カルカッタ
カルカッタは思ってたよりもずっと都会でした。
そしてウワサに聞いていたほど無茶苦茶な町だとは最初思いませんでした。
しかしボクの印象としては、やたらと貧富の差が露骨に出ている町だな と。
ぼくが泊まったゲストハウスの前の通りは、「路上生活者」でいっぱいでした。 ただ日本と違うところは、かれらはおそらくカースト制度によるものなのか別にそれが あたりまえだと周りのみんなも思っているようで そんなに気にしていない様子でした。 ただボクには何かやるせませんでした。 あまりにもこの町は そう思わせる事が多すぎた。 別にてめえはヨソモンなんだから関係ねえじゃねえか!と言われても、 ヨソモンでは済ましてられない何かが僕の中で叫んでいました。 手も足もない子供が、皿を口にくわえて人ごみの中を 「ウォーウォー」とだけ言いながらお金を求めていました。 誰も気にもとめず過ぎ去って行くなか、雑踏の中でその子とぼくは出会いました。 ぼくらは目が合い、ぼくは立ち止まりました。 ぼくはあまりもの壮絶かつ衝撃的な風貌に、 正直どうしていいかもわかりませんでした。 一生懸命「ウォーウォー」とお金を求める迫力と、 姿かっこうに圧倒され、立ちすくんでしまいました。 なぜか何も、、、何も出来ませんでした。 それと同時に物凄い「恐怖」がぼくを襲いました。 そして通り過ぎてしまい、人ごみのなかでわからなくなってしまいました。 けっして他人事では済まされない何かがありました。 ぼくは何をしているんだろう。ぼくらはどんな世の中を作りたいんだろう? なぜこんなにスカッとしない気持ちになるんだろう。 なぜぼくは自分を正当化する理由を探そうとするんだろう? こんな状況に出会って、内心とても取り乱してるくせに 冷静さを決めこもうとしてしまうんだろう? ぼくは彼の訴える純粋な目を忘れない。 |
あまりのすごさにシャッターをきることなど出来ない状況が
ここカルカッタには多々ありました。
それはボクの記憶のなかにだけ思い出としてとっておきます。
普通の歩道で生活するはだかの子供とインドのサラリーマン
誰にも見向きもされない生死さえ不明の人
靴磨きの少年 ポカリの味なし版のようなココナッツジュース
ある日、ぼくは腹いたで町をさまよってました。
困ってるぼくをみてひとりのインド人青年が声をかけてきました。
彼はボクの事情をきいて、「マサラソーダ」を飲むといいよ!と
教えてくれ店まで案内してくれました。
マサラ(香辛料)を混ぜただけのジュースでしたが、
すぐに痛みは止まり、彼にお礼と少しの御馳走(カレー)をおごりました。
彼はそれからもずっと付いてきて何かと世話をやいてくれました。
そしてやたらとチャイを飲みに行こう!知り合いの店があるんだ!と。
もちろんそれに了解してついて行くほどバカではありませんでした。
しまいには、ぼくの部屋へ招待してほしいと。 日本人と友達になりたいんだ と。
君の病気を治してあげただろ? 信じてくれよ と。
たしかに助けてくれた。それは感謝している。しかし、はっきり言ってやりました。
オレはお前をこれっぽっちも信用していない。
案の定、そいつは有名な泥棒で、グループでの窃盗犯でした。しかもそいつが
言ってたことは全てウソだった。ムンバイの学生で旅行中であることや、3日後には
ダージリンへ行くことなど・・・ なぜなら1週間すぎたころにもまだカルカッタをぶら
ぶらしていて次のエモノを仲間と探していたからです。
ぼくはカルカッタを去る日、彼に会ったので(彼は動揺してました)こう言いました
ようフレンド!ダージリンはどうした?
そこがダージリンなのか?
仲間たちはぼくにいろんなモノを投げつけてきたが、ぼくは全く動じなかった。
だんだんとインド人を、人を、見る目が養われてきました。
中にはイイやつもいる。
何か企んでるヤツは空気でわかる。感覚で。
ここで身につけた感覚は今でも(日本でも)しっかりと身についてます。
それから何日もカルカッタを歩き回りましたが、何かが自分の中で変わってました。
何を見ても、何に出会ってもすごく客観的に物事をみてました。
汚い安宿に帰って、冷たい水しか出ないシャワーを気合で浴びながら
はっきりと思いました。
オレの旅はもう終わったんだなあ。と。
洗濯をしながら青い空を見上げて、日本じゃ何年かかっても体験できない非常に
濃く走り抜けた自分の経験をなつかしんでる時、自分の旅が自分のなかですでに
終わってることに気付きました。
それからもストライキがあったりいろいろあったけど、いわゆる普通の日常に
しかすぎませんでした。インド人とのやりとりも「すべてが見え」てもう新鮮では
ありませんでした。
そうなんです。もう「旅」ではなく、「生活」になっていたのです。
ネパールで出会った20代の日本人の女の子を思い出しました。
彼女は、ネパールで店をかまえてたんですが
「憧れてネパールに店を持ったけど、ここにいればいるほど日本に帰りたくなる。
日本の良さが見えてくる。日本に帰りたい。」 と言ってました。
「旅」 という感覚はスリルがあり新鮮でおもしろいが、
それが「生活」になってしまうと全く話は別になると実感しました。
ぼくは、遠く離れてしまった故郷「日本」が懐かしくてたまりませんでした。
日本の独特の文化、こまやかさ、日本人のもつ優しさ、風土、すべてが美しく
すばらしいことに気付きました。
悪い面をみればキリがない。外をみればみるほど近すぎて内側にあるものの
見落としがちなすばらしさを再確認できる。
日本へ帰ろう!
それから1週間後、ぼくがはじめて期待と不安でドキドキしながら訪れたなつかしい
インドの首都「デリー」へもどることにしました。