ひんやりすずしいやまあるき  

伊吹夜間登山 

三合目からピークハント編   もどる
日程 2000年8月15日〜16日 メンバー CL秦、横山 形式 ベースキャンプ式ピークハント

琵琶湖の北東部に位置する伊吹山地の主峰、伊吹山(1,376m)は石灰岩の
固まりのような岩山。山中にはほとんど木陰が無いので夏の登山者には人気が
悪いが、その分見晴らしがいいので空の広さを楽しむには絶好のロケーション 
である。気候や時刻などタイミング良く行動すれば陽気な登山が楽しめる    



 
 
世間ではお盆休みの暑い一日。偶然満月の日に休みになったので涼を求めて夜間山行を企画した

 今回は夕方から車で出かけた。大阪出発は18時。盆休みの帰省ラッシュと逆方向なので米原までスムースに走れた。
登山口の伊吹三之宮神社境内でこんこんと湧いている清水をボトルに詰め込んで林道を登る、三合目着は21時頃なのでキャンプ場はパスし林道で幕営した

午前3時、のっそりと起きだすと夕べの満月がまだ高いところからこうこうと照らしている。乾いた空気がひんやりとしている、テントはジッパーだけを閉じ、静かに息を潜めるようにして歩き出した。
五合目くらいまではスキー場のゲレンデなのでススキ等の背の高い草むらが続いている、サワサワと涼しげな音を立てて風が通り抜ける。あちらでもこちらでもキリギリスやコオロギ達がひっきりなしに鳴き続けている

 やがて行く人かの登山者がヘッドランプを揺らしながら追いついてきた。一合目の林の間を通り抜けてきたので明かりが無いと寂しいのだろうか、月夜に眼の慣れた私たちには眩しい位の明かりを照らしかけてくる、「お早うございます」深夜らしく息を潜めた物静かなあいさつを交わす
 
 五合目の山小屋を越える頃から石ころだらけの道が始まった、硬い石灰岩なので夜露に濡れてよく滑る
気を引き締めて歩く、やがてジグザグの道になり登りが少し急になってきた 
 あえぎつつ後ろを振り返ると伊吹町の夜景が一望できる、遠くに一直線となって続く光の道は名神高速道路だ、まだ帰省帰りの車の流れが続いているらしい

 足下に眼を落とすといつしか石ころから岩ともいえる大きさになってきて足の置き場に気配る必要がある、美しい夜景にも夜空の星座にも眼を向ける余裕が無くなってきた

 
六合目。息を整えるため立ち止まって仰ぎ見ると星空の広がりを妨げるように大きな真っ黒な山容が 広がっている、その真っ暗な固まりの中程できらりきらりと光が走る、ヘッドランプの明かりか時折声も聞こえる。

 八合目の棚には小さな祠があった、たしか古びた避難小屋があったはずだが、十人くらいが並んで座れるほどの広場になっている 
 吹き抜ける冷気に体が冷えたからといって相棒の横山氏がシャツを着替えだした?! 
山岳会のベテラン会員なのに又も綿のシャツを着ていたんだと
 
 やがて一歩、又一歩と体を持ち上げているのを意識するほどの登りになってきた、あの岩の先で、次の草付きでと、息をつく場所を探しつつ脚を持ち上げる
 吹き抜ける風は肌に冷たい。なぜか時折生ぬるい瞬間が有る。草付きに貯まった空気なのだろうか、まるで 山の体温のように私たちの体にまとわりつきながら山肌をはい上がっているようだ
 
 見上げる峰が無くなり、直接岩肌をよじ登るようになればようやく九合目。
 山上散策路のガイドロープ伝いに山道を詰め、正面に祠が見えてきたらついに山頂だ。 
 落ち着いたら厳しい冷え込み対応に合羽を着込む。山上の東側へ回り込んだら大勢の人たちが明るみ始めた東の空に注目している。我々も測候所のそばに陣取りご来光を待つことにした



 待つこと40分余りの5時23分、ようやく東にわき上がった雲の脇から遠慮がちにご来光が姿を現した。期待の大きさのわりには呆気ない登場だったので待ち受けていた人たちの間に唖然としたような、妙な間があった。
見る間に雲海がざわめきだし立ち上がりそして崩れて消えていった
 
 山上周辺は薬草園になっていたせいでアザミやニッコウキスゲ位は見覚えがあるがその他はどうにも見たことのない種類の草花ばかり、なんでも伊吹の固有種までが有るそうな、どうにもなじめない。花はピークも終わったようで生き生きした花が見あたらず、撮影意欲も湧かない種類ばかりでした

気が済んだら夜間登山の鉄則通り下山を急ぐことにした。ぐんぐん高度を上げる太陽はけっして優しくは無い。すでに暖かいとは言い難い気温になってきている。いそがなくっちゃ干からびてしまう

やがて7時15分登山道に日が射しだした頃、五合目に到着。 林道に着いた頃にはテント内はむせかえっていた。ジッパーを開け放し、スカスカにして山の新鮮な風を入れる。 しっかり乾かして無事に撤収しました

 

7時40分ほんの一晩だったけど大満足気分で帰途につきました、でもまだ体力も時間も有るので近江八幡に泳ぎに行って来まーす

 とまあ今回の夜間登山はこんなプランでおこなってきました

十年くらい前までは伊吹夜間登山というと、ものすごい人気でした
近江長岡駅からピストンバスが夜通し往復し、登山リフトも四合目まで数珠繋ぎ。
さらには頂上までの山道がヘッドランプの明かりでくっきりと浮かび上がっていました 
 
近年ではすっかり寂れてしまい駅前からのタクシーさえもろくにつかまらないしまつです
今から歩きたいという方は米原駅からタクシーを利用するといいでしょう

 秦 宗時

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