綺麗、と思った。
冷ややかだが、端正な顔だちだ。
引き締まった長身に、これほどの男前なら、色街でもさぞかしもてるに違いない。
そんな事を考えながら眺めていると、突然、云われた。
「……謹慎」
総司は呆気にとられ、目を瞬いた。
一瞬、何を云われたか、わからなかったのだ。だが、そんな総司に構わず、男は平然と言葉をつづけた。
「今日から三日間、自室で謹慎だ」
「……」
呆気にとられる総司を、切れの長い目がまっすぐ見つめた。
綺麗に澄んだ、黒曜石のような瞳だ。
整った顔だちも、笑えば、少しは優しそうに見えるかもしれない。
確かに、笑った。
だが、それは唇の端を微かにあげるという、皮肉げな笑みで。男は片頬に薄い笑みをうかべると、冷ややかな声音で云い捨てた。
「無許可で外泊した上に、巡察まで怠けるとはな。謹慎ぐらいで済んで有り難いと思え」
「……」
「以上だ」
容赦ない口調で云いきった男は、総司の反応も見もせず、踵を返した。着流した黒い着物の裾をひるがえし、歩み去ってゆこうとする。
その広い背を、総司は睨み据えた。
初めは何が何だかわからず、呆然としていたが、やがて、怒りがこみあげてきたのだ。
そして。
気がつけば、思いっきり叫んでいた。
「土方さんッ!」
知らないはずの、男の名を。
総司は、白河藩の藩士だった。
藩の用事で、数日前に京へ来たばかりだったのだ。
そのため、右も左もわからぬ状態だったが、総司にとって京の町はとても美しく楽しい場所だった。うきうきしながら、あちらこちらと散歩してまわっていた。
そんなある日の事だった。
白い塗り壁がつづく道で、総司は小首をかしげた。
「……?」
道に、花が零れていたのだ。それも、生半可な量ではない。
まるで枝ごと振るい落としたかのように、色とりどりの小さな花が零れおちていた。視線で辿れば、道をなし、角をまがっている。
総司は身をかがめ、花を拾いあげてみた。
綺麗な、小さな花だ。
色は様々であっても、同じ花のようだった。
「……なんて花だったかなぁ」
細い眉を顰めて考えこんだが、どうしても思い出せない。
やがて、総司は花の名を思い出すことを諦め、ゆっくりと歩き出した。花をたどるように。
歩みをすすめるたび、花はふわふわと舞いあがり、総司の袴の裾にまとわりついた。まるで、喜んでいるかのようだ。
角をまがると、そこに小さな神社があった。花は鳥居の下をくぐり、社の中にまで続いている。
総司は石段をあがり、細く開かれた戸の間から社の中をそっと覗き込んだ。
「……どなたか、いらっしゃいませんか?」
小さな声で問いかけてみたが、中はしんと静まりかえっている。
意外と社の中は明るく、白っぽい春の光にみちていた。誰をも迎えいれるような、あたたかな雰囲気だ。
総司はその雰囲気に誘われるように、社の中へ歩み入った。とたん、中できらりと何かが光った。
「? 何だろ」
歩み寄ってみれば、それは鏡だった。
ご神体なのか、花をかたどった大きな鏡だ。
陽の光をあびて、きらきらと輝いている。
「なんて綺麗……」
思わず感嘆の声をあげ、総司はその鏡を覗き込んだ。
その瞬間、だった。
「!?」
不意に、躯がすうっと吸い込まれる感じがし、目の前がまっ白に光り輝いた。
あっと思った時には、鏡の中へ入り込んでいた。と云っても、泉にでも落ちたような感覚だ。
きらきら輝く中、総司は落ちてゆき、やがて、地面についた。どんっと投げ出された。
「ッ! いたた……」
打ってしまった腕や背をさすりながら、総司は顔をあげた。
