山南の事は、当然ながら総司の心に昏い影を落とした。
 追っ手となり、挙げ句、この手で介錯までしたのだ。平気でいられるはずがなかった。
 それに、あの朝、土方に突きつけられた言葉も、総司の心に澱みのように留まっている。


 地の果てまで追いかけて……殺してやる。


 望んでいるはずだった。彼の手によって与えられる死を、一度は望んだのだ。
 だが、土方に囁かれた瞬間、総司は深い深淵を見てしまった気がした。二人が行きつく先にある空虚な奈落に、気づいてしまったのだ。
 逃げた総司を殺すことで、土方はどんな満足が得られるのか。結局は、愛する男を再び追いつめ、苦しめるだけではないか。
 死んでしまう自分はいい。だが、残された彼の事を思うと、辛くて切なくて胸がつまった。
 愛されているとは思わない。土方の瞳にあるのは、憎しみと執着だと思う。
 だが、それでも。本当は誰よりも心優しい彼のことだ、自分を殺して傷つかぬはずがない。
 今回の事も、平然としながら、その実、彼は傷ついているのだ。何度か、山南の墓前で跪いている土方を見た事があった。
 総司は土方を傷つける事しか出来ない自分が、切なかった。こんな関係、一度だって望んだ事はないのに。あのまま、縁談を土方が受けても断っても、傍にいれば良かったのだ。心のまま素直に愛していれば……。
 そう思った総司は、だが、ゆるく首をふった。
 違う。どんな道筋を辿ったにしろ、行き着く先は同じだとわかっていた。土方に女の影が見え隠れするたびに、怯え、泣いて、別れの予感を覚えて。そんな日々に耐えられるはずがなかったのだ。
 土方のために、と思ったのは確かだった。だが、ただ夢のように幸せだったのは、初めの数ヶ月だけ。後はもう、いつか来る別れまでの日々を数えていた。どんなに愛していると云われても、永遠は信じられなかった。
 何一つ確かなもののない二人の関係に、総司は少しずつ疲れていったのだ。
 だからこそ、逃げた。土方のためと思いながら、別れを告げる事で、逃げようとしたのだ。


「全部、自分のせい……」
 総司は小さく呟いた。
 柱に凭れかかり、恋人を待つ少女のように俯く。さらりと柔らかな黒髪が肩に揺れた。
「誰のせいにも出来ない。自分のせい、だよね」
 そう云い聞かせるように呟き、総司はゆるく首をふった。気持ちをきりかえるように、ぎゅっと手を握りしめ、顔をあげる。
 だが、歩き出そうとした総司は、とたん、息を呑んでしまった。
 広い廊下の向こうから、土方が歩いてくるのに気づいたのだ。
 久しぶりに逢う彼だった。


 この西本願寺へ移転してから、土方が総司を束縛する事はなくなった。
 まるで飽きでもしたように、ぱったりとやめてしまったのだ。
 総司の部屋は離れた処に移され、外出も好きにするよう云われた。何一つ束縛される事はなくなったのだ。
 そうなれば、もう、総司が、土方と顔をあわす事は稀となった。副長として多忙な土方なのだ、当然のことだった。以前、どれだけ土方が総司のために時を割いていたか、わかるというものだ。


