「……土方、さん……」
 思わず小さな声で呼んでいた。
 それに、びくりと土方の手が震える。はっと我に返ったようで、総司を覗き込んでくる彼の表情には、焦燥感があった。
 すべて聞かれたと、思ったのだろう。
 記憶を奪ったことも何もかも、総司に知られてしまったのかと。
 見上げれば、彼の黒い瞳は不安に揺れていた。唇もきつく噛みしめられ、衝撃に身構えるような表情になっている。
 衝撃。それは、総司からの拒絶に違いなかった。
 土方は恐ろしいのだ。
 真実を知った総司に拒絶されるのが、怖くてたまらない。辛くてたまらない。
 すべてを知ってしまったが最後、総司が離れてゆくのではないかと、もう愛してないと云われるのではないかと、案じているのだ。


(私たちは、同じだった……)


 ふたりとも互いを闇の中で見失い、背中あわせに佇んでいる事にも気づかず、ただ夢中で互いを愛しもとめつづけてきたのだ。
 いつか、この手が離れていってしまう。
 愛しい存在を失ってしまう。
 その不安に震え、揺れ、必死になって今の幸せを、愛を、守ろうとしていた。
 この世の中で誰よりも。
 一番近くに、すぐそこに、最愛の人がいることにも気づかぬまま。


 仄かな明かりの中で、総司はゆっくりと瞬いた。
 そうして、小さな声で囁いた。
「私も……愛しています」
「……総司」
 土方の黒い瞳が不安に揺れたまま、どこか探るように総司を見つめてくる。
 それに、微かに笑ってみせた。
「そんな昔から愛されていた……なんて、知らなかったけれど」
「……」
「でも、覚えてなくてごめんなさい。ずっと見守ってくれていたのに、何も記憶がなくて……すみません」
 総司の言葉に、土方の目が見開かれた。
 一瞬、意味を探るような視線がむけられるが、すぐさま、思いきったように訊ねられた。
「おまえ……その、いつから目が覚めていたんだ」
「え……?」
 総司はあどけなく小首をかしげてみせた。
「えっと、抱きしめられた時……かな。気がついたら、土方さんが私を愛しているって、云ってくれていて……」


 真実を告げるつもりはなかった。
 すべてを聞いていたなど、こんなにも不安がっている彼に告げられるはずもない。


 総司は手をのばし、彼の頬にふれた。
「ごめんなさい。熱を出して……随分、心配かけました。ずっとついていてくれたのでしょう?」
「大切なおまえのことだ。当然だろう」
 そう云った土方は、そっと額に手をあてた。ほっと安堵した表情になる。
「よかった。熱もだいぶ下がったな」
「えぇ」
 こくりと頷いた。
 土方の言葉を聞いているうちに、薬が効いて熱が下がったのだろう。躯の方も随分と楽になっていた。
 まだ声は掠れていて酷い状態だが、それでも、話すことは出来る。
「水、飲むか」
 土方が優しく問いかけ、総司の唇に湯飲みをあててくれた。冷たい水がとても心地よい。
 ほっと吐息をもらした総司の髪を撫で、ゆっくりと褥に横たえた。汗を手拭いで丁寧にぬぐってやると、総司が小さく笑う。
「土方さんって、実は世話好きですよね」
「そうか?」
「えぇ。だって、あまりそうは見えないのに、食事の時も今も、色々世話してくれるし」
「それは、おまえだけだよ」
 くすっと笑った。
「可愛いおまえ相手だからこそ、世話好きになるのさ」
 耳もとで囁きかけられる甘い声音に、総司は熱のせいでなく頬を染めた。仔猫が甘えるように、男の手のひらに頬を擦りよせ、目を閉じる。
 そんな総司を、土方は優しく抱きしめてくれた。













