朧月夜

2003年4月3日 記

 菜の花畠に入日うすれ、
見わたす山の端かすみ深し、
春風そよ吹く空を見れば、
夕月かかりて匂い淡し。

 

 

 


 私の一番好きな歌です。
私達が小学生だった頃は、学校で音楽の時間は、大きな声で斉唱したものです。
きっと近隣には聞こえていたし、それが、学校のイメージでもあったわけです。
自分が知らない歌でも、上級生が歌っているので覚えてしまうのです。

 今でも私は、小学唱歌が好きでよく口ずさみます。そして、歌詞はかなり良く覚えているのです。どの歌も、言葉がとても美しく、メロデーも情感があふれていて、私達が過ごしてきた良き時代の文化や感性や倫理観を、あますことなく表現しているように思うのです。太平洋戦争の後は、戦前、戦中の事はすべてが、悪かったことのように切り捨てられたのは、とても残念な事ですね。

 娘が、小学校に入学して間もなくのことでした。担任の先生からお話があって、朝日放送に出る事になったのです。
 それは、たしか「わたしのエンピツとママの歌」という番組だったと思います。
その頃は、ラジオ放送が全盛だったのです。
娘が自分の作文を読み上げました。もう、中味は忘れてしまいましたが、その後のインタビューの答えがふるっていました。

「Y.Fさん、1年生になって、おめでとう。学校はどうですか、おもしろいですか?」
と言われて、
「おもしろくない。」と答えたのです。
「おもしろくない、どうしてですか?、」
「やすいから、、、、。」
「えっ、やすいって、それは、勉強がし易いということ?」
「はいそうです。」
と言う具合に生意気な事をいってしまったのです。
私は、ラジオを聞きながら恥ずかしい思いをしたのを覚えています。

 その後、「あなたのお母さんは、どんな歌が好きですか?」といわれて、
「おぼろづきよです。」と娘が答えました。
「Y.Fさんのお母さん、聞いてください。あなたの一番好きな朧月夜を送りますよ。」
と言って、

菜の花畠に、入日うすれ、
見渡す山のはかすみ深し、
春風そよ吹く空を見れば、
夕月かかりて匂い淡し。

 たしか、音羽ゆりかご会の合唱ではなかったかとおもいますが、2番まで流してくれて私は、大いに感動したものです。

里わの火影(ほかげ)も、森の色も、
 田中の小路をたどる人も、
 蛙(かわず)のなくねも、鐘の音も、
 さながら霞める朧月夜。

 ぼんやりと、けだるいこの春霞の頃になると、私はとても幸せな気持ちになるのです。