韓国労働社会研究所 機関誌

「労働社会」20082月号

李明博大統領時代の展望

実用主義のブルドーザー大統領と韓国社会

チョン・ヨンテ(仁荷大学校社会科学部教授)

 

この文章では大統領当選者の国政哲学と指導スタイルを見ることによって、これからの政治に対する展望を試みようとするものである。李明博大統領当選者の国政哲学ないし政策基調と指導性は、今後4年余り韓国政治に決定的な影響を及ぼすだろう。これは次のような理由のためである。先ず、BBK特別検察チームが200712月の検察の捜査結果とは異なった結論を出せそうにない。また4月の国会議員総選挙でハンナラ党が無難に過半数を確保できると予想されるためである。野党である統合新党、創造韓国党、民主労働党などが、強力で民主的な指導者が不在な状態で、路線や大統領選挙戦の資金などを巡って離党ないし分党に至るほどの深刻な内紛に包まれている反面、政権与党のハンナラ党は一時は党分裂の危機まで招いた国会議員の公認を巡る内紛を、無事に上手く収めた。

最後に、李明博大統領当選者は1987年の民主化以後に行われた選挙で最も高い支持率を獲得し、強力な指導力を発揮できる名分を手に入れたためである。以上のような理由によって、今後数年間の韓国政治を展望するのに最も決定的な変化の要素は、李明博大統領当選者の国政哲学と指導力であるということができる。

 

『先進化』で包装された大企業優先の経済政策

先ず、李明博大統領当選者は民主主義の深まりや南北協力による自主統一国家の実現、あるいは普遍的な社会福祉国家体制の構築などではなく、経済成長を最優先視するつもりであるという点を強調する必要がある。当選の確定後に行った記者会見で、彼は「今は建国と産業化、民主化を越えて、先進化に進まなければなりません。これが李明博政府に対する時代の要求」であると強調した。

更に李明博大統領当選者の経済成長戦略は『分配優先』でもなく、『分配と成長の並行』でもない、『成長優先』に基礎を置いている。すなわち『投資心理回復』のため、△労働生産性と効率性の向上のための労使関係安定、△法人税や所得税など直接税の減税、△規制緩和と民営化による先進国レベルの規制改革、などを行うということである。そしてここで注目すべきことは、投資心理を回復させなければならないという時、彼が念頭に置いているのは『大企業』であるという点である。

他の一方で、対外経済政策に対する李明博当選者の立場は、よく知られているように『自由貿易論』である。したがって韓米自由貿易協定が批准されれば、中国やインドなど、他の国との自由貿易協定も直ちに推進するだろう。ここで二つだけ指摘しようと思う。一つは李明博大統領当選者は米国の次に自由貿易協定を締結する国として、中国よりはインドを選ぶ可能性が大きいという点であり、他の一つは自由貿易協定は消費者のためだという名分もなくはないが、それよりは大企業の輸出拡大のためという側面がもっと大きいという点である。このような点で李明博当選者の自由貿易論も、結局は大企業中心の新自由主義的な成長第一主義の延長線上にあると言うことができる。

 

すべての領域で市場論理が貫徹される新しい世界が目の前に

李明博大統領当選者はここまで見た大企業中心の新自由主義的な経済運営原則を、政党と行政組織の運営、教育と社会福祉など、他の政策にも拡大適用しようとする。李当選者が政党と選挙運動の効率性の向上に、政治家よりも組織・選挙の専門家を好んだということはすでによく知られている。彼は「政党が肥大で重なり合っている。これは全世界的にもないこと」であり、「党も企業最高経営者(CEO)型になるのが世界的な傾向」とも話した。

引継ぎ委員会主導の政府機構統廃合()作りで始まった行政改革は、行政費用の節減または国による規制の縮小という観点で推進されるものと予想されている。また政治と不可分の関係にある中央政府と公共機関の改革も試みるだろう。李明博大統領当選者はすでに現行の18部−4処−17庁−その他17の組織で編成された56の中央行政組織を、大部処−大局体制に再編し、416にもなる政府委員会を大幅整備するという公約を出していて、このほとんどを業務引継ぎ委員会が政府組織改編案に反映した。特に財政と租税などの中央政府の権限を大幅に地方に委譲、実質的な地方自治が行われるようにするという構想も出した。また公共機関については基本的に非効率的で肥大だと認識している状況から、公企業の統廃合と民営化の作業を進めるだろう。産業銀行など国策銀行の民営化方針はすでに公約でも示されていた。