とたん、呆気にとられた。
そこは先程まで自分がいた神社ではなかったのだ。小さな花が零れているのは同じだが、戸外だった。
青空が広がり、町屋がどこまでも立ち並んでいる。
京の町の一角だ。
「え、えぇっ……!?」
総司は何が何だかわからず、周囲を見回した。
いったい、いつの間に神社を出たのだろう。
それにしても、ここはどこなのか。
京に出て間もない総司には、皆目見当もつかない。
「困ったなぁ」
そう呟きながら立ち上がりかけた、その瞬間だった。
「!」
突然、後ろから腕を掴まれた。
びっくりしてふり返ると、見知らぬ若者が立っていた。目のつりあがった、きりっとした感じの侍だ。
「総司!」
呆気にとられている総司に、その侍は叫んだ。
がくがくと肩を揺さぶる。
「おまえ、今までいったい何処に!? どこで何をしてたんだっ」
「……え?」
「皆、心配していたんだぞ。まさか脱走とは誰も思わなかったが、斬られたのではないかと、皆、心配して」
「えーと、あの……」
総司は小首をかしげた。思わず愛想笑いをうかべ、後ずさる。
「あの、お人違いじゃありません?」
「は?」
「私、確かに総司という名ですけど、でも、あなた……誰ですか? 脱走っていったい……」
「何云っているんだよ! オレだろ、斉藤一だろうが!」
「さいとう、さん?」
きょとんとした顔で小首をかしげる総司に、斉藤は顔色を変えた。思わずとも云うように腕を掴み、顔を覗き込んでくる。
「おまえ、何も覚えてないのか?」
「だから、違いますって。私、あなたの知ってる総司じゃ」
「沖田総司だろ」
「はい」
「名前も姿形も同じで、別人ですなんてことあるか」
「でも」
「じゃあ、云ってみろよ。おまえの身許は?」
「白河藩の者です」
あっさり答えた総司に、斉藤は目を見開いた。
「それ、おまえの父上の事だろうが。おまえは、新撰組一番隊組長沖田総司だ」
「しんせんぐみ? 何です、それ」
「……」
斉藤は、奇妙な動物でも見るような目で、まじまじと総司を眺めた。だが、やがて、一つため息をつくと、云った。
「とりあえず帰ろう。屯所に戻らないと、どうにもならない」
「私は藩邸に戻ります」
「それ、どこにあるか、わかるか?」
「……」
総司は思わず言葉につまってしまった。
わからないのだ。
というか、だんだん不安がこみあげてきた。
先程からずっと感じていた違和感。
ここは、ここ数日の間に知っている京の町ではなかった。こんな町並みを見た事がないし、それに、今、斉藤に藩邸はどこだと聞かれても答えられない。
そんな事あるはずないと思いつつも、心の奥から一つの考えが浮かびあった。
ここは、自分のいた世界じゃない……?
あの鏡の中に落ちた、不思議な体験。
あれが、自分をこの世界へ連れてきてしまった事象であるのなら、ここは別の世界なのだ。
自分が元いた世界とは、全くの別もの。
総司は何故か、その考えがすんなり理解できる気がした。ありうる事かもしれないと思ったのだ。
神隠しと云うではないか。その一つなのだと考えれば、あの鏡が神社に置かれてあったのも、その証かもしれない。
「……っ」
総司は思わず、ぶるりと躯を震わせた。両肩を自分の手で抱きしめ、俯いてしまう。
斉藤が傍らから心配して覗き込んでいたが、それに答えることさえ出来なかった。
怖かった。強い不安が胸奥からこみあげた。それも当然だ。神隠しにあって、平気でいられるはずがない。だいたい、元の世界へ戻る術もわからないのだ。
(この先、どうすればいいの……?)