「好いてくれていたんだ……」
 翌日、柱に凭れかかった総司は、ぽつりと呟いた。
 まだ床上げしたばかりなので、躯が気怠い。そのため、土方もあと二、三日療養してから大坂へ向おうと、予定を繰り延べしてくれていた。それが申し訳なくもあり、だが、仕事を後回しにするほど愛されているのかと思えば、くすぐったくなる。
 そうなのだ。
 昨日知ったばかりだが、土方と総司は、身も心も結ばれた、本当の恋人同士なのだ。
「……うっわー、なんか信じられない」
 総司はころんと畳の上に転がった。とたん、いててと顔をしかめた。
 昨日の土方の告白があまりにも衝撃で、すっかり忘れていたが、肩に傷を負っている身なのだ。あまり無理はしてはいけない。
 そろそろと躯を起した総司は、ふと目に入った鏡を見つめた。
 華奢だし小柄だし、確かに、まぁ、ふつうよりは可愛い顔をしているかもしれない。だが、やっぱり自分は男なのだ。それも、以前は、あそこまで生意気で反抗的な態度をとっていた存在。
 なのに、その総司を、土方はずっと愛してきてくれたと云うのだから、その根気強さは頭が下がってしまう。
「意外だよね。でも、嬉しい」
 総司は小さく笑い、頬に手をあてた。


 ずっと憧れてきた男なのだ。
 好きで好きでたまらなかった、大好きな人。
 その彼が自分をずっと好いてくれていたと云うのだから、嬉しくないはずがないだろう。
 それに、もともと諦めていた恋だった。一縷の望みもないと思っていたし、記憶を奪われた事を知ってからは、恋人のふりをしてくれるだけでいいと、思っていたのだ。
 だが、違った。土方は総司を愛してくれていたのだ。
 恋人のふりなどではない。
 あの彼が、自分の本当の恋人なのだ。


「あ、でも」
 ふと我に返った。
 土方は、総司の本当を何も知らないのだ。
 自分が記憶を取り戻していることも、全部知っていることも、何ひとつ告白していない。
「なんか……まずいかも」
 切っ掛けが難しいし、それよりも何よりも、矜持の高い彼のことだ。黙っていたことに腹をたて、莫迦にされたと思うかもしれなかった。そうなれば、一気に彼の愛を失ってしまう可能性もある。
 まさか、そんな事ぐらいでと思いはするが、たぶん、土方にとっては「そんな事ぐらいで」の話ではないだろう。
「どうしようかなぁ」
 総司は畳の上に坐り込んだまま、考え込んだ。
 云うべきなのは、わかっている。洗いざらい話して、ちゃんとわかりあうべきなのだと。
 だが、ちょっと怖い。勇気がでない。
 切っ掛けも掴めない。
「うーん」
 考えこんでいると、不意に、頭の上から声をかけられた。
「……何を唸っているんだ」
 見上げると、土方が立っていた。
 あ、と声をあげた総司に、形のよい眉を顰める。傍らに跪き、手をのばしてきた。
「もしかして、傷が痛むのか。また熱が出たのか」
 心配そうに問いかける土方に、総司は慌てて首をふった。
「違います、大丈夫です」
「なら、何かあったのか」
「えーと、あの、大坂へ早く行かなきゃまずいなぁと思って」
「おまえが気にする事じゃねぇよ」
 あっさり云いきった土方は、総司の傍らに腰を下ろした。煩わしげに片手で前髪をかきあげる仕草が、見惚れるぐらい恰好いい。
「淀も大坂だしな、まぁ、連絡はしてある。もし駄目なら、俺だけ行ってくるさ。おまえはここで療養していればいい」
「その方がいいかもしれませんね。こんな私では、足手まといになるだけだし」
 俯いてしまった総司に、土方は眉を顰めた。怒ったような口調で答える。
「その傷は、俺を庇ってのものだ。足手まといだなどと、云うな」
「でも」
「総司……」
 そっと頬を撫でられた。見上げると、濡れたような黒い瞳が見つめている。
「愛しているよ」
 突然の告白に、総司は目を見開いた。
「おまえを誰よりも愛している。だから、おまえが俺のせいで傷つくのは……もう見たくないんだ」
「土方…さん」
「心も、躯も、俺のせいで傷つくおまえは、二度と見たくない。だから、頼む。俺を庇うなど、もうしないでくれないか」
「それは駄目」
 即座に、総司は云っていた。ぎゅっと土方の腕を掴む。
「私はあなたを守りたいのです」
「総司……」
 土方の目が見開かれた。驚いた表情の男をまっすぐ見つめ、総司は言葉をつづけた。
「あなたがいなければ、生きてゆけない。土方さん……あなたは私の命そのものなの。あなたが死ぬぐらいなら、私が死んだ方がいい」
「……おまえ……」
「愛しています。あなただけを誰よりも愛している。だから、お願い。私からあなたを奪わないで。あなたの傍に、ずっといさせて……」
 そう訴えた総司は、息を呑むほど愛らしかった。
 土方の胸に、熱いぐらいの愛しさがこみあげる。思わずその小柄な躯に両腕をまわし、ぎゅっと抱きしめた。だが、とたん、総司が小さく声をあげたため、はっと我に返った。
「す、すまん。怪我にさわったか」
「大丈夫です。ちょっと痛いかも、と思っただけ」
 痛みがあるだろうに、土方を気遣って笑ってみせる総司が、たまらなく可愛かった。可憐でいたいけで、本当に、総司が己の恋人なのだと思うと、喜びが胸を突き上げる。
 むろん、その喜びは、暗い色合いを片隅に滲ませていたが。


