碧空(語り部として)-7 

2010年8月10日 記


  今年の炎暑は格別のように思います。もう日本の国は亜熱帯地方に属するものとして対処しなければと言う声を聞きます。しかし、日本だけが暑いというのでなくて、ロシアでも自然発火による森林火災が起こっているので、地球全体の問題としてしっかり手を打っていかなければと思います。
この暑い8月は原爆記念日が広島と長崎。終戦記念日。高校野球。お盆と忙しいことが集まっています。

  終戦の日から65年の歳月が流れました。
諸行無常は世のつねで、すべては移り変わっていきます。ひと時もとどまる事はありません。永い間、生きていて分かった確かなことはこれだと思っています。お釈迦様の最後の言葉は「生あるものはすべて滅す、怠ることなく努力せよ」ですから大きな真理です

 私が生まれた昭和6年に、満州事変が起こりました。
だんだん中国との関係が怪しくなり、昭和12年に支那事変が始まりました。 中国大陸での戦いでしたから、その国の人はたいへんだったでしょう。
私達は千人針といって、日本手拭いに赤い糸で結び目をつくって、それを千人の人にお願 いして針を刺してもらうのです。それを体に巻いて銃弾から守るというのですが、心のこもったやさしいものを作っていたのです。それに手紙を添えて慰問袋を作りました。
北支、中支、南支と支那の国内を位置で分けていましたから、良く覚えています。中国も蒋介石に対する共産党の毛沢東が強かったものですから、泥まみれの戦いであったと思います。日本の国内も、出征兵士を送る。英霊が帰ってくる。など戦争一色となりました。

 そして昭和16年、太平洋戦争に突入しました。ビルマ、インドネシア、フィリッピン、ボルネオ、マレー、ニューギニア等、果てしなく広がる戦場に、どうなることかと心配したものです。戦況が悪くなり、サイパン島の玉砕、北はアリューシャン列島のアッツ島の玉砕。悲しい報道が次々と入ってきました。そして本土空襲が熾烈をきわめました。沖縄も占領されて、私達は本土決戦が迫ってきたことを知りました。竹槍を持って最後まで戦う覚悟でおりました。
 
 昭和20年8月、原爆が投下され、日本は無条件降伏をしました。それは、悲しく苦しいものでした。
真っ青な紺碧の空、カッーと照りつける灼熱の太陽。空に一機ブーンとかすかな音を残して西の空、碧空の彼方に消えていった飛行機がありました。激烈な戦いは何だったのだろう。その飛行機の姿はすべてのむなしさを象徴しているように思えました。
 
 私はそのとき14歳。これからの我が国の再建のたいへんさを考えました。それは日本人ならみんな考えたと思います。戦地に出征して行かれた兵隊さん。広島や長崎での核爆弾を受けた被災者。空爆で家財をなくし路頭に迷う人々。日本国民である「生きとし生けるもの」すべてが戦争犠牲者でありました。
 
 戦後の復興は目覚しいものでした。日本人の精励努力する気風がまだまだ残っていましたから、本当によかったと思います。
残念なことは、学校教育ではなかったかと思います。戦争に負ければ、「勝てば官軍、負ければ賊軍」の鉄則がありますから、すべての「非」は日本にあるように戦勝国によって、歴史は作られました。憲法も作られました。「侵略戦争をした、残虐な国である」というレッテルのもとで国民にも他国の人にも啓蒙されました。結果、国のために、社会の為になどと考える人が少なく、個人主義の社会になり、愛国心などなくなりました。
 
 げに、教育とは恐ろしいものです。
先日も菅総理は、近隣諸国にまだ低姿勢で頭を下げています。その弱腰を情けなく思うのですが、戦後の教育を受けた人ですから仕方ありません。
大学教授のT女史もいつも日本の罪を暴くようなことばかりを大きく発言します。この人には愛国心は無いのかと思いますが、私のように、自分の目で戦争の実態を体験し、感じたわけではないのです。本を読んだり聴いたりしたことが根拠になっています。不確かなものです。

 太平洋戦争の前までは、東南アジアの諸国は欧米の植民地になっていました。インドとビルマはイギリスに。ベトナムはフランスに、インドネシアはオランダにフィリッピンはアメリカにと。大きな支那(中国)は清朝の末期で衰退の色が濃厚で、欧米諸国に虎視眈々と狙われていました。阿片戦争でイギリスに敗れ香港を割譲しました。またアメリカ、フランス、とも条約を結んで中国は半植民地化の状態となりました。

 日本は中国のその状態を見ていました。アジアの植民地化を憂いている我が国は、その中に介入していったのです。「支那に手を出さない」ように諌めた人もたくさんいたそうです。が大きな時のながれ、軍隊の力も強かったし、正義感に燃える人も多かったのでしょう。もう、すべては取り返しのつかないことです。対岸の火をじっと見ている冷静さがあったらと残念に思います。