秋の空澄み

2007年10月25日 記


     秋の空澄み 菊の香高き
    今日のよき日を 皆ことほぎて
    定めましける 御憲(みのり)をあがめ
    諭しましける 詔勅(みこと)を守り
    代々木の森の 代々(よよ)とこしえに
    仰ぎまつらん おおみかど

明治節の歌です。「アジアの東 日出るところ ・・・・」と始まって3章目が上記の歌詞です。この季節になると私はこの歌を歌わずにはおれないのです。
曲が好きなのか、歌詞が好きなのかわかりませんが、朝、寝室の窓を開けて、東の空いっぱいに広がる清冽な「気」を吸いながら、
あーきーの そーらーすーみ と自然に歌ってしまいます。あたりに菊の香りが漂っているような気がします。

 私は、明治の人間でもなく、大正でもなく、昭和に生まれましたから、明治時代のことを知っているわけではありません。でも、その時代は、画期的な時期だったと思うのです。国家がどれだけ意気軒昂に燃えていた時代かはよくわかります。そんな熱気は昭和の始め頃はまだまだ残っていました。世界という大きな相手にどう立ち向かっていくか。小さな島国、日本が鎖国から覚めてまだ数10年。世界の列強と伍してゆくのは並大抵ではなかったと思うのです。

 政治、経済、教育など各界は一生懸命だったと思います。私が小さい頃は、皆よく働きましたし、よく学びました。太平洋戦争が終わってから世の中は変わって行きました。大きく見て「個人主義」「物質主義」になったのだと思います。私の母はいつも、「ひとを先に、自分は後に」と簡単な言葉で教えてくれました。当時の世の中はそんな雰囲気でした。

明治天皇のお妃である昭憲皇太后の御歌につぎのようなのがあります。

   「金剛石も磨かずば 玉の光も添はざらん
    人も学びて後にこそ まことの徳はあらわるれ
    時計の針の絶え間なく めぐるが如く時の間も
    日陰惜しみて 励みなば いかなる業も ならざらん」

金剛石とはダイアモンドのことです。玉も磨かないと光が薄れます。
人も勤めはげんで、業(わざ)を磨き、身を修めましょうという教訓のお歌です。

   「大宮の火桶のそばも寒き夜に、御戦人(みいくさびと)は霜や踏むらん」

出征兵士のご苦労を偲ばれたお歌です。
こんな歌は、小学唱歌として学校で習ったのです。
もう、何十年も前のことをよく覚えているものですねえ。
それは、私が学校好きでしっかり浸かっていたからだと思います。

 先日、10月13日、明治神宮に行ってきました。
友達と4人で新宿に一泊しましたので
かねての念願どおり、明治天皇、昭憲皇太后が祀られている拝殿にぬかずいて手を合わせてきました。
国民の熱望によって大正9年に造営されたといいますから、偉大なご遺徳がそのような姿になったのです。外国の人もたくさん参拝されていました。都心の広大な代々木の森に鎮座するこのお社は、日本人にとっては大切な所です。

太平洋戦争が終わったあとに、抛り投げてしまった日本人のいいところをまた取り戻したいものです。若い人は、もっと本を読んで歴史を学んで欲しいと思います。歴史って、おもしろいといいますか興味津々なものです。日本国の、日本人の自信と誇りを各人がしっかり持たなければと思います。

明治節は11月3日でした。明治天皇がお生まれになった日です。
小学生の頃、セーラー服を着て式典に参加して、

   「アジアの東 日出るところ
    ひじりの君の現れまして
    古き天地(あめつち)とざせる霧を
    おおみ光に くまなく払い・・・・・」

と、明治節の歌を歌いました。いい時代でした。
これは、自分自身の過ぎ去った年月への愛惜にほかならないように思いますが、
その当時の人々は、自分の国に、矜恃としたものを持っていましたから、しあわせでした。