秋色濃厚(御嶽山) 

2012年10月25日 記

 
  金木犀の薫りがプーンと漂ってきました。
一日一日、深まり行く秋色を、いとおしみながらこの季節を堪能しています。
 
 先日、御嶽山に行ってきました。紅葉の季節としてはもう少し後の方がいいのはわかっていたのですが、思い立ったら吉日と飛び出しました。娘がいろいろと考えてくれて、大阪から「ワイドビューしなの」に乗り、木曽福島まで一本で行くことにしました。そこから開田高原まで山道をバスで一時間揺られて、その日の宿に到着するのです。片道5時間の旅になります。ずっと前から開田高原に行きたいと思っていました。

 私は、山が好きと言っても歩けるわけでもなく、離れたところからその山容を見るだけで、満足して大喜びをするのです。御嶽山を見ようと思えば、麓にある温泉でゆっくりして、山をスケッチできればと計画を立てました。
一日目は、バスの途中で木曽馬の里という所で降りました。ちょうど昼時でしたから、ソバ打ち道場で手打ちソバを食べました。その店の前には広大なブルーベリ畑が続いていて、その向こうに御嶽山が真正面に見えました。ぶるっ!


 
ペイント  モミジの一枝 toshi 2012.10.8

 
 御嶽山は独立峰として富士山についで2番目の高さで3,067mあります。
この独立峰というのが私のお気に入りで、希少価値のものだと思います。又3,000m級の山としては日本の一番西に位置しているらしいです。形はキリマンジャロに似ていて台形です。
山岳信仰の色の濃いところですから、あまり縁がないかと思っていたのですが、見事な裾野を広げて君臨するこの山の大きさには、もう平伏脱帽する以外にありませんでした。

 列車で着いた木曽福島の駅周辺は海抜1,000mといいますから、開田高原は1,500mぐらいあると思います。バスの車窓から見え隠れする御岳の懐に抱かれながら、山道をうねってやっと西野にある「やまかの湯」に到着しました。ここがお宿です。部屋から御嶽山は見えますが逆光になっているので、明日の朝を楽しみにして温泉に入ることにしました。
驚いたことがありました。それは満天の星です。空にこんなに星があるとは生まれて始めて知りました。夜空が星で埋め尽くされているのです。あれがカシオペア、あれが北斗七星と探しましたが、大きな星がいっぱいあってかえって見つけにくいのです。

 翌朝は、木曽馬の里で写生をする予定でしたが、あまり快晴なので、急遽、御嶽ロープウェイに乗ることにしました。又、木曽福島駅に戻って、1時間近くバスに揺られてロープウエイの乗り場に着きました。5合目から7合目まで580mの標高差を上りました。 娘と二人だけのゴンドラの中、「あー乗鞍や、あれは穂高や、」と私は、デジカメで撮り続けました。雲ひとつない紺碧の空、360度の眺望、天空を遊泳する感動で興奮していました。
とくに北に見える乗鞍岳は何回か行っていますが、離れたところから南面を見るのは初めてです。両手を長く伸ばして大空に鎮座している姿はとても美しく、山の神々しいほどの神秘さと奥深さを知りました。

 穂高の横には槍が見え、常念、浅間山、八ヶ岳、甲斐駒ケ岳、木曽駒ヶ岳など名だたる山がずらりと姿を見せてくれました。うれしかったです。あまり喜んでいたものですから、帰りのバスに乗り遅れるというハプニングがありました。しかし、タクシーのおじさんが滑らかな運転をして、御嶽の歴史や、周辺の景色を丁寧に説明してくれました。
山体は古くからの霊地で御嶽教の信仰の対象になっているという。登山道には死後霊の納まる場所として、霊神碑を建立している。その数は2万といわれるが、現代ではその信仰者も少なくなっているとのこと。
親切なドライバーのお話に耳を傾けながら木曽福島の駅に着きました。これも心に残るいい思い出です。

 「木曽路はすべて山の中である」島崎藤村の「夜明け前」の書き出しです。今回の開田高原と御嶽山の旅は、天候に恵まれて超快適に過ごしました。木曽の山の中に行くのは遠い、この老体でいつまた行けるかと思います。しかし、あの広大な山域を領して、王者のごとく睥睨している御嶽山の魅力はすごい。またお目にかかって、木曽路の旅に浸かりたいと思っています。