「白い泉の伝説」
プロローグ
その日、白い森の、白い泉はとても穏やかなお天気でした。

 白い森・・・編みぐるみ王国の北に位置する森で、
別名「幻の森」と呼ばれている森です。

 何故幻の森と呼ばれているのかと言えば、
実際に白い森へ行って帰ってきたおサルさん達がいないからです。

 白い森を探して、たくさんの冒険野郎のおサルさん達が、
それぞれ自分達の故郷を出発していきましたが、
何年経っても誰も帰って来ませんでした。

 あまりに誰も帰って来ないので、おサルさん達の間では、
「白い森なんてどこにもないのに決まっているさ。
 冒険に出て行った奴らは、どこにも白い森がないので、
 きまりが悪くなって帰って来られないだけさ。」
と言う噂が広がり、やがて幻の森と呼ばれるようになり、
その内誰も探そうとしなくなりました。

 でも、本当に白い森は存在しないのでしょうか?

 いいえ。
白い森はちゃ〜んと編みぐるみ王国の北に存在してます。
だぁ〜れも見つける事が出来ないのは、
白い森に魔法がかかっているからです。

 その昔、白い森はいろんな国のおサルさん達が出入りしてましたが、
際限なく森林の伐採が行われた為、一時期白い森が全滅の危機に
陥ってしまいました。

 白い森には5人の長老が森を治めています。
北の長老、南の長老、東の長老、西の長老、そして中央の長老・・・。
ある日、長老達が集まって相談を始めました。

「このまま白い森の伐採が続けば、我らは生きていけなくなる。」
「白い森の存在無くして、我らの存在はありえないのだ。」
「先祖代代、ずっとこの森で暮らしてきたこの白い森を守らねば。」
「中央の長老。ご決断を。」

 事態を重く見た中央の長老は、
苦虫を噛み潰したような顔でとうとう決断しました。

「他の土地のサル達と交流する事が、我らにとって大事だと
 思った事もあった故、他の土地の者達と交流する事を
 許しはしたが、このまま白い森の伐採が続けば、
 我々は生きていけなくなる。
 白い森の存在無くして、我らの存在もありえないのだ!
 結界を張る!皆の者!結界を張る準備を!」
「おう!」

 こうして中央の長老が、森のど真ん中に魔方陣を描き、
北・南・東・西の長老達が、白い森全体に結界を張ってしまいました。

 結界を張ってしまった以後、
この森近辺を訪れようとした外のおサルさん達は、魔法の効力により、
ある者は、遠い土地へ飛ばされて、そこで暮らすようになったり、
ある時は人間界に飛ばされたりしてしまったので、
二度と自分の故郷へ帰る事が出来なくなってしまったのでした。



物語創作・・・秋さん
写真撮影・・・春姫