「総司? おい、大丈夫か」
斉藤が総司の肩に手をかけ、優しく声をかけてくれた。
それに、のろのろと顔をあげた。
「……」
もし、この斉藤という男の言葉どおりなら、ここでの自分は、しんせんぐみという組織に属しているらしい。ならば、そこで世話になるより他なかった。
他に、頼るところもないのだから。
「……大丈夫です」
総司は云った。大きな瞳で斉藤を見つめる。
「それから、あの、そのしんせんぐみに行きます。そこでお世話になります」
「お世話って……うーん」
斉藤は腕を組み、唸った。だが、いつまでもそうしていても仕方がないと、総司を連れて歩き出す。
道々、斉藤はあれこれ説明してくれた。
新撰組が京都守護職会津藩お預かりであり、京の町で、不逞の浪士を取り締まるのが役目であること。
今、向っている屯所は西本願寺にあり、少し前に移った処であること。
その新撰組の精鋭一番隊組長である総司が、行方不明になっていたため、隊内は大騒ぎだったこと。
「大騒ぎ……?」
「あぁ、もう大騒ぎというか、何というか」
斉藤はやれやれと首をふった。
「もちろん、オレも心配したけど、とくにあの人がなぁ」
「あの人って、誰の事ですか」
「おまえの兄代りだよ。副長やっている人だけど、そりゃもう……」
そう云って肩をすくめた斉藤に、総司は小首をかしげた。
その兄代りの人が、どうしたというのだろう?
斉藤の云っていることは、はっきりしているようで、その実、あちらこちらがよくわからない。
だが、それも全部、屯所という場所に行けばわかるだろうと思っていた。
ところが、だ。
屯所という場所についたとたん、その男に出逢ったのだ。
門をくぐり框を上がった総司を迎えたのは、黒髪に黒い瞳の、冷たい男だった。
傲慢というか、ここまで上から目線で話す男など見た事もない。
男は長身で、それも鍛えられた躯つきをしていた。
完全に成熟した大人の男だ。その躯に黒い着物を纏い、腕を組んで話す様は、人に命令し慣れている感じがする。
でも、だからって、その態度はないんじゃない?
何しろ、こちらは初対面なのだ。なのに、いきなり顔を見たとたん、「謹慎だ」なんて、呆気にとられると共に、めちゃくちゃ腹がたつ。
正直な話、下駄でも脱いで投げつけてやりたいぐらいだ。
「土方さんッ!」
総司は框を駆けあがり、その名を叫んだ。
そして、ふり返った男にむかい、一気にまくしたてた。
「いきなり謹慎はないでしょう!?」
「お、おい、総司」
目を丸くした斉藤が慌ててとめていたが、総司は構わず叫んだ。
「そんな事、あなたに云われる筋合いないし! 私、そんなの絶対従いませんからねっ」
「……」
一瞬、男の目が見開かれた。
その後、どこか探るように、まじまじと総司の顔を見つめてくる。
総司はなめらかな頬をふくらませた。
「何です、私の顔に何かついてますか」
「……いや、おまえ、総司だよな?」
「そうですけど。っていうか、名前はそうですけど、でも」
「? なら、俺の命令が聞けないというのは、どういう事だ」
「だーかーら、何で、あなたの命令を聞かなきゃいけないのです! そんな義理ないでしょ」
「いや、義理というか……本当に、おまえ、総司か?」
何度も念押ししてくる男に、総司はいい加減きれた。駄々っ子のように、どんっと足を踏みならす。
「総司です! でも、あなたの知ってる沖田総司じゃありません!」
「は?」
「私は白河藩士なんです。あなたとも初対面です」
「……おい」
不意に、土方の顔色がかわった。がしっと大きな掌で肩を強く掴み、総司の顔を覗き込んでくる。
「まさか、おまえ記憶がないのか!?」
「記憶はありますよ。でも、あなたの事は知りません」
「やっぱり、ないんじゃねぇか!」
「だから、記憶はありますってば。私は白河藩士で、沖田総司といいまして」
「斉藤」
一生懸命説明する総司を完全に無視し、土方は斉藤の方へ向き直った。切れの長い目が完全に据わっている。