(それでも、俺はおまえを手放せないんだ)


 土方は目を伏せると、そっとこちらを伺っている総司に気づくこともないまま、己の身勝手さに唇を噛んだのだった。












 京へ戻ってからは、また忙しい日々の連続だった。
 傷も癒えた総司は巡察に稽古にと、忙しく立ち働いている。土方も忙しいようで、あまり二人は言葉をかわす機会もなかった。
 せっかく本当の恋人同士になれたのにと、総司などは不満に思っているが、土方はそうでもないようだ。
 それどころか、土方に避けられている気さえした。二人きりになるのを避けている。そんな感じが、ひしひしと伝わってくるのだ。
 だが、土方にすれば当然だった。
「……最低だ、俺は」
 副長室で、ため息まじりに呟いた。


 総司を恋人として愛しているし、手放したくないと思っている。
 だが、一方で、記憶を奪った挙げ句、騙すように抱いて己のものにしてしまったという罪悪感があるのだ。
 そこへ、先日の傷だった。
 ……正直、いたたまれなかった。
 総司はこんな自分を愛してくれた挙げ句、あぁして命を投げ出し庇ってくれたのだ。
 そうして、「誰よりも愛しています」とまで云ってくれるのだ。
 自分はなんて酷い男なのか。あんなにも可愛くきれいで優しい総司の恋人になる資格など、自分にはどこにもないのだ。
 なのに、総司に逢えば、抱きしめたくなる。口づけたくなる。
 躯を重ね、その甘い声を聞きたくなってしまう。


 土方は己の情欲の深さに煩悶した挙句、結局、もっとも手近な方法に逃げたのだ。
 つまり、総司を避けた。
 顔をあわさぬよう、逢っても公の場に限るよう、できるだけ気をつけた。幸い、忙しい事もあり、二人は今のところ自然と逢わないような状況になっている。
 だが、それがいつまでもつかというのは、大いなる疑問だった。
 総司が気づいて悲しい顔をするのもいやだが、それ以前の問題で、土方の忍耐がいつまでもつかわかったものではなかった。
 どれだけ長い間、総司にふれていないのか。あのしっとりと濡れたような髪を撫でていないのか、なめらかな頬にふれていないのか、細い躯を両腕にぎゅっと抱きしめていないのか。
 そんなこもごもの事を考えると、土方は気が狂いそうな思いがした。
 今すぐでも総司のもとへ走り、その小柄な躯を抱きあげて、さらってしまいたくなる。清らかで愛らしい総司の中に秘められた蜜を、思うさま味わい貪りつくしたくなるのだ。
 だが、そんな土方の煩悶を、総司が知るはずもなかった。
 避けられている事にはむろん気づいているが、その理由はさっぱりわからなかったのだ。


(何で? どうして、いきなり私を避けちゃうの?)


