甲斐駒ケ岳

  2016年9月12日 記

 

  高い山が好きで、と言ってもただ見るだけのこと。
少しの坂道でもヒーヒー喘いで歩けない。そんな私がどうして山を見るのが好きなのか。
それは山の神秘さに惹かれているからだと思います。

 たいていの山の頂上にはお宮があります。3000メートル級になれば必ずと言っていいほどに、鳥居と祠はつきものです。昔の人も、山に神が存在すると信じていたのではないでしょうか、山そのものが神であるわけです。

 かき雲をしのぐ剣が峰、広大な山容であたりを睥睨しているその雄姿には、もう脱帽です。
その素晴らしい姿をみたいのですが、旅をしても、天候の具合で見えない時もあります。
その残念な思いを味わう時もあれば、思いもよらず見事な雄姿を見ることもあります。

 ずいぶん前の話ですが立山に行きました。弥陀ヶ原で一泊したのですが、夜にはかなりの雨が降りました。朝になってもまだ雨は残っていたのですが、バスに乗って室堂に向かいました。カーブをしながらバスは高度を上げている時、ふと左を見ると車窓にくっきりと山が・・・・「あー劔(つるぎ)だ」と大声をあげました。

 初めて見たのですが、それが剱岳(2998m)だと確信しました。雨に濡れて落ち着いた空気の中で、その峻険な岩肌、豪快な岩壁は他の追随を許さないすばらしさ。それが直ぐ目の前に現れているのですから、うれしくて、うれしくて。ラッキーでした。

 書道の展覧会活動をしていたころですが、東京上野の森美術館で社中展がありました。それは毎年7月の終わりから8月にかけての日程で行われました。東京へいってUターンするだけではおもしろくないと思って、私はある年のこと松本へ行って北アルプスを見てこようと決めて、東京で一泊して翌朝新宿から中央線に乗りました。

 松本から大糸線に乗って北に行こうと漠然と考えていただけで、ボンヤリと窓にもたれていました。甲府を過ぎてしばらくすると、忽然と高い山たちが現れてきました。
その当時はまだ山の名前など分かっていなかったのですが、南アルプスだということは分かりました。

 確か8月の1日だったと思います。
深い紺碧の空のもと、ギラギラと灼熱の太陽は照りつけています。そこに毅然と聳えている大きな山塊は太陽を浴びて輝いていました。すごかった。美しかった。
 もう一度見たいと思って、何度か挑戦しましたがそれを見ることはできませんでした。
娘が山登りを初めてから、私は地図をよく見るようになりました。ネットでもいろいろ引いてみます。旅行するときは高い山の見えるところを、そして写生する。これは至福の最たるものでございます。

鳴門大橋
鳴門大橋  toshi 2016.2.12


 北アルプスや近隣の山などをかなり踏破した娘は、南アルプスにも行くようになりました。南アルプスには3000m級の山が多く東京圏の人は日帰り登山ができるそうです。関西からは遠いので、なじみが少ないのです。娘は鳳凰三山(2841m)や、八ヶ岳の赤岳(2899m)に登ってきていろいろ話をしてくれます。

 ある時、「南アルプスの山々は、高い標高と大きな山容を持っているが、全般になだらかな稜線を連ねており、鋭角的な姿をした山は多くない。しかも、仙丈ケ岳など南アルプスの多くの山は、前山に阻まれて人里からは間近に見えないことも多い。これに対して*甲斐駒ケ岳(2967m)は山梨県側の山麓から一気に2500mほどの標高差を持って立ち上がっており、中央本線沿線からも、その全貌が望まれる*」とウイキペディアに書かれているのを見つけました。

 私があんなに感動した山は「甲斐駒ケ岳」だった。ということが分かりました。
ぜひ、行ってみたい。北杜市ぐらいで泊まればいいのかと考えています。