方針

試行錯誤の機械設計から科学技術を身につけたエンジニアの設計へ。

 近年、若手技術者の技術力が落ちていると言われています。ゆとり教育の影響だそうです。
 ではつめこみ教育世代の技術者に技術力があるかといえばかならずしもそうとは思えません。簡単な機構でさえ、どの部分に、どのような方向に力が発生するかを正しく示すことのできる技術者はそれほど多くありません。
 20世紀前半、機械産業においてはドイツを代表とする欧米先進国が、科学技術をベースとした技術力で市場を席巻していました。20世紀後半、我が国は力学的知識に基づいた設計技術力というよりは,日本人特有の粘り強さにより何回も試行錯誤を重ねることで、なんとか目標機能を実現する「ものづくり」によって欧米に勝るようになり、一時は「Japan As Number One」と呼ばれるほどまで成長しました。

 21世紀はデジタル技術の進歩により、加工技術や図面作成がデジタル化され、顧客ニーズに応じた生産が短期間で可能となってニーズが多様化し、開発スタイルも少品種大量生産から多品種少量生産に移行するようになりました。そのため、ひとつの製品の開発に割り当てられる期間が短くなり、開発設計要員や開発費も少なくなっています。その結果、試作機をベースに、時間と工数をかけて改善によって作り上げる従来の手法では、コストで中国、韓国、台湾といった人件費の安い新興国に勝てなくなってきました。
 このような状況下にあって、もはや、作ってみて不具合があれば修正しながら仕上げるという従来の試行錯誤的開発プロセスは通用しなくなっています。その対応策として、かなり前からフロント・ローディングと呼ばれる開発プロセスへの移行が提唱されています。しかし、一部の先進企業を除いてフロント・ローディングはそれほど浸透していません。なぜならばフロント・ローディングを実践するためには構想段階での技術計算が不可欠ですが、試行錯誤的開発プロセスを重視してきた企業は、試作前に機能、性能を机上で予測するために必要な解析力を養ってこなかったからです。
 岩淵技術事務所では、今こそ科学技術をベースとした設計力が必要であり、そのためには機械設計の基礎学力である力学を正しく理解できる人材を育成することが重要であると考えています。岩淵技術事務所は、機構解析CAEを利用した設計法は人材を育成するだけでなく、設計に科学的根拠を与えることができるので、そのような設計方法を推奨し、広めたいと考えています。