 総司は黙ったまま、丁寧に頭を下げた。
 通りすぎてゆくだろう土方を、そのままやり過そうとする。
 だが、土方は総司の前で足をとめた。そっと細い肩に手をかけられ、驚いた。
 顔をあげると、黒い瞳に見つめられ、どきりとする。
「……土方、さん」
「顔色がよくないな」
 土方は総司の愛らしい顔をじっと見つめながら、云った。
「青白い顔をしている。食も進まないと聞いたが」
「あ……はい。夏は苦手で……」
「なら、今から俺につきあえ」
「え?」
 総司は目を瞬いた。一瞬、何を云われたのかわからない。
 ぼんやり彼を見上げていると、短く舌打ちされた。
「つきあえと云っている。昼飯、まだだろう」
「はい……」
「来い」
 土方は手をのばすと、総司の細い手首をつかんだ。そのまま、総司を引きずるようにして歩き出す。
 彼にしては強引なやり方に、総司は驚いた。久しぶりに感じる彼の手の感触に、躯中がかぁっと熱くなってしまう。
 屯所を出ると、当然ながら手は離された。だが、二人連れだったまま歩いてゆく。土方は総司の体調を気づかっているようだった。夏の日射しを浴びぬよう日陰を選んで歩き、総司の歩調にあわせてくれる。
 その優しさに心がふわりと軽くなるのを覚えた。
 土方の気持ちが少しでも癒され、心開かれたらいいとつい思ってしまう。
 そうこうするうちに、一軒の料亭の前にさしかかった。とは云っても、堅苦しい感じではない。小綺麗で居心地よさそうな店だなと思っていると、土方は、ついと暖簾をかきわけ入っていってしまう。
「あ……」
 総司は思わず立ち止まり、躊躇ってしまった。
 本当に入っていいのだろうか。彼と食事を共にする。久しぶりの事だけに、どうしても躊躇いを覚えた。
 すると、中から声をかけられた。
「何をしている」
 叱責するような声音に、総司は慌てて「はい」と答えた。きゅっと唇を噛みしめると、暖簾をくぐっていったのだった。













 奥の離れに通された。
 美しく整えられてあるが、穏やかで優しい感じのする部屋だ。
 庭先で、そよと風にゆれる柳の涼やかさに、総司はほっとする想いだった。
 部屋の中を抜けてゆく風が心地よい。
「無理に歩かせて、すまなかったな」
 土方の言葉に、総司は驚いてふり返った。
 情事の翌朝以外でこんなふうに優しい言葉をかけられたのは、久しぶりだったのだ。
「い、いえ……」
 慌てて首をふった。
「大丈夫です。だいぶ楽になりました」
「そうか、なら良かった」
 やがて、料理がはこばれてくると、二人は食事をとり始めた。人見知りの激しい総司を気づかい、仲居の給仕を断ってくれる。
 料理の方も、最近、食の進まない総司のためか、口当たりの良いものばかりが並べられた。涼やかな器に盛られた料理は美しく、目も楽しませる。
「わぁ、きれい……!」
 昔のように思わず歓声をあげてから、はっと我に返った。おそるおそる土方の様子を伺ってみたが、微かに苦笑されただけだ。
「見惚れてないで、食べろよ」
「はい……」
 総司はこくりと頷き、素直に箸をとった。
 夏のためか食の進まない総司だったが、さっぱりした口あたりの料理はとてもおいしかった。京に来てから何度か外で食べた事はあるが、こんなにおいしいと思ったのは初めてだ。
 いつもより食べる総司を、土方は寛いだ様子で眺めていた。総司の前で料理をつつき、時折、冷酒を口にはこんでいる。
 その姿に、ぼんやりと見惚れた。


 なんて綺麗な人なのだろう。
 凜として、涼やかで、端正で。
 夏らしく麻の小袖を粋に着流している姿が、男の色香を漂わせる。引き締まった頬から顎にかけての線、形のよい唇、襟元からのぞく鎖骨まで、男っぽさが匂いたつようだ。
 女を惹きつけるのは当然だと思った。西本願寺へ移ってから、総司は土方と全く肌をあわせていない。土方もまるでその気が失せてしまったのか、祇園や島原へ通っているようだった。
 それは当然のことなのだが、やはり辛い。彼が女を抱く姿を思えば、息もできなくなるほど切なくなった。
 だが、その気持ちを素直にあらわす事は、どうしても出来なかった。あんなにも彼を傷つけた自分が今更、悋気など告げられるはずもない。これも罰なのかと、黙って見つめている他ないのだ。