また教育の自由市場化と『世界化』も積極的に推進されるだろう。李明博当選者は「韓国の教育は官主導から脱皮できていないのが事実」であると指摘し、「これによって父兄と学生、教師、大学など、教育主体のどの誰をも満足させられていない」と主張しながら、市場論理に合わせて、学生と学父母らが望む自立型私立高(特別目的高校)を大幅に増やすと明らかにしたところである。また彼は小学校の英語教育の強化によって、一歩進んだ『グローバル・コリア』を実現するために、国語や国史も英語で授業すると言った。社会福祉に対する立場も同じように、市場論理または成長優先主義の延長線上に置かれている。

以上のように李明博大統領当選者は経済領域だけでなく、政党−選挙−行政−教育−福祉など、他の領域にも市場の効率性を優先して考える新自由主義的な原則をそのまま適用しようとしている。

 

『グローバル・スタンダード』に立った外交政策と南北関係

李明博当選者の外交路線は、南北関係など対外政策におけるグローバル・スタンダードの適用と国際共助の強化に要約することができる。もちろん彼が話すグローバル・コリアは韓国的価値と制度を国際社会に広めるという意味ではなく、むしろその反対に『グローバル・スタンダード』を韓国に適用、広めるという意味である。より重要な点は、彼が話すグローバル・スタンダードまたは普遍的価値は、アメリカと共有する価値、より正確に言えばアメリカ式民主主義と英米式資本主義を意味するということである。その延長線上での『国際共助の強化』は、アメリカの政策を受け入れるという意味が大きい。

政府が対朝鮮政策で、この5年間おおむね南北関係改善を中心とする外交路線を固持したとすれば、李明博政府は国際関係と国際基準の枠組み、すなわちグローバル・スタンダードという観点で朝鮮問題と南北関係に接するということである。180度の方向転換というわけである。このようにグローバル・スタンダードを強調する場合、南北関係の特殊性よりは国際的基準、特に『人権』のような普遍的価値によって対応するということを意味するので、そうなれば今後の南北関係において相当な変化が起こるであろう。業務引継ぎ委員会が統一部の業務報告で、この間「参与政府=盧武鉉政府」が、朝鮮が核実験を強行した2006年を除いて、国連の朝鮮に対する人権決議案の表決に棄権ないし参加しなかった事実を強く批判したのは、まさにこういう理由からである。

業務引継ぎ委員会が外交部に対して、安保と人権、経済協力において『ヘルシンキ・プロセス』を韓半島問題にも適用することを要求したのも、同じ脈絡であった。李明博政府がヘルシンキ・プロセスの韓半島への適用に言及したのは、朝鮮の人権問題改善、朝鮮に拉致された者・国軍の捕虜など、人道的な問題や安保問題の解決を、南北経済協力と連係させるという意志をハッキリと示したものである。

このような対朝鮮政策の変化とともに、李明博当選者は韓米同盟を一層強化するということを明らかし、加えて韓・米・日の協力の必要性を強調し始めた。参与政府では南北関係を重視した代わりに韓日関係が悪化することによって、韓・米・日の3角協力関係が大変緩くなったが、李明博政府は伝統的な韓・米・日の南方3角安保協力で、対朝鮮などの安保問題に積極的に対応するということである。統一部を解体して大部分の機能を外交通商部に吸収するという業務引継ぎ委員会の構想は、まさにこういう脈絡で理解することができる。盧武鉉政府では南北関係改善と緊張緩和を優先順位に置いて、統一部が外交安保政策を主導した反面、李明博政府では外交通商部が主軸になるという意味である。

 

右翼ポピュリズムの香り漂う李明博式の専門家政治

李明博大統領当選者の政治に対する認識は、既存の議会政治が民生を後回しにして、時には理念論争、時には党利党略と、消耗的な政治攻防に埋没してきたという認識によく現れている。「国民はすでに未来に行っているのに、政界は過去に留まっています。・・・・国民は理念でなく、実用を選択しました」。従って彼は国会であれ政党であれ、『理念』や『党利党略』よりは「仕事をする雰囲気に変えなければならない」と考える。