「これはどういう事だ」
「さぁ」
ふられた斉藤は肩をすくめた。
「オレにも皆目見当がつきませんねぇ」
「だが、おまえが総司を見つけてきたのだろう」
「そうですよ。寺田町の方で坐り込んでいる処を見つけたんです。その時点で、おかしいなぁとは思ったんですけど」
「おかしい?」
「えぇ、自分が白河藩士だと云ってる事も勿論ですけど、この京の町の地理も頭に入ってない感じですし、何よりも新撰組というもの自体、知らないみたいで」
「つまり、何か? 自分の名前以外は忘れちまっているという事か」
「そうなるかもしれませんねぇ」
「おまえ、何を呑気な」
「呑気って……けど、まぁ、いいじゃないですか」
斉藤は言葉どおり、呑気そうに云った。
「十日間も行方不明だった総司が、無事戻ってきた。それで記憶が少し抜けていようが何だろうが、あなたにとって、総司が戻ってきた事には変わりはないんですし。とにかく、ここ数日の騒ぎにはオレもほとほと疲れはてました」
「……」
土方は形のよい眉を顰め、黙り込んでしまった。
ここ数日の騒ぎとは何なのか、さっぱりわからないが、土方にとってかなり耳に痛い事らしい。その証拠に、眉間に皺を刻み、苦々しい顔で沈黙している。
だが、それでも恰好よく見えるのだから、男前の人って得と思って眺めていると、不意に、土方が総司の躯を離した。それまで、ずっと総司の肩を掴んでいたのだ。
「とにかく、部屋に連れて行け」
「はぁ」
「で、おまえが全部説明しろ」
「えぇっ? オレがですか。そんな冗談じゃ」
「この俺の命令が聞けねぇのか」
土方は凄味のある目で斉藤を見据えた。それに、斉藤がやれやれと首をふる。
「わかりました、わかりましたよ」
「返事は一つでいい」
「はいはい」
まったく懲りていない様子で、斉藤は総司の方に向き直った。ちょっと笑いながら、「じゃあ、とりあえず部屋に案内するよ」と云ってくる。
それに頷いた総司を、歩き出そうとしていた土方がふとふり返った。少し躊躇ってから、低い声で問いかけた。
「そう云えば、おまえ」
「はい?」
「初対面なのに、何で、俺の名を知っていたんだ」
「……え?」
総司はきょとんとした表情になった。それから、しばらく考えてから、小首をかしげた。
「そう云えば……そうですね」
「……」
「あ、そうだ! 世界は違うけど、少しは繋がっている処があるのかも。記憶とか。じゃあ、えーと、他にも色々知ってるのかな」
などと、あれこれ考えはじめた総司を、土方は、奇妙な表情で眺めた。
そして、ため息まじりに肩をすくめると、そのまま何も云わず歩み去っていったのだった。
新撰組での日々が始まった。
総司には、右も左もわからない事だらけだったが、三日もたてばある程度は動けるようになっていた。
一番隊組長であり、筆頭師範代である総司は、とにかく忙しい。巡察に稽古に打ち合わせにと、それこそ目がまわるようだ。
だが、とりあえず慣れる他なかった。それもこれも、前の世界に戻るまで、この世界の本当の沖田総司が戻ってくるまでだ。
居心地は良かった。
周囲は皆、総司に優しく、とくに局長の近藤はまるで息子か弟のように可愛がってくれる。うまくいってないのは、一人だけだった。
副長である土方だ。
何事も最初が肝心なのである。
とにかく、初対面の印象が悪すぎたのか、総司はやたら土方に反発し、土方も総司に俺様な態度をとりつづけた。
そのため、最近の打ち合わせは、きゃんきゃん云いまくる総司と、それを偉そうにしつつも適当にあしらう土方のやり取りに、終始している。
当初、近藤を初め、他の隊士たちは目を丸くし、おろおろと二人の間を仲裁しようとした。だが、今や呆れているのか、諦めているのか、云いあいをつづける二人を、ごく当然のように眺めている。
慣れとは、恐ろしいものである。
「オレ、最近思うようになったよ」
しばらくたったある日、斉藤がしみじみとため息まじりに云った。