 そんな事をつらつらと考えたせいか、箸の動きが遅くなった。
 土方はすぐさまそれに気づいたようだった。眉を顰め、問いかけてくる。
「どうした」
「……え」
「急に箸が進まなくなった。気にいらん料理でもあったか」
「いえ、そうではありません。ただ……」
「ただ?」
「色んな事を考えてしまって」
 そう口に出してすぐ、総司は後悔した。
 この人とは、昔のような恋人同士ではないのだ。恨み、憎まれ、挙げ句、顔をあわす事さえ稀になってしまった、かつての恋人。
 土方にとって、総司はもう過去の存在なのかもしれなかった。西本願寺へ移ることで気持ちを切り替え、それと同時に、総司への執着や蟠りを捨て去ったのか。だからこそ、束縛もやめたのだ。
 今の土方にとって、総司は、ただの一隊士に過ぎない。なのに、その相手に、自分の気持ちを明かしていったいどうなるのか。
「申し訳ありません」
 総司は固い声で、陳謝した。
「せっかく誘って頂いたのに、身勝手な事を……」
「身勝手ではないだろう」
 土方は食事をつづけながら、かるい調子で答えた。
「突然、誘った俺に対して戸惑うのは当然だ。そのことを考えているのなら、気にする事はない。ただの気まぐれだ」
「気まぐれ……」
「俺もたまには外で食事がしたいと思ったからな」
 淡々とした調子で云われた言葉に、総司は不意に泣き出しそうになった。心が深く傷ついたのだ。
 期待していた訳ではなかった。だが、今の話では、彼は連れ出すのは誰でもよかったのだ。たまたま目についたから、自分を誘っただけのこと。なのに、それを秘かに喜び、舞い上がっていた自分が切なく、情けなかった。
 涙があふれそうになる。
 だが、それをぐっと堪えた。矜持にかけても、ここで泣く訳にはいかなかった。
 重苦しい沈黙が落ちた。
 総司は俯いたまま、必死に涙を堪えつつ食事をつづけた。もう何の味も感じなくなってしまう。
 箸の動きが、尚更遅くなった。
「……」
 それに気づいたのだろう。
 土方が、ため息をついた。彼の機嫌が悪くなったのを感じ、総司はますます深く俯いた。
「……総司」
 突然、声をかけられ、はっと顔をあげた。
 気が付くと、土方が傍に膝をつく処だった。身近に感じる愛しい男の存在に、息がとまりそうになる。
 大きな瞳で見上げると、土方は手をのばし、その細い肩を抱きよせた。そっと胸もとに引きこまれる。
「……」
 息をつめている総司に、土方は静かな声で云った。
「すまない」
「土方さ……」
「気まぐれだと云ったのは……嘘だ」
「──」
 男の腕の中、総司の躯は小さく震えた。
「土方…さん」
 小さな声で彼の名を呼んだ総司を、土方は優しく抱きしめた。そっと髪を撫でられる。
「正直に云うことができなかった」
「……」
「俺も……西本願寺へ移り、束縛を解いてから、おまえにどう接していいのか迷っていたんだ。わからなかった」
「え……」
 男の言葉に驚き、総司は顔をあげた。思わず、じっと見つめてしまう。
 土方が迷うなど、思いもしなかった。いつも毅然とし、判断力も行動力もある彼なのだ。総司に対しても、大人の男の余裕たっぷりに見えていただけに、驚いてしまう。
 そんな総司に、土方は微かに苦笑してみせた。
「仕事とは違うさ」
「じゃあ」
 総司は躊躇いがちにだったが、訊ねた。無意識のうちに、彼の着物をそっと縋るように掴んでしまう。
「私を……誘ったのは、何故ですか」
「総司……」
「教えて下さい。どうして、私を誘ったの……?」
「逢いたかったからだ」
 低い声で返された答えに、総司は息を呑んだ。呆然と、彼を見上げている。
 その細い躯にゆるく腕をまわしながら、土方は言葉をつづけた。
