【緊急命令とは】
 
現行労組法は、使用者による不当労働行為について、労働委員会の命令によって「原状回復」させることで労働者(労働組合)を救済するという考え方をとっています。
 いつも問題になるのは、この労働委員会の「効力」です。つまり、この命令に従わなかった場合の罰則規定がないこともあって、強制力が乏しいという問題があります。使用者は地労委命令が出ても中労委に再審査を求め、中労委で却下されると裁判所に命令の取り消しを求める訴訟(行政訴訟)を起こすという例が少なくありません。この行政訴訟は、地裁→高裁→最高裁という「三審制」をとりますから、結局5回の審理を経て「行政命令が確定判決によって支持される」という状態になりかねません。こうなって初めて、行政命令に従わない場合には、労組法28条の規定による処罰(1年以下の禁固もしくは10万円以下の罰金、または両方)が科せられる事になります。
 これに何年もかかっている間、使用者による不当労働行為が野放し状態ということになれば、はたして「救済」の意味があるのかということになります。これをカバーするものが「緊急命令」です。
 使用者が、@地労委命令→行政訴訟(各地裁)、A地労委命令→中労委命令→行政訴訟(東京地裁)、という対応をとった場合、訴訟が提起された裁判所は、使用者に対して判決確定までの間「救済命令の履行を命じることができる」(労組法278項)、これが「緊急命令」です。これに使用者が従わなかった場合は「10万円以下の過料」(命令が使用者の作為、たとえば団体交渉に応じることを命じる場合は、履行しなかった1日につき10万円以下の過料)が科せられることになります。

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