手をひっぱった。
「ちょっ……ちょっと待って!」
「何だ」
「これって、ここって……出国ロビーでしょう? まさか、また外遊にでも……」
「仕事のか? この格好で? それはあり得ないだろう」
 くすくす笑いながら、土方は答えた。
 何が愉しいのか、超ご機嫌だ。
「だいたい、俺はそこまで公私混同したりしないよ。おまえを外遊なんか連れてゆくものか」
「じゃあ、いったい……」
「おまえが云ったじゃないか」
 悪戯っぽい声音で、土方は答えた。
「一週間でいいから、俺と一緒にいたいって」
「あ、あの電話……!」
 総司はかぁっと頬を紅潮させた。
 あの時は淋しさに耐えきれず思わずねだってしまった事だが、今思えば、恥ずかしさと申し訳なさで俯いてしまう。
「ご、ごめんなさい……あんな我が儘を云って、だけど、ぼく……」
「我が儘? 俺はそう思ってないけどな」
 手をのばし、そっと優しく頬にふれてやりながら、土方は目を細めた。
 サングラスの奥で、黒い瞳が昏い愉悦をふくんでいたが、それに総司は気づかない。
 耳もとに唇を寄せ、甘やかに囁いた。
「……可愛いよ、総司」
「え?」
「あんな事をねだってくれたおまえが、可愛くてたまらなかった」
「土方…さん……」
 驚いたように顔をあげた総司に、土方は優しく微笑みかけた。
「だからさ、おまえのおねだりを叶えてやる事にしたんだ。ちょうど、俺も一週間ぐらい羽をのばしたかったしね」
「一週間って……え、え。ほんと!?」
 思わず叫んでしまい、総司は慌てて両手で口をおさえた。その仕草がまた可愛らしい。
 そおっと周囲の様子を伺ってから、それ程声が響かなかった事にほっとしながら、小さな声で訊ねた。
「でも、スケジュールは……?」
「大丈夫だ。ちゃんとやり繰りしたさ」
「一週間も……どこへ行くの? ここにいるって事は国外ですよね」
「バリだよ」
 事もなげに土方は答えた。航空チケットをかるく弄びながら、小さく笑う。
「よく行くホテルがあるんだ。あまり人に知られていない、隠れ家的なね。きっと、おまえも気にいると思う」
「ぼくは……」
 ちょっと頬を紅潮させ、総司は口ごもった。が、思いきって云ってしまう。
「ぼくは、土方さんが一緒にいてくれるなら……それだけで嬉しいです」
「総司」
 土方の瞳がとろけるように優しくなった。思わず細い肩を抱き寄せ、頬にキスを落としてやる。
「俺もだ。俺も……おまえがいてくれるなら、世界中のどこでも楽園になるよ」
「楽園だなんて」
 嬉しそうに頬を上気させながら俯いた総司に、土方は微笑んだ。肩を抱いたまま、「さぁ、行こう」と促してやる。
 出国手続きをすませ、出発ロビーに入ってから、総司は気がついた。
 まさか旅行に出ると思っていなかったので、何の準備もしてこなかったのだ。
「どうしよう、ぼく……何も……!」
「向こうで買い揃えればいいさ。それぐらい、俺が買ってやる」
「そんな、もったいない」
「別にあって困るものじゃないだろう? もうそんな事で思い煩わないでくれ」
 ロビーのシートに腰掛けた土方はまだサングラスをしていたので、彼の正体はばれていないようだった。だが、その身に纏う華までは押し隠せない。
 しなやかな指さきで黒髪をかきあげる仕草一つにまで、男の艶があふれ、傍を通る女性は皆ふり返っていた。
 だが、そんな事にはお構いなしに、土方は総司の細い肩を抱きよせた。指さきで柔らかな髪を梳き、額や頬に甘く口づけてくる。
「ちょっ……だめです」
 総司は慌てて身を捩った。胸がどきどきして、思わず流されそうになってしまうが、それではいけないのだ。
「こんな場所で、誰かに見られたら……」
「誰かって?」
「あなたを知っている人です」
 そう答えてから、総司はふと気がついた。不思議そうに彼を見あげる。
「……そう云えば、いつもよく周りにいる秘書さん達とか、記者の人たちとかは……?」
 あらためて気づいた事実に、総司は周囲を見回した。
 それに、土方はくすっと笑った。
「まいてやったんだ」
「まいたって……」
「今頃、まだ入国ロビーかな。この格好じゃさすがにわからなかったらしい」
 くすくすと愉しそうに笑う土方に、総司はちょっと目を見開いた。
 服装のせいだけではないだろうが、何だか、いつもの彼とは少し違う。
 まるで悪戯っぽい少年のようで、普段の大人の落ち着きを漂わせた彼に慣れていた総司には、驚きだった。
「どうしたの?」
 思わず訊ねた総司に、土方は小首をかしげた。
「何が」
「だって、何かすごく愉しそう。ニューヨークで何かいい事があったのですか?」
「……そうだな」
 土方は何を思いだしたのか、すうっと目を細めた。快楽とさえ云ってもよい、瞳の色だ。
 ゆっくりと形のよい唇の端がつりあがり、微かな嗤いをうかべた。
 端正な顔だちが、ぞっとするほど酷薄に見える。

(……え……?)

 総司は思わず瞠目したが、一瞬の事だった。
 こちらへ視線を戻した時には、いつもの優しい笑みをうかべていた。
 土方はかるく肩をすくめてみせた。
「たいした事はなかったけど、おまえと逢えたからちょっと浮かれているのかもしれないな」
「……」
「総司……?」
 黙ったまま見つめる総司に、土方は柔らかく呼びかけた。
 その笑顔はいつもどおりの彼だ。
 総司はつめていた息を、そおっと吐き出した。

(……今の、見間違いだよね)

 そうとしか思えなかった。
 否、そう思いたかった。
 怖い、とさえ感じてしまった自分が不安でたまらなくて───

(でも……どうしてなの?)
(どうして怖いなんて思ったの? 土方さんだって男の人だもの。それも、あんな政治の世界の中で活躍している人なんだから、ある程度の冷徹さがないとやっていけないはずなのに。当然のことなのに……)

 否、問題はそこではなかった。
 もっと違う、何かを総司は感じていたのだ。
 大天使だけが持ちうる感覚で。本能で。
 だが、それを総司はあえて押し殺した。無視しようとした。
 別の方向へ、意識をもっていこうとしたのだ。

(少し過敏になりすぎなのかも)
(この間も、悪魔たちを処刑した処だから、この人も悪魔だから……ほんの小さな悪でも、敏感に感じとってしまうのかもしれない……)

 恋人は確かに悪魔だが、とても力が弱いのだ。
 ほとんど人と変らぬ程度の悪しか、持ち得ていない。
 なのに、その彼を怖いと思うなんて。
 自分が何だか、とても嫌な存在に思えてしまった。彼への愛を汚してしまったような……。

(……ごめんなさい、土方さん)

 心の中で小さく謝ってから、総司は土方に身を寄せた。
「……土方さん……だい好き」
 小さな声で囁きながら、男の胸もとに顔をうずめた。不安をふり払うように、ぎゅっとしがみつく。
 そんな可愛い恋人に、土方は微笑んだ。
 そして。
「俺も好きだ。愛してるよ……」
 優しい声で囁きながら、愛する天使を抱きしめたのだった。



 ───その黒い瞳に
 昏い愉悦の笑みをうかべながら……














 


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