「おまえと二人きりで逢いたかった……それではいけないか」
「だって……」
「何だ」
「信じられない」
 桜色の唇が震えた。
「逢いたいと、思ってくれるなんて……」
「総司」
 土方は柔らかく微笑んだ。その頬を掌で包み込み、そっと仰向かせる。
 額に、頬に、口づけを落としてから、静かに唇を重ねた。久しぶりの口づけ。甘いとろけるようなそれに、総司はうっとりと目を閉じた。
 男の腕に抱かれたまま、素直に口づけを受ける。
 やがて、奥の部屋に運ばれたが、それでも総司は抗わなかった。ただ、こういう場所で抱かれるのは初めてで、土方の腕に抱かれたまま、不安げに見回してしまった。
 土方が微かに眉を顰めた。
「どうした、怖いのか」
「そうじゃなくて……こういう処、初めてだから」
「初めてでいい。来慣れていたら、俺が怒るさ」
「土方さんが怒るのですか?」
「あたり前だろう」
 呆れたように答え、土方は総司の細い躯をそっと褥の上に降ろした。
 何度も何度も、口づけられる。その間にも着物を肌けられ、するりと男の大きな掌がすべりこんできた。
 久しぶりにあわせる肌に、躯中が熱くなってゆく。
 互いのすべてを確かめるように、口づけあい、見つめ、深く深く愛しあった。
 夏の風がわたってゆく離れの一室で、彼に抱かれた。優しく愛撫され、幾度か頂きまで駈けのぼらされる。
 だが、そのたびに堰き止められ、総司は啜り泣きながら男の腕にしがみついた。
「や……っ」
「後が辛いからな、少しだけ我慢しろ」
 土方も余裕がないのか、優しいが、貪るような愛し方だった。濡れた指で後ろをまさぐられ、蕾をほぐされる。
 くちゅくちゅと鳴る音に、かぁっと耳朶まで染めた。恥ずかしさと、甘い快感に、目を閉じてしまう。
「ん、んぅ…っ、ふ……っ」
「力を抜けよ」
 土方が耳もとで低く囁いた。それに、こくりと頷いたとたん、太腿に男の猛りが押しつけられる。
 その熱さにびくりと目を見開いたが、土方は構わず両膝を抱え込んだ。蕾にあてがい、一気に突き入れてくる。 
「ッ…んぅ──ッ……!」
 唇を重ねられたため、くぐもった悲鳴しかあげられなかった。
 あまりの苦痛に、泣きながらしがみついた。男の肌に爪をたてたらしく、土方が微かに眉を顰めた。
 だが、それでも深く唇を重ねたまま、もっと奥深くを抉るように穿ってくる。
「は…ぅ、ッ、く…っ」
 口づけの合間に啜り泣く声がもれると、土方は辛そうな表情になった。頬や首筋に口づけながら、訊ねてくる。
「痛いのか……?」
「……っ、土方…さ…ッ」
 ふるりと首をふった。
 本当は痛かったが、それでも、離されるのはいやだった。久しぶりに抱いて貰えたのだから、ちゃんと最後まで抱かれたい。
 泣きながら男の首に手をまわし、抱きついてくる総司に、土方は目を細めた。可愛くて、愛しくてたまらない。
 白い肌に口づけながら、ゆっくりと腰を動かし始めた。できるだけ、総司のいい処だけを丁寧に擦りあげてくる。
 それは功を奏したようで、ゆっくりとだが、なめらかな頬に赤みがさし始めた。
 桜色の唇から、甘い吐息がもれる。
「……ぁ、ん…っ」
 総司は男の肩にしがみつき、声をあげた。
 土方は細い躯をかき抱くようにし、優しく揺さぶりをかけてくる。
 男の猛りも浅い処で抜き挿しされ、痛みがとけ消えてしまえば、それが焦らされているようで、だんだん堪らなくなる。
「ぃ、や……っ」
 首をふり、総司は大きな瞳に涙をうかべた。きゅっと唇を噛みしめる。
 それに、土方がくすくす笑いながら、顔を覗き込んだ。
「どうした? 何がいやなんだ?」
「やっ……土方、さんの、意地悪っ……」
 拗ねたように云い、総司は潤んだ瞳で男を睨めつけてみせた。だが、その表情がたまらなく可愛らしい。
