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秀雄作歌集2
短冊17、「うちはへてわつらへるころに」。なにこともなしえぬ身なりしかりとて こころにひまは
なきよなりけり
解。表題の「うちはへて」は意味不明。強調の「うち」に「侍る」か?病気のときの歌とは分か
る。病を得て、何事も出来ないのだとは分かっていても心はまだそれを受け入れられない。短
冊16、と同じ趣意である。

短冊18、「うちはへてわつらひけるころに」。(表題は微妙に違うが短冊17、と同じ歌)。

短冊19、(無題)あつさゆみ八十を経しハいにしへハ いまもまれなるよはひなりけり
解。梓で作った丸木の弓。八十歳という年齢は昔も今もまれなことだ。「八十」は「やそ」と読
む。長寿の祝いの歌だろうが、梓弓は枕詞のようだ。

短冊20、(無題)。(短冊19、と同じ歌)

短冊21、「菊露」。くれたけと松とにのみとおもひしを きくハ露にも千世をこめけり
解。長命でめでたいものは竹や松だと思っていたが、菊の花ははかない露にも千年の後も栄
える趣をもっているのだ。「千世をこめけり」は拾遺和歌集「千代を籠めたる杖ならばつくともつ
きじ君がよはひは」からのもの。

短冊22、「ゆうさりつかたはしいにて」。ゆうかほの露てふ露に涼しさの □□□□みれは月は
出にけり
解。「夕さりつ方」は夕方ごろ。「はしい」は端居、夏の夕方、涼を求めて縁側にいること、今は
この習慣も無くなってしまった。夕顔の露という露に涼しさを求めていて気がつくと月が出てい
た。不明個所思案中。

短冊23、「□□月といふことを」。なみたてる茅のはやしの陸もりて すすりの海にしつむ月影
解。表題二文字不明。硯の海とは硯の水をたくわえるために凹んでいる所。陸(おか)は硯の
墨をする所。これが茅(かや)の草原と沈む月との対比を引き立てている。「もりて」を「盛りて」
と解釈。

短冊24、「水雲梅」。筏士のそてもやにほふ梅つかは きしもせにさく花のおひ風
解。「水雲梅」という銘木か?「梅つかは」は梅津川か?「筏士のそてもやにほふ」は筏師の袖
も匂う。「きしもせにさく」は岸を背に咲く。「おひ風」は香の匂いを伝えてくる風。

短冊25、「月照草露」。さきたわむ萩の露にやとりては 月のかけるにおもけなるかな
解。「草露」はかないものの例え。「おもけ」は重気と解釈。咲き誇っている萩の花に露がつい
ている。月が陰ることですら重そうだ。幕末の志士・歌僧「月照」(1813−1858)と時代は重
なっているがそのことを歌っているのかは不明。

短冊26、「月照草露」。(短冊25、と同じ歌)。

短冊27、「釜」。おのつから世のへり払うまつ風や とまえのあらぬははきなるらむ
解。「釜」は竈(かまど)で転じて身代・所帯。自然と世の中の端を掃くような、松に吹く風は、土
蔵のないような所で使う箒のようだ。「とまえ」は蔵の前。「ははき」は箒(ほうき)。この歌の解
釈は再考中。

短冊28、「狩場雪」。ゆくとりのかけかきくらしふる雪に すえたまたかの月にほふらむ
解。行く鳥の影を掻き暗くするように降る雪に、□□□□月が出ると鳥をほふろう。「ほふる」は
屠る・(鳥獣の)体を切りさく。「すえたまたかの」は意味不明。

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