I S I Z E  への 43

奇巌城
モーリス・ルブラン

訳者:江口清  発行:集英社文庫


 そうアルセーヌ・ルパンである。ボクシング、レスリング、蹴合術、柔術、空手の達人?であり、射撃の腕前も凄く、変装の名人である。そしてなによりも、女好き、いや、恋の為なら命をおしまないって感じである。

 この『奇巌城』でも、ルパンはレイモンド・ド・サン=ヴェラン嬢に恋をする。しかもサン=ヴェラン嬢というのは、ルパンが強盗に入った屋敷に住む娘で、その娘は、強盗ルパンを銃で撃ち、怪我をさせているのである。どうもこの娘は、強盗を撃った後、追いかけてルパンを発見し、看病をすることになったらしい。その時、何があったのかは定かでない。ルパンはこの絶世の美女に看病されて、恋してしまったらしい。

 そして、物語の途中で登場するヴァルメラという人物になって結婚する。このやり方も少々汚い。ルパンは娘を誘拐して閉じ込め、そして別の人物、正義の味方ヴァルメラとなって、救出するのである。そこまで、するか?って感じであるが、そこまでするのがルパンなのである。悪名高きルパンの名で結婚することができないので、ヴァルメラという名で結婚したんだそうだ。そういうルパンが私は好きだ。

 しかし、このサン=ヴェラン嬢と静かな生活を望んでいたルパンなんであるが、最後は悲劇で終わる。あのシャーロック・ホームズに撃ち殺されてしまうのである。まあホームズも娘を狙った訳でなく、ルパンを狙ったのであるが、娘がその間に飛び込んでいったのだ。もちろんルパンの命を救う為に。

 シャーロック・ホームズもルパンの物語の中では、ズタズタにされている。最初の強盗事件の解決のホームズものりだすのであるが、ルパン一味に誘拐されてしまう。そしてある日、一緒に誘拐されたガニマール警部とともに警察署の前で、縛られてまま眠っているのを、屑拾いに発見されるのである。ヒャー、カッコワルイ。しかも誘拐されている間、ルパンは2人をアフリカ1周の楽しい航海をさせていたのである。この事実に関しては、ホームズは、頑として沈黙を守っていたそうである。そして最後にはルパンの嫁を撃ち殺すというオマケ付き。原作ではハーロック・ショーメスになっているらしいが、この訳でははっきりとシャーロック・ホームズとなっている。

 ずいぶんと横道にそれてしまったが、この『奇巌城』の本当の面白さ?は、ルパンに張り合う、現役高校生イジドール・ボートルレの活躍であろう。フランス歴代の王家の財宝をめぐり、暗号を解読していく。そして出てくるのが、「エギュイク・クールズ」(穴のあいた針)の秘密である。古くはジュリアス・シーザー、マリー・アントワネット、ルイ14世などを巻き込んだ秘密。ルパンは全てを手にいれるが、それを手放し、恋する人との生活を望んだ。しかし。。

おすすめ度:★★★★

(1999.12.24)



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