国会は党利党略による消耗的な理念論争の代わりに、民生と経済再生のために和合的な雰囲気で与・野党が共に努力しなければならず、政党は人脈・派閥や学閥、または位階秩序よりは、能力や業績によって職責と役割が与えらなければならず、公職候補の公認も親密な関係に左右される密室公認や野合公認ではなく、計量化された客観的な能力や業績を根拠にしたシステム公認でなければならないということである(もちろん李明博当選者がこのような政党改革に対する青写真を出せるのは、何よりも党内選挙戦で、党員投票では敗れたが国民を対象にした世論調査では勝利し、選挙でも国民の圧倒的な支持を得て、党、特に『旧主流』にこれと言った借りがないためである)。国家や企業の誤った政策あるいは一方的な決定に対して抵抗する一切の集団行動に対して、基礎秩序と法秩序のレベルで強力に対応するという李明博当選者の態度も、このような脈絡から出たものといえる。

自身の背景やこの間の発言を考えれば、このような李明博当選者の政治観は、多様で時には衝突する利害関係を調整・妥協する過程に現れる揉め事と論争を認め、ある面では奨励する多元主義的な政党政治を、『専門家政治(technocracy)』に代替しようとするという予測を可能にする。多元主義的な政党政治は民主主義の最も基本的な条件である。しかし彼が嫌悪し改革しようとする『式政治』は、実際には彼自身が所属しているハンナラ党と他の保守野党がこの10年間行ってきたものである。

実際、盧武鉉政府が週5日勤務制を推進した時、ハンナラ党はそれのもつ社会経済的効果を計量化された客観的な資料に基づいて討論する考えはなく、直ちに『社会主義的発想』という烙印を押して、理念論争に持ち込んだ。私立学校法改正、過去の歴史清算など、他の政策を扱う時も、全く同じやり方で対応した。このような点ではハンナラ党に友好的な保守市民社会団体も同じだったし、一部進歩人士もそうだった。しかしハンナラ党はこれらの態度を批判したり中止させようとしたことはなく、むしろ焚きつけたり悪用した。

それにもかかわらず、李明博当選者がこのようなヨイド政治から脱皮すると主張しているのは、総選挙以後におそらく形成されるであろう一党優位の多党制政局の中で、野党から浴びせられる『反新自由主義』といったような理念攻勢を事前に無力化させて、自身と新自由主義的な専門家の手による権威主義的な政局運営のやり方を貫こうとする意図のためだといえる。彼が『党・政の分離』よりは『党・政の一体』を通した大統領による与党掌握、内閣から大統領室への国政調整機能の移転などを推進するのを見る時、このような憂慮はより一層大きくなる。

また民主化以後で最も高い支持率を得たという点を勘案すれば、大統領が与党と行政府を完全に掌握する場合、野党や市民社会団体から強い批判と抵抗が現れて、自身が願う政策の国会通過が難しい時には、経済を重視する国民世論の名を借りて容赦なく弾圧し、無視して押し通す『帝王的大統領』、『委任民主主義』、『新権威主義』または『ポピュリズム』として現れるという予想も可能である。『イギリス病』を治癒したというイギリス保守党のサッチャー首相がそうであったし、民主化以後に新自由主義的なリストラによって『経済を生き返らせた』南アメリカの国々の保守党出身の大統領がそうであったように。

もし、李明博政府の任期中に747公約がある程度成果を上げ、大統領やハンナラ党に大型不正事件など重大な事件が発生しなければ、大統領の4年再任制のための改憲を試みることもできる。李明博当選者は憲政秩序に関して、「4年再任制を考えることができるが、正・副大統領制には反対する」という立場を明らかにしたことがある。

 

ブルドーザー式指導力、『法と秩序』は避けて通るか

李明博大統領当選者のヨイド式政治に対する嫌悪は『成功の神話』を蓄積してきた自身の『ブルドーザー式指導力』に対する自信から出たものであることは、今更説明の必要はないだろう。復元事業、ソウル地下鉄のストライキ対応方式、端末機の取り付けなどによるソウル市の大衆交通体系改善、ソウル市庁前の芝生広場の造成などが、ブルドーザー式指導力をよく表した事件である。このようなブルドーザー式指導力は短期間の外形的な成果を上げるには適しているかも知れないが、環境や維持費といった他の基準や、中・長期的な観点からは深刻な問題が起こり得る。短期の外形的な成果を主とした式の産業化方式が招いた副作用は、1970年代初期のワウ・アパート崩壊事件、大橋崩壊事件など、執権当時または以後に発生した数多くの大事故がよく表している。在職当時は無事かも知れないが、後続政権で事件が発生するのである。

