夏の終わりに

  2016年9月12日 記

 

  窓の外でチリーンチリーンと風鈴が鳴っています。
この風鈴は、友達からいただいたもので、吊りシノブの下に鉄製の風鈴がついているのです。
「水やりは、水の中にドボーンとつけてください」と言われているので、その通りしています。もう3カ月にもなるのに、シノブは元気に青々としていて、涼やかに、さわやかにリーンリーンと。

 今年の夏は特別に暑かったといっても、もうその感覚はだいぶ忘れてしまいました。
数日前から朝晩がとても涼しくなり、寝苦しさが無くなったのはありがたいことです。そしていつの間にか、虫のすだく声が聞こえますし、15日は中秋の名月を迎えます。

プレランサ 太極拳を習っていたR先生は、「秋になっても、からだは夏の間に温もっているから薄着でもかまいません。春は、冬の間に体が冷えているから、暖かくしましょう」とおっしゃっていました。中国で昔から言われていることらしいです。
 これは着るものだけじゃなく、食べるものも含まれています。
中国の人は、冷蔵庫から冷めたいものを出して、すぐ口にしないそうです。必ず常温に戻してから飲むそうです。が、これは昔のこと。

 武庫川女子大のオープンカレッジで太極拳を習いました。
もう、10年も前のことです。 
先生は中国の女性ですが、受講して先生のお話しを聴いていると、日本人が忘れてしまったこと、日本の社会からなくなった懐かしいことがいっぱいで、週1度のその日が待ち遠しい思いでした。
「じっと目をつむって、風の音をきいてごらんなさい」
「水の音、小鳥のさえずりをよく聞きましょう」と。


 先生は中国の大学と、日本へ来てから神戸大学で学び、学歴と教養は最高で、日本語は日本人より確かなのです。だから通訳、翻訳は自由自在でした。そして、太極拳の技は、神の域であると思います。天分と修練でなみなみならぬものを身に着けておられました。

 2010年9月に中国のチンタオに行きました。R先生のお家のあるところです。
そこの、朝の公園で中国の人たちと一緒に太極拳をやってみたいと、参加しました。
6日間の行程でしたが、朝6時からびっしりと練習しました。午後からは見学であちこちを回りましたし、ご自宅で餃子を作ってくださり、御馳走になりました。
 中国には書道の関係で1980年代に何回か行っているのですが、中国の国内の雰囲気はすっかり変わって、昔の面影は残っていないようでした。近代化された中国は人の姿勢は高くなり、日本人には大きく出ていましたね。

ラオシャン
ラオシャンより黄海を望む 2010.9.13 toshi

 チンタオの有名なラオシャンという山に行きました。リフトで登ってあとは歩いてという所で、私はそこで下りてくる皆さんを待つことにしました。そのとき、R先生も残ってくださいましたので、二人で下界を見下ろしながら楽しい会話をいたしました。

 私は先生の力量を思うと、「先生、日中友好のためにご尽力ください。」と言わずにおれなかったのです。「先生のお力を十分に発揮してください」などと僭越なことを申しました。
先生は「中国では、高齢者に年金がないので、子供は親を見なければなりません。でも、それは、私の年齢ぐらいまでで、若い人はしないでしょう。」と言っておられました。
ひとりのお母さまを大事に守って、日中を往復しておられます。

 時々、頂いたウーロン茶のお湯のみを使って、先生のことを懐かしんでいます。