 総司は唇を噛みしめ、柱の影からこっそり覗いた。
 視線の先にいるのは、当然の事ながら、愛しい男だ。近藤と帰ってきた処なのか、二人して玄関口で談笑している。仲良さげな様子に、近藤にまで嫉妬しそうになった。
 というか、正直な話、土方が笑顔をみせたり、親しげに話したりするのは、誰であっても嫌なのだ。
「我儘じゃないもの。ずっと昔から、やだったんだから」
 理由にもならない言葉を呟き、総司は、はぁっとため息をついた。


 ここ数日、全くと云っていいほど話していない。
 彼のきれいな顔を見てもいない。
 その逞しい腕に抱きしめられてもいない。


 自分にとって、つくづく彼はすべてなのだなぁと実感する数日だった。
 愛する彼から愛をあたえられないと、たちまち、何をするのも億劫になってしまうのだ。
 副長としての土方を支えるという手前、仕方なく巡察や稽古に励んではいるが、そろそろ限界に来ている。
 心から愛されていたと知らされたとたん、この仕打ちとは、いったい何なのか。あの告白も本当だったの? と、思わず疑ってしまいたくなる。
「……何をしているんだ」
 いきなり後ろから声をかけられ、総司は飛び上がった。
 びっくりしてふり向くと、訝しげな表情をうかべた斉藤が立っている。その袖を慌てて引いた。
「しーっ。静かにして下さい」
「? 何で」
「いいから、早く」
 総司は斉藤を引っ張って、その場を離れると、はぁっとため息をついた。
 それを、斉藤は不思議そうに眺める。
「何かあったのか」
「違いますけど、でも、土方さんに気づかれたくなかったから」
「土方さんに? いたのなら、声をかければいいじゃないか」
「それはそうなんですけど……」
 口ごもってしまった総司に、斉藤はくすっと笑った。
「そう云えば、最近、二人一緒にいる処を見てないものな。仲違いでもした?」
「違いますよ! ……でも」
 総司は俯いてしまった。
 仲違いをした訳では、決してない。だが、避けられている事は確かなのだ。
「土方さん、私を避けるんです」
「おまえを?」
「どうしてだと思います?」
 いきなり訊ねた総司に、斉藤は目を丸くした。
「どうしてって……」
「私のこと好きだと云ってくれたし、ちゃんと念兄弟にもなっているし、それに、可愛い可愛いって、毎日云ってくれていたのに、大坂から帰ったとたん、この有様なのです。避けるなんて。もう全然わからない」
「……全然わからないのは、こっちの方だよ。何が何だか」
「えっ、今の説明で、わかりません?」
「わからない。っていうか、聞きたくない台詞が山ほど入っていたし」
「斉藤さんの言葉の方が、よくわかりませんけど」
 あっさりそう云った総司に、斉藤はやれやれと肩をすくめた。報われないとはわかっているが、片思いはやはり辛いものなのだ。
「とにかく、土方さんは総司を避けているんだろ。何でか、わからないけれど」
「そういう事です」
「で、その理由をオレに推測してくれと」
「はい」
「正直さ、わかる訳ないだろってのが、本音だ」
「全然、答えになってないでしょ」
 ぷうっと頬をふくらませた総司を、斉藤はしみじみと眺めやった。それから、不意に手をのばすと、総司のなめらかな頬を手のひらで包み込んでやる。
「何かなぁ……」
「? 斉藤さん?」
「これだけ可愛くなるんだから、記憶なくなった総司にべた惚れした土方さんの気持ち、よくわかるよ。もっとも、あの人は、前のおまえも全部ひっくるめた上で、惚れているんだろうけどね」
「前の私も、今の私も、同じですよ」
 そう笑いながら、総司は斉藤の手を外させた。


