白馬スケッチ紀行−2

2010年5月4日 記


  4月の26日から3日間、白馬に行ってきました。
以前に行ったのですが、季節も同じ、ホテルも同じ、ツアー会社も同じくジパングクラブです。一緒に行くお友達も変わりません。 まるで、6年前にタイムリミットをしたみたいな雰囲気ですが、今年は特別に寒気が解けやらず、寒さ対策が必要でした。 それに今回はJRで糸魚川まで行って、そこから大糸線で南下する北回りの行程でした。

  南小谷(おだり)の駅までは7時間もかかっています。列車と並列して流れている姫川は北アルプスから流れ出る松川など周辺の川を集めて日本海に注ぐ一級河川です。清冽な水が渓谷深く流れていましたからその辺りを描いてもいいのですが、水仙街道に入ってのどかな山村を描くことになりました。2時間ほど座って画用紙に色を塗っただけの凡庸な1枚を持って、マイクロバスに乗ってホテルに向かいました。

 白馬村は、まだサクラの蕾は固く、木々の芽生えもなくじっと春を待っていました。
「樅の木ホテル」は瀟洒なホテルです。連泊ですからゆっくりと落ち着いた気分です。
明日は雨という予報。 松川の河川敷で白馬三山を描く予定でこれが本命ですが、どうなることやらと気にしながらも、「庄兵衛の湯」という温泉につかりました。

 翌日はかなりの寒さを覚悟して、真冬の装束に防水の雨具を着けました。
山は真っ白い雪。それを雲か霧がすぐに覆い隠すのです。「見たい。描きたい」おばさん達には、お高く止まっているのです。その瞬間を手早く書きとめて、脳にインプットしておきます。高い山が圧倒されるように迫っていて、その神々しい雄姿を紙に表現することは私にはとても出来ません。いつものように歯がゆい思いをしながら2時間ほど座りました。


水彩 白馬三山 2010.4..27 toshi

 次は、青鬼部落(あおに)を目指しました。ポツポツ降ってきた雨がしっかり本降りになって、スケッチをすることは出来なくなりました。この青鬼村は日本の棚田100選になっている所ですし、白馬連峰の眺めもすばらしいとのことで、期待していたのですが仕方なく帰途につきました。 予定の白馬お花畑見学もボツになりました。が、私には大きな楽しみがありました。それは戸隠にいる友人が、「樅の木ホテル」に会いに来てくれるのです。
 
 その友人とは、長い間のおつきあいです。ご主人様が定年になって夢を実現するために、長野県の戸隠に家を建てられたのです。そして、農作物を作る楽しみと、それを食する楽しみと、人様に差し上げる楽しみとを味わいたいとのことで、去年の秋に戸隠に転居されたのです。 私が「白馬にスケッチに行くから電話するよ」と知らせたら、「主人がホテルまで送ってやるというのよ」とうれしそうな連絡がはいりました。「ええーっ、」

 さて、約束の3時30分近くなり、私はホテルのロビーで待っていました。外は篠つく雨です。この雨の中を申し訳ないと思いながら、戸隠から白馬までの道中を思いました。 そのとき格好のいい黒い車が雨をかき分けるようにホテルの前庭に入ってきました。ピーンときました。あれに違いない。友人といっても親子ほど年は違うのですが、赤い帽子をかぶって若若しく華やいで見えました。ご主人様とは初対面でしたが素敵な人でした。うれしい、うれしい邂逅でした。夢かうつつか。

 2時間ほどよもやま話をして、また峠をいくつも越えて1時間半ほどの道のりを帰って行かれました。
残雪の白馬の山麓、ホテルの静かなロビーで対峙した時間は得難いものでした。
「自然の中で暮らしてみて、鳥や生き物はみんな番(つがい)でいることに気がつきました。それが大自然の摂理だとよくわかりました。人間もそうでなくては。」と彼女の言っていたのが、忘れられない言葉です。

 3日目は雨も晴れてサクラを求めて南下し、池田町のハーブ園に行きました。そこはサクラ、さくら、桜で山も谷も埋め尽くされていました。植えたものでなく、自生のものだそうですが、幾種類もの木がピンクの色とりどりに今を盛りに輝いていました。
ここで1枚描いて、おやきの里といわれる小川村にいきました。山は淡い緑で霞み、ところどころに桜が咲いて、ここは桃源郷のような静かでのどかな美しい山村でした。名残惜しく思いながら、JR篠ノ井から列車に身をゆだねて帰路に着きました。

 四季折々に移りかわる自然の姿。なんと美しい国でしょうか!日本は。
かすかに煙る信州の山を見て、川を見て、里を見て、発見と感動の連続でした。
うれしさで胸がいっぱい。ありがとう。