これ以外にも李明博当選者のブルドーザー式結果至上主義的指導力は、次のような二つの問題点がある。第1に、彼が打ち立てようとする基礎秩序と法秩序が、むしろ更に壊れるということである。このような憂慮を間接的に証明するのが、まさにBBK事件である。

 

金ジョンピル顧問はこの日(大統領選挙期間中の20071217)の応援遊説で、BBK問題について李候補を弁護する趣旨で演説をし、「今年の初め李明博候補に会った時、李候補に確約されたことがある。BBK問題についてどの程度関与したのか私に率直に話してくれと言った時、李明博候補は『私が介入をしたことは事実だが、法の網にかかるほどのことはしていない』と言った」と話した(『ハンギョレ』、20071218)

 

しかしそれに関する各種不正疑惑が、単純に「疑惑」だと考える国民はあまりいないようだ。それだけではない。自身は法の網を巧妙に抜ける方法を知っているかも知れないが、他のハンナラ党議員や官僚らもそうであるという保障はない。民主的な過程よりも短期的な結果だけを重視すれば、特に自身が任免権を持った官僚や与党の人たちが、非民主的で不法なやり方を動員する可能性が大きい。

第2に、短期の成果を重視すれば、様々な声に耳を傾けて政策に反映する時間的・精神的な余裕がそれだけなくなり、権威主義に回帰する可能性が大きくなるという点である。このような憂慮を意識したためか、彼は「決断力と推進力があるリーダーシップを発揮します」と言いながら、同時に「謙虚な姿勢で国民の言葉に耳を傾け、民主的説得の美徳を示します。・・・・国民のみな様に仕えます。経済を必ず生かします。国民統合を成し遂げます」と強調した。しかしここで話された『国民』の範疇からは、組織化された国民、特に労働組合や進歩的市民団体、野党などは除外される可能性が大きい。これらの集団は耳を傾け、仕える対象でなく、むしろ『大企業のための新自由主義的政治経済改革』の対象であるためである。

彼が耳を傾けて仕えるという国民は、正体も不明で、自身を支持したり少なくとも抵抗しない『従順な』国民または社会集団、例をあげるなら企業家・保守団体だけを指し示していると見なければならない。したがって国民の言葉に耳を傾け、国民に仕えるというと同時に、法で治めて政策の恩恵から排除する集団も生まれることは明らかである。従ってそれだけ国民統合という約束は言葉だけに終わる可能性が大きい。

 

圧倒的な右翼権力時代…それでも穴はある!

圧倒的な国民の支持でスタートする李明博政権も弱い部分がある。一部は初めから浮かび上がり、他は執権の中盤頃から現れるだろう。

第1に、ハンナラ党と支持・同盟勢力間、あるいは内部の揉め事である。李明博政権下での支配集団は、李明博大統領とハンナラ党内の非主流集団(金ドゥオン議員、朴ヒョンジュン議員など最近入党した議員集団)を核としており、これらはハンナラ党内の主流グループ(朴グネと支持議員)とニューライト全国連合、先進国民連帯など、ニューライトグループなどと共に国会を掌握するだろう。また市民社会内の主要な支持・同盟勢力として財閥集団、保守メディア、保守的なキリスト教集団、高麗大同窓会など、学閥・姻戚関係集団が布陣している。これらは親米・反朝鮮・新自由主義という大きな枠組みで一つで括られているが、具体的な政策の部分で微妙な差があったり、公職候補者公認の持分、公共工事の配分など、政治・経済的な資源を巡って激しい競争を行う可能性が大きい。特に公職候補の公認では、ハンナラ党の圧勝が予想されるために、公認を巡る最近の主流・非主流間の紛争で見られるように、その競争は非常に激しいものになるだろう。

