サーブ

 単純にテニスをボールの打ち合いとして楽しむのであれば、ストローク中心の練習さえすれば、ラリーが続くようになって楽しめるようになります。しかし、試合となると、プロでも素人でも、初心者でも上級者でも、実は全体の1/3近くのポイントはサーブとリターンまでで決まってしまいます。それにもかかわらず、スクールのレッスンやサークルの練習ではストロークとボレーが大部分で、サーブはせいぜい5分程度、リターンは全く練習しないこともあります。体を温めるため、最初に球出しとストロークをやるのはいいのですが、もっとサーブに時間を割くべきだと思います。

 

 

● サーブの基本

 サーブを打つときにまず重要なことはラケットヘッドを走らせることです。これを身につけるには、体をネットに対して正面に向けて腕だけでラケットを振ってみます。その時、クルンと手首をひねって一回転させるようにラケットを振ってみましょう。すると、ラケットヘッドがいったん落ちてから持ち上がる八の字の動きをするようになります。グリップの持ち方はコンチネンタルとすることで、手首を返したときにちょうどボールが正面で捕らえられます。下半身を全く使わずにこの基本動作だけで、アマチュア同士であれば十分通用するサーブを打つことができるようになります。むしろ、ここから下半身の動きを加えることで、逆にサーブの威力が落ちたり、正確性がなくなったりしてしまいます。

 もう一つ重要なことはトスアップです。トスアップは利き手ではないほうの腕を使って上げるため、慣れないうちは良い位置に上がらないのはしょうがないですが、実はこれも下半身を全く動かさずに上げてみると意外と簡単に良い位置に上がります。関節を使わないことや、ボールを投げずに手が届く一番高いところで置くように上げること(バスケットボールのレイアップシュートの感覚)、トスを上げきるまでボールではなく空中の打点を見続けること、などのコツがあります。

 さて、ここまでできるようになったら、下半身含む全身の使い方を覚えていきます。トスアップをした左腕、左腰、左足を1本の線と捕らえて、左腰がベースラインの内側に来るように弓なりの体勢をとり、左手でトスアップしたボールを指差した状態にします。あとは、左手をギリギリまで下ろさないようにして、ラケットヘッドを走らせて右手と左手を入れ替えます。このとき、目線を打点に合わせて打ち切るまで見続けること、及び打ち下ろさずに打ち上げることが重要です。

 これらの基本をすべて組み合わせれば、非常にいいサーブが打てるようになります。どのようなときでも、ヘッドスピードを落とさずに振り切りましょう

最後に、「98%入るサーブ」を覚えると試合で非常に強くなります。女性の方だと下回転の掛かったバウンドの低いサーブを使う方もいますし、男性の方なら緩めのスピンサーブを使う方もいます。ダブルフォルトを続ければ相手がどんなレベルの人でも勝てませんので、今まで書いた基本から多少外れても確率の高いサーブを1つ覚えておくことをお勧めします。

 

 

● サーブのコース

 サーブのコースには一般的に、「センター」「ワイド」「ボディ」の3パターンがあると言われます。アマチュアの場合は、相手のバックサイド側に打つだけで勝率があがります。バックハンドが得意な相手の場合は、基本センターとしてたまにワイドやボディに打つのがいいでしょう。

 

 

● フラットサーブ

 フラットサーブは初心者が最初に習うサーブで、最初に書いたサーブの基本だけで打てるようになります。このサーブを打つには、ラケットの中心1点をボールにぶつけて、こすらずに弾くように打ちます、トスアップはボールの落下点と体を結んだ直線上、打つ瞬間体の向きはほぼネット正面方向とします。最もスピードの出るサーブですが、その分入る確率も低くなります。そのため、ネットの上すれすれを通すようにする必要があります。

 

 

● スライスサーブ

 スライスサーブはほぼ真横の回転を与えてカーブを掛けるサーブで、フラットサーブに比べて入る確率が高く、バウンドが低く、スピードが落ちる特徴があります。トスアップはボールの落下点と体を結んだ直線上よりもやや右寄り、ボールのやや右側をなでるように打ちます。セカンドサーブなど、確実に入れていきたいときに使うといいでしょう。

 

 

● スピンサーブ

 スピンサーブは一般的なサーブ技術の中で最も高度で、上級者でも打てない人がいます。トスアップは落下点と体を結んだ直線上よりもかなり左寄り、体は閉じた状態のまま目線をボールの真下にしてボールが落ちてきたところを真上に打ち上げるつもりで振りぬきます。他のサーブがラケットの届く一番高い位置で打つのに対して、それよりも20〜30cm低いところで打ちます。そうしないと、ボールの下側を打つことができないからです。打点が非常に重要なサーブなので、完全に打ち切るまでボールをガン見しましょう。さらに、コースを狙えるなら、相手のバックサイド側に打つとより効果的です。

 

 

● その他のサーブ

 初心者のうちはサーブが入らず、ダブルフォルトばかりとなってしまいゲームがつまらなく感じてしまうことがあります。そんなときは、アンダーサーブ(下から打つサーブ)を使ってもかまいません。アンダーサーブはルール違反でもなんでもありませんので堂々と使いましょう。上級者の試合でも奇襲としてスライス回転の掛かったアンダーサーブを浅い位置に落とせば、エースになることもあります。

 スピンサーブの発展系として「ツイストサーブ(またはキックサーブ)」があります。トスアップをスピンサーブよりもさらに左寄りにして、打ち上げる回転と時計回りのスクリュー回転(ジャイロボールと同じ回転)の合成の回転を掛けます。うまく打てるとバウンド後レシーバーからみて左方向に跳ねるようになります。

 

 

● コグマの独り言

 初心者の頃は特にトスアップで苦労すると思います。私も中級クラスに上がるまでトスアップが非常に苦手でしたが、あるきっかけで急に安定するようになりました。それまでは左手の人差し指と中指の間くらいにボールを置いてトスアップしていましたが、あるとき親指と人差し指の間に置いてあげてみたところ、人差し指と中指の先っぽにボールが引っかかることがなくなって安定するようになりました。俗に「コップ持ち」といわれる持ち方です。あとは、腕であげずに、左腰で押し上げる感覚にすると安定することが多いです。

私はサーブが大好きです。特に男性プレイヤーの方は好きな方が多いですが、女性に比べると「好きなのに苦手」という人が多いように思います。アマチュアでサーブが圧倒的に有利な武器になる人は相当な上級者だけです。せめて、リターンサイドと五分くらいになれるように練習したいですね。

最後にとっておきの秘訣。オーバーするフォルトはいいフォルト、ネットに掛かるフォルトは悪いフォルトといわれます。ネットに掛かるフォルトは、振りぬかずに置きに行ったときに多いためです。サーブはいつでも自信を持って振りぬきましょう!

 

 

戻る