 土方は可愛くて可愛くてたまらぬと云いたげに、薔薇色に火照った頬や、濡れた唇に、口づけをおとした。深く繋がったまま、ほっそりした躯の線を大きな掌で撫でおろす。
 細い腰を両手でつかみ、かるく揺さぶってやると、総司が甘い声をあげて仰け反った。
「ひぃ、ぁ…っ」
「すげぇ……可愛い」
「やっ、やぁ…も、意地悪しない…で…っ」
 いやいやと首をふりながら、土方の首に両手をまわしてしがみついた。それに、思わず苦笑する。
「おい、これじゃ動けねぇだろうが」
「だって……」
「わかった、悪かった。意地悪したな」
「うん……」
 まだ拗ねたように頷く総司に、くすっと笑い、その尖らされた可愛い唇にちゅっと音をたてて口づけた。しがみついているのをかえって良しをとし、身を起すと、そのまま膝上に抱きあげる
「あ、いや……っ! 怖いっ」
 何をされるか察した総司は、慌てて抗った。両手を男の膝について、必死に腰をあげようとする。だが、そんな事、土方が許すはずもなかった。
 胸の乳首を舌で舐め上げられ、そのまま腋下まで唇をすべらされれば、たちまち腕から力が抜けてしまう。
「ぃ…ああぁッ!」
 甲高い悲鳴を響いた瞬間、総司は男の剛直の上に腰を落としてしまっていた。ずぶずぶと奥まで貫かれてゆく。
「ぃ、ひぃ、ぁあっ、いやあッ」
 泣きじゃくる総司に構わず、土方はその細い腰を鷲掴みにし、ぐっぐっと下ろさせた。
 だが、少年めいた華奢な躯に、男の太い猛りを全部受け入れさせるのは、酷な事なのだ。
「……ぅッ、は、ぁ…っ、ッ」
 総司は泣きながら男の肩にしがみつき、喘いだ。苦痛をやり過そうとしている。だが、一度奥まで受け入れている以上、もう大丈夫なはずだった。
 土方は総司の細い腰を掴み、柔らかく揺さぶった。大きく腰をまわし、抉るように責め立ててやる。
「ぃッ、ぁっ…あッ、あッ」
 総司の唇から、小さな悲鳴がもれた。どこか甘く切ない。
 それを心地よく聞きながら、土方は総司の躯を何度も下から突き上げた。視線があうと、潤んだ瞳で縋るように見つめかえす総司の色香に、息を呑む。
 ずくんっと腹の底から熱い欲望が突き上げた。もう我慢できない。
 土方は総司の躯を褥に押し倒すと、すらりとした白い両足を荒々しく押し広げた。躯を二つ折りにし、深々と男を受け入れさせる。
 甲高い悲鳴があがるのにも構わず、そのまま激しく腰を打ちつけた。
「ひぃっ、ぁあっ、ぃああッ…!」
「……は…ぁ、総司……っ」
「ぃ、やあッ…ぁっ、ぁああっ、は…ぁああっ」
 汗に濡れた躯を交わらせ、獣のように互いだけを求めあった。総司は泣きじゃくりながら土方にしがみつき、深く受け入れている。
 やがて、総司のものが弾けるのと同時に、男の熱が腰奥に叩きつけられた。
「ああッ!」
 鋭い悲鳴をあげ、総司ががくりと仰け反った。あまりの快感にか失神してしまったのだ。そのくせ、総司のものはとろとろと蜜を吐き出している様が、たまらなく淫らだった。
 土方はぐっぐっと腰を入れて、すべてを注ぎこみながら、総司のものも掌にぎゅうっと握りしめてやった。びくびくっと震えるのが愛らしい。
「……総司」
 耳もとでその名を囁き、土方は細い躯を抱きしめた。深く繋がったまま、桜色の上気した肌のあちこちに口づける。
 やがて、花びらのように散った痕に、土方は苦笑した。
 束縛を諦めたからといって、総司への執着や独占欲が消えた訳ではないのだ。その証がここにあると思った。


(……俺のものだ)


 総司を抱きしめ目を閉じた土方の黒髪を、夏の風がやわらかく撫でていった。



















次で、二人の関係を見かねた斉藤さんが行動を起こします。