縁側に坐っていた総司は、焼餅を食べながら不思議そうに首をかしげた。
「何をですか?」
「だからさ、一番初めの日、おまえ、云っただろ? オレの知っている総司じゃないって」
「えぇ」
「あれ、本当かもって思ってしまった。まぁ、記憶がないのも違うって意味になるかもしれないけど……しかし、ここまで違うかなぁ」
「違うって、どこがです?」
「顔はまったく同じなんだけど、性格が違いすぎるんだよ。中身が違うっていうか」
「ふうん?」
総司は小首をかしげ、訊ねた。
「どんなふうに違うんですか? 言葉づかいとか?」
「それもだけど、何ていうか、前のおまえは、おとなしくて従順だった。あんなふうに土方さんに噛みつくなんて、天地がひっくり返ってもありえなかっただろうなぁ」
「えー?」
びっくりして目を見開いた。
「ここの世界の私、土方さんに従順だったんですか? 何でまた」
「ここの世界の私って……記憶を失う前の自分って事か。なるほど、記憶のないおまえにとっては、ここは別世界だものな」
斉藤は面白そうに笑ったが、すぐ言葉をつづけた。
「そりゃ、昔から育ててもらった兄代りという事もあるだろうし、もともとの性格もあるだろう。あまり喋らない方だったし、おとなしくて控えめで、今のおまえとは大違いだ」
「じゃあ、何ですか。私は、生意気で反抗的でお喋りだと」
「な、何もそこまで」
斉藤は慌てて手をふったが、実際、そう云われたも同然だ。だが、総司は、仕方ないじゃないと肩をすくめた。
事実、違う人間なのだ。顔が同じでも、全く違う人間。環境が違えば、性格も違ってくるのは当然の事だった。
だが、しかし。
(ふうん、あの人に育てられたんだ……)
あの俺様な男が子どもを育てるなんて、ちょっと想像もつかないが、実際その話は近藤からも聞かされていた。それはそれは大切に育てられたらしい。あまりの甘やかしぶりに、度々注意した程だったと。
だからこそ、土方は、今の総司に戸惑っているのだろう。記憶がないだけで、こんなに性格まで違ってしまうのかと、呆れているに違いない。
手塩にかけて育てた、従順でおとなしくて愛らしい若者。それが、いきなり、反抗的で生意気ざかりの若者になって戻ってきたのだから、面白くなくて当然だ。
「まぁ、けど」
不意に、斉藤はくすくす笑った。何?と見ると、答える。
「オレは今のおまえの方が、おもしろくて可愛くていいけどね」
「可愛いって、何ですか」
「だから、その言葉どおり。元気でくるくる駆け回って、やんちゃな仔猫みたいな感じかな」
「……斉藤さん、私に喧嘩うってます?」
「まさか」
そう云いつつ、斉藤が楽しそうに笑った時だった。
不意に、頭上から声が降ってきた。
「こんな処で怠っている暇があったら、稽古の一つでもしたらどうだ」
「……」
とたん、総司は大きな瞳で生意気そうに男を見上げた。
男、もちろん、相手は土方だ。
見上げれば、黒い着物を着流した土方が傲慢そうに腕を組み、切れの長い目でこちらを見下ろしていた。
「余計なお世話です」
いつものごとく、総司はつけつけと云った。
「稽古はちゃんとしてますから、ご心配なく。あなたに指図される理由もありませんし」
「相変わらずだな」
土方は喉奥で低く笑った。だが、怒った様子はない。
黒い瞳に、どこか面白がるような色を見つけ、総司は戸惑った。きゅっと唇を噛んでから立ち上がり、斉藤の手をひっぱる。
「行きましょう、斉藤さん」
「え、どこに?」
「どこにって、どこでもいいんです!」
総司は斉藤の手を掴んだまま、ずんずん歩き出していった。それを追う事もなく見送る土方が、僅かに目を細める。
「……長期戦だな」
そう呟いた男の声は、むろん、総司に届くはずもないのだった。
新連載です。ファンタジーっぽい感じ?
俺様土方さんと、勝ち気な総司の恋バナです。ラストまでおつきあい下さいませね。早くつづき読みたい〜と思って下さった方は、ぜひ、メッセージかぱちぱちを♪
