秋色雑感

2001年10月25日 記

 一日、一日、秋が深くなって、澄みきった青空の下、ひんやりした冷気を感じる頃になると、私はきまって口ずさむ歌がある。

「秋の空澄み、菊の香(か)高き、
今日の佳(よ)き日を、皆ことほぎて、…」

 明治節の歌です。日本が太平洋戦争に敗れるまで、元旦、紀元節、天長節、明治節という祝日がありました。学校では、厳かに祝典が挙行されて生徒は、制服に身をつつみ、参列しました。校長先生の祝辞等があって、その後この歌を歌うのです。帰りは、紅白のお饅頭をかならず頂戴しました。

 「アジアの東、日出(ひいづ)るところ、
聖(ひじり)の君の現れまして
古き天地(あめつち)、閉ざせる霧を
おおみ光に、くまなく払い、…」

 11月3日。明治天皇が、お生まれになった日です。この明治節の歌が一番気に入っていました。音痴で声量もないのに、心から歌いあげました。歌詞が、分り易かったのです。それともう一つ、こんなことを言うと、面映いのですが、自分の国、日本に誇りを持っていましたから。アジアの東に位置して、リーダーシップをとる、わが国をとても嬉しく思っていたのです。

 「アジアの共存共栄」が、わが国の理想でした。
終戦後、「勝てば官軍、負ければ賊軍。」です。すべてが、間違っていたようにひっくり返されました。
そんなことは無いと思います。私達の同朋が、そんなに間違ったことや、悪いことばかりをしてきたとは思えません。止むにやまれぬ事情もあったし、大きな時の流れもあったでしょう。

 人類の歴史は、そうして色どられてきました。不条理の連続です。「本当はこうなんだよー。」と叫びたいことが、どれだけあったことでしょう。
私達個人も同じく、理不尽の中で生きているのではないでしようか。それを踏まえた上で、国を愛しているのです。人を愛しているのです。

 日本は美しい所です。そうして誠実な国です。日本の国に生まれたことは、とても幸せなことだと思っています。私が小学生だった頃の、あのなつかしい、明治節の歌を、

「あーきーの、そーらーすみ、きーくーの、か、たーかーき、」

と、胸を張って、高らかに歌いながら、今日も一生懸命に働こう。

石榴