第2に、統合新党、創造韓国党、民主労働党などハンナラ党を牽制する主要野党が、総選挙の前までに現在行っている内紛と仲間内の紛争状態を解決し、李明博大統領とハンナラ党が打ち出す国政哲学や政策に対して説得力ある対案を出すことができなければ、総選挙以後の李明博ハンナラ党政権は、大統領から地方政府まで完全に掌握することになるだろう。すなわち強い与党と弱くて分裂した野党という状況が、今後4年間継続するだろう。そうなれば李明博政権に対する監視と牽制機能は極めて弱まり、歴史的経験が語るように、政府与党が腐敗と不正を犯す可能性が大きくなる。これはハンナラ党内部の派閥間の紛争を繕うためのフォークバレル(政治的ばらまき攻勢)式の政策決定や、財閥大企業、保守メディア、ニューライトグループなど、市民社会内の主要支持集団に対する報酬の支払いが避けられないためである。その上、李明博大統領当選者自身が「法の網にさえ懸からなければ良い」という考え方を広めたために、そうなる可能性がより一層大きい。

第3に、李明博政権は短期的な成果中心の結果至上主義を指向している上に、国民の圧倒的な支持の主要な根拠になった「747公約」の顕著な成果を任期中に出さなければならないという強迫感から、中身のない政策を量産する可能性が大きいという点である。

訳注:「747公約」は、年間7%成長、10年内に国民所得4万ドル達成、世界7位の経済大国に飛躍に要約される選挙公約。

第4に、任期中に毎年7%の経済成長を実現する可能性も大きくはないが、たとえその目標を達成したとしても、成長の果実を庶民が肌で感じるほどに分配するまでの間に、時差が生じるという問題点がある。それだけでなく、今までの経験や他の国の事例を見ても、成長の主要な恩恵を受ける集団である財閥・大企業を含む富裕層が、成長の果実を自発的に庶民に分配しようとはしないだろうし、そうなれば労働者など庶民層は団体行動など、李明博当選者が基礎秩序と法秩序のレベルで規制するとしている、まさにそのやり方で抵抗するだろう。これに対して李明博政権は露骨な権威主義に転換する可能性があり、それだけ国民の反発と抵抗が強くなるだろう。このような予想が現実になる場合、これに対する対応のやり方と次期大統領選挙を巡る支配集団と支持勢力内部、あるいは各集団間の紛争と分裂がより一層激しくなるであろう。

これ以外にも、対米従属性の強化、中国との葛藤の深まり、南北関係の緊張の高まりなどの問題点が生じるであろう。

 

批判勢力の武器、連帯と公共性

現在までの状況に照らしてみる時、統合新党はもちろん、創造韓国党、民主労働党など主要野党勢力は、総選挙までに内部の紛争を克服するのが難しいと見られ、総選挙で良い結果を得るのも簡単ではないだろう。たとえ野党が内部分裂を収拾し、総選挙で目を見張るほどの成果を上げたとしても、李明博政権の国政哲学や政策に対抗するほどの国民的説得力を持った対案や対応方法を開発するには、相当な時間がかかるだろう。またたとえ野党勢力がこのような条件を備えられたとしても、これまでのように名分が充分でなく国民がそれなりに納得していない状態で、壇上占拠や屋外闘争のようなやり方を繰り返せば、むしろ李明博政権の正当性を高める逆効果をもたらすであろう。

市民社会の潜在的な抵抗勢力の中で最も重要な集団である労働組合についても、二大労総間の競争・対立関係が激しいうえに内部分裂さえも激しく、労働組合の総団結は容易ではないだろう。加えて労働組合運動に対する国民世論が最悪の状態に置かれているため、批判と抵抗の役割をキチンと果たすのは難しいだろう。

したがって李明博政権に対する批判と抵抗の責務は、相当な期間は主として進歩的市民団体に与えられるだろう。市民団体の活動に関連して、二つだけ話そうと思う。一つは少し前に指摘した李明博政権の弱い部分に、議会活動監視などの方法を動員して積極的に打撃を加え、非民主性や腐敗・不正を積極的かつ持続的に暴露しなければならないという点であり、他の一つは野党(国会や行政府の内部事情に対する情報提供など)、労働組合(必要な時にはストライキ)を始めとする李明博政権に対する抵抗・批判勢力との、実質的で体系的な連帯を実践しなければならないという点である。労働組合においては、自らに不足した社会的正当性を埋めることができる方案として、『社会公共性闘争』を強化し、進歩的な市民団体との実質的な連帯を必ず成し遂げなければならないだろう。

 



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