<平成12年4月1日に月額20万0571円に、平成13年4月1日に月額20万8018円に、平成14年4月1日に月額21万3663円に、それぞれ増額された。
  •  上記額による賃金と本件解雇時の賃金との差額は、平成12年4月分から平成15年1月分までで、62万4374円である。
  •  また、上記増額による平成12年夏季一時金及び冬季一時金と本件解雇時の賃金を基準とした一時金との差額は、6万0019円である。
    (イ) 原告日野関係
    1.  原告日野の本件解雇時の賃金(本給・勤続給・勤務地手当・事務兼務手当)は、月額19万8340円であったが、平成12年4月1日に月額21万8047円に、平成13年4月1日に月額22万8061円に、平成14年4月1日に月額23万3767円に、それぞれ増額された。
    2.  上記額による賃金と本件解雇時の賃金との差額は、平成12年4月分から平成15年1月分までで、94万7406円である。
    3.  また、上記増額による平成12年夏季一時金及び冬季一時金と本件解雇時の賃金を基準とした一時金との差額は、9万9519円である。
    (ウ) 原告板谷関係
    1.  原告板谷の本件解雇時の賃金(本給・勤続給・勤務地手当・事務兼務手当)は、月額21万3626円であったが、平成12年4月1日に月額24万5239円に、平成13年4月1日に月額25万5376円に、平成14年4月1日に月額26万0866円に、それぞれ増額された。
    2.  上記額による賃金と本件解雇時の賃金との差額は、平成12年4月分から平成15年1月分までで、135万2756円である。
    3.  また、上記増額による平成12年夏季一時金及び冬季一時金と本件解雇時の賃金を基準とした一時金との差額は、15万9645円である。
      イ 未請求一時金
    (ア) 原告中田関係
     原告中田の平成13年夏季一時金及び冬季一時金はそれぞれ55万9243円であり、平成14年夏季一時金及び冬季一時金はそれぞれ57万2791円である。
    (イ) 原告日野関係
     原告日野の平成13年夏季一時金及び冬季一時金はそれぞれ60万7346円であり、平成14年夏季一時金及び冬季一時金はそれぞれ62万1040円である。
    (ウ) 原告板谷関係
     原告板谷の平成13年夏季一時金及び冬季一時金はそれぞれ66万3302円であり、平成14年夏季一時金及び冬季一時金はそれぞれ67万6478円である。
     2 争点(本件解雇の効力=原告らと被告との雇用関係の有無)

     (1) 原告らの主張
     本件解雇が無効であることは、上記争いのない事実等(4)イの前訴1審判決の判示のとおりであるから、原告らは被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にある。
     よって、原告らは被告に対し、上記の賃金及び一時金の請求権を有する。
     (2) 被告の主張

      ア 本件ユニオン・ショップ協定に基づく解雇の有効性
    (ア) 被告は、明石海峡大橋の開通に伴い、事業の縮小等を余儀なくされる旅客船事業者の離職者の受け皿会社という特殊性を有しており、運転士等の従業員を広く一般から公募できない状況下にあったものであり、被告と補助参加人組合との間で締結された本件ユニオン・ショップ協定は、実質的にはクローズド・ショップ協定である特殊なな協定である。
    (イ) このような被告の設立の経緯や特殊な性格、本件ユニオン・ショップ協定の特殊性を考慮すると、同協定の解釈適用にユニオン・ショップ協定に関する一般理論は適用できない。
    (ウ) よって、本件ユニオン・ショップ協定が、補助参加人組合から除名又は脱退したが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者に対する被告の解雇義務を定めたものであるとしても、これに基づく本件解雇は有効である。
      イ 被告が本件ユニオン・ショップ協定に基づく解雇義務を負わない場合の本件解雇の合理性
    (ア) 原告ら3名は、被告設立後、補助参加人組合と被告との団体交渉その他の補助参加人組合の活動において、職場代表として主導的役割を果たしてきたから、補助参加人組合から除名された後も被告に在職させることは、被告の上記特殊性から到底認められない。
    (イ) また、原告ら3名を中心とする全港湾の組合員らは、全港湾神戸支部役員及び従業員と全港湾加盟の他社労働組合員らとともに、平成11年10月12日から同年12月31日までの間、多数回にわたり、被告の事務所に押し掛け、被告の業務を妨害するなどした。
    (ウ) よって、本件ユニオン・ショップ協定により被告が解雇義務を負わない場合でも、本件解雇は十分な合理性があり、有効である。
    第3 争点に対する判断

     上記争いのない事実等(2)、(3)によれば、被告は原告らに対し、本件ユニオン・ショップ協定に基づき本件解雇をなしたこと、同協定は、補助参加人組合以外の他の労働組合に加入している者及び補助参加人組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者についても、使用者である被告の解雇義務を定めたものであると解されるところ、上記のような者に対する被告の解雇義務を定めた部分は、民法90条に違反し無効であると解するのが相当である。
     この点に関し、被告は、被告会社の特殊性等を縷々主張するが、それらの事情は、上記判断を左右するに足りない。
     そうすると、本件解雇は、本件ユニオン・ショップ協定に基づく解雇義務が生じていないのになされたことになるから、他に特段の事情がない限り、解雇権の濫用として無効である。

     被告は、本件ユニオン・ショップ協定に基づく解雇義務を負わない場合でも、本件解雇は十分な合理性があると主張する。
     しかしながら、被告主張のように、原告らが補助参加人組合の活動において、職場代表として主導的役割を果たしてきたとの事情は、補助参加人組合から除名された原告らを解雇する合理的な事由とは到底認めがたい。
     また、被告は、原告らが多数回にわたり被告の業務を妨害する行為を行ったと主張するが、これらの事実は本件解雇後のものであるし、その点は措いても、これらの事実を認めるに足りる証拠がない。
     のみならす、証拠(甲1、2、9)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、本件解雇の効力が主たる争点となった前訴において、これらの事実を主張せず、既に前訴の判決が確定したことが認められるから、本訴においてかかる事実を主張して本件解雇の有効性を主張することは紛争の蒸し返しであって、訴訟上の信義則に反し許されないものと解するのが相当である。
     そして、他に上記の特段の事情を認めるに足りる証拠はない。

     なおまた、上記争いのない事実等(4)によれば、前訴の判決確定により、前訴の控訴審の口頭弁論終結日である平成14年4月23日の時点において、原告らが被告に対し労働契約上の権利を有する地位にあるが不可争性をもって確定しているから、それ以降の期間について、被告としては、労働契約の新たな終了事由を主張立証するのでない限り、原告らと被告との間の雇用関係の存在を争うことはできない。
    第4 
     神戸地方裁判所第6民事部

                               裁 判 官   田 中 澄 夫 


                               判決・命令一覧
                                トップページ