 実際、記憶が戻ったからといって、総司は前の自分に戻ろうとは思っていなかった。
 あれはかなり無理をしていたのだ。
 だが、あの前の自分も、己自身であることは確かだった。
 不器用で生意気で、怖がりで淋しがり屋だった、もう一人の愛しい自分なのだ。


「それはわかっているよ。けど、仕草とか笑顔が可愛いから、保護欲というかそういうの、やたらかきたてるんだよ。土方さんも同じだと思うな。余計に可愛くてたまらなくて、だから、避けているのはおまえが嫌いになったとか、そういう事じゃないと思うから」
 何だかんだ云っても、総司の気持ちを引き立ててくれる斉藤に、小さく微笑んだ。
 昔から、そうなのだ。
 斉藤はいつも、総司の心に寄りそってくれた、大切な友人だった。
「ありがとう、斉藤さん」
 心をこめてお礼を云った総司に、斉藤はちょっと照れたように笑った。だが、不意に視線をあげると、あ、やばいという表情になった。
 それに小首をかしげながらふり返った総司は、目を見開いた。
「土方、さん」
 縁側に、彼が立っていたのだ。
 懐手をし、不機嫌そうな表情で眉を顰めている。どう見ても、先程からの一部始終を見られていたことは、確かだった。
「あの……何か用ですか」
 思わず訊ねてしまった総司に、土方はすうっと目を細めた。剣呑なまなざしが、二人にむけられる。
「……用がなけりゃ、逢いに来るなって事か」
「そ、そういう訳じゃありませんけど」
「話がある」
「あ、はい」
 慌ててこくりと頷いた総司から、斉藤はすっと離れた。かるく土方に目礼してから、すれ違ってゆく。
 それを見送る事もなく、土方は総司の腕をぐっと掴んだ。
「来い」
 そのまま引きずるように連れていかれた。どこへ連れていかれるのかと思ったが、意外なことに、辿り着いた先は総司の部屋だった。
 障子を閉めると、土方は部屋の真ん中に腰をおろした。胡座をかき、総司を見上げる。
「坐れよ」
「……はい」
 私の部屋なんですけど、という言葉は呑み込んだ。
 土方が不機嫌だった事もあるし、逢うのも声をかけられるのも久しぶりだったので、口喧嘩はしたくなかったのだ。
「話があるって……何ですか?」
 坐ったきり黙り込んでいる土方に、総司は訊ねた。いい事だったらいいなぁと思うが、どうもこの様子では期待できない。
 案の定、顔をあげた土方の表情は冴えなかった。その黒い瞳に、困惑と苛立ちの色を見つけ、不安になる。


(何だろう、いったい……)


 まさか、記憶のことがばれたのかと思った。
 おそるおそる様子を伺ってみても、よくわからない。
 総司は、とりあえず土方の話を聞いてみる事にした。
「あの……土方さん?」
 呼びかけた総司に、土方はまだ躊躇っているようだった。彼にしては珍しい事だ。余程、話しづらいことなのか。
 だが、ようやく意を決したようで、口を開いた。
「総司」
「はい」
「こういう事を人から聞くのは嫌だろう。何よりも不実だ。俺自身の矜持が許さない」
「はぁ……」
 何を云われているのか、さっぱりわからなかった。
 微かに小首をかしげ、土方の話を聞く。
「それ故、俺は自分で云うことにした。どのみち、おまえを傷つける事になるが、人を介して聞かされるよりはいいだろう」
 土方は切れの長い目で、まっすぐ総司を見つめた。
 そして。
 聞き間違いがないよう、はっきりと云った。


「俺は……所帯をもつ事にした」


 一瞬にして、部屋の空気が凍りついた。




















もちろん、相手は総司じゃありません。次、お褥シーンがありますので苦手な方は避けてやって下さいね。