滴る緑に

2010年5月28日 記

 
  先日、九州に行って来ました。私の旅は北の方が多くて、九州は数えるばかり、どうして敬遠していたのか分かりませんが、この度は新緑の阿蘇、雲仙を目指しました。近頃は足腰が弱くなり動きがのろくなりましたので、娘が同行してくれました。動ける間は動くと勝手に決めていますが、それがいいのか悪いのか分かりませんが、これが性分というものでしょう。  


ペイント 模写 小野竹喬「最上川」 2010.6.2 toshi


 いつも旅の収穫は大きいのですが、今回は天候に恵まれなくて阿蘇は霧のため視界ゼロ。雲仙はものすごい豪雨に見舞われて、ゆっくり温泉を楽しむことになりました。山好きの私には物足らない結果でした。が、この時期ならではの木々の緑が美しく、まして雨にうたれて映えるその色はまことに美しく、キラキラと輝くばかりその滴り落ちる雫は緑色ではないかと思うほどでした。

 3日目には雨も晴れて、島原半島の西、橘湾ぞいに走りました。この湾はもと千々石湾(ちぢわ)といっていたのですが、橘中佐を顕彰して橘湾としたとのことです。「橘中佐って?」と思われる方が殆どでしょう。小学唱歌で歌われた有名な軍人で、日露戦争で戦死され軍神とあがめられた人です。

 かばねは積もりて山を築き  血潮は流れて川をなす
 修羅の巷か向陽寺(しゃおんずい) 雲間を洩るる月青し。

 味方は大方討たれたり しばらくここをと諌めむれど
 恥を思えやつわものよ 死すべき時は今なるぞ。

 御国(みくに)の為なり陸軍の 名誉の為ぞと諭したる
 言葉なかばに散り果てし 花橘ぞかぐわしき。

 もう百年も前のお話です。現代の人にとっては、戦争とか軍人とかはすべて「悪玉」と処してしまいますからこんな文章を書いても、愚かな時代のことと受け取られるでしょう。でも、私は近頃この歌を良く歌っているのです。
「御国の為なり陸軍の名誉の為ぞと」「恥をおもえば」「死すべき時は今なるぞ」という言葉を 愛唱しているなんて、一笑に付されることと思います。
元気だったわが国がなつかしく、そして毅然としたものを持たしてくれるのです。

 旅行の最後は佐世保でした。ここから九十九島を見るのですが、私はアメリカ軍の基地に心を動かされました。戦後65年たっても占領されているという実態を拭うことができません。戦争に負けるということは こういうことになるのですね。基地だけでなく、憲法もアメリカによって作られたものですし、教育も経済も握られています。特に教育は人づくりですから社会に及ぼす影響は甚大なものです。

 今、沖縄の基地問題が社会を賑わしています。
もうアメリカの基地はNOと思います。アメリカ軍がいないと抑止力にならないと言われますが、沢山ある基地を少しずつ減らして、自衛隊がしっかり力をつけて行けばいいと思うのです。憲法9条があるから軍隊を持てないとか、軍隊を持ったら戦争になると言うのは怠慢ではないかと思うのです。自分の国を守ることをしないで、他国に任せるなんて不自然きわまりないことで、これではいつまでも悩みは尽きません。「国家百年の計」を大きなハードルを乗り越えて、その方向に進みたいものだと願っています。


水彩 「やつで」 2010.6.8 toshi

 
 旅をしていつも思うことは同じです。日本って本当に山国ですね。殆どが山また山で覆われています。
日本列島は緑の島といいたいですね。この美しい国には資源がないと言いますが、この美しさが資源であり世界に誇れるものだと思います。
もう一つすごい資源がありますよ。それは水。急峻な山を下ってすぐ海に注ぐこの水のもったいないこと。雨の多い国ですし、山の中に沁みた水が何年もかかって伏流水として湧き上がってくる所はあちこちであります。この湧水を世界に輸出するのはどうでしょうか?最高の資源ではないかと思います。