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森林施業法について
シミュレーション可能な間伐の方法
間伐の方法には、寺崎式とか吉野式とかいろいろと流儀がある。これらはいずれも熟練した技能者の技能に依存する面が強く、はっきりとしたシミュレーションが可能なアルゴリズムを作ることは困難なように思われる。かく申す私はこのような方法については教科書で読んだくらいで深くは知らない、というより、全く知らないといった方が良い。
間伐のシミュレーションとは、ある方針で間伐を続けた場合の林の生長過程を予測してみることである。
したがって、今やろうとしている間伐の結果、林がどうなるかを事前に想定して、間伐方法や以後の間伐間隔、間伐率などを決めるために用いることができる。
下記の長伐期林業のところに書いた正木モデルを用いる場合、これははっきりとしたアルゴリズムがないと作れない。そこで、次のような6通りのアルゴリズムで正木モデルを作成してみた。カッコ内は略称である。
1)全層間伐で、周囲8m以内の胸高断面積合計が大きな順に選木する(全層)
2)全層間伐で、ランダムに選木する(全層ランダム)
3)照査法間伐で、大径級(50cm以上)、中径級(30-45cm)、小径級(15-25cm)の各級別に周囲8m以内の胸高断面積合計が大きな順に選木する(照査法)
4)照査法間伐で、3級内それぞれにランダム選木をする(照査法ランダム)
5)下層間伐、全体の胸高直径の小さなものから順に選木する
6)上層間伐、全体の胸高直径の大きなものから順に選木する
いずれの場合にも、15cm 級以下の木は間伐対象にしない。
また、間伐木の後に再植林するケースを選択できるようにしている。
シミュレーション用のエクセル表、と使用方法を添付する。
シミュレーションの結果
初回間伐年を35年とし、10年間隔で20%間伐を繰り返すと、蓄積は横ばいかやや下がり目になる。したがって、蓄積を増やすことを目的にする場合には、間隔を広く取るか、20%以下の間伐率にする必要がある。
(全層)の場合、選木は全体的に満遍なくおこなわれるが、やや小さめの木が選木される傾向になる。この場合、再植林しても枯死するケースが多くなる。平均的な個体寸法と蓄積の生長は大きい。
(全層ランダム)の場合、選木がやや集中する部分が生まれ、穴が開く傾向が出る。このような場所に再植林されたものは消えることはなく適当に生長する。個体の大きさと蓄積生長は(全層)に劣る。
(照査法)と(照査法ランダム)の場合にも、全層の場合と同様な傾向がある。当然、個体寸法の分布は全体的であるはずであるが、再植林がなければ、大きい方に偏っていく。
結果はケースバイケースである。
長伐期林業
最近の話題は、長伐期林業です。
第二次大戦後、国土復興のために木材需要が急騰し、早く、木材を生産しなければならないという要求からか、短伐期林業が行われるようになりました。ところが、世の中が落ち着いてくると、クローバリゼーションとかいうことで、木材も世界貿易品目として重要なものになってしまい、世界的な競争の中に置かれるようになってしまったのです。こうなると、いい加減な若い木材で、しかも、コストの掛かったものは取引材料として失格と言うことになってしまっております。30年たてば売れるようになるはずのものが、全く売り物にならないということです。これが、短伐期育林の結果です。こんな林が日本中に一杯です。
そこで、何とかと言うことですが、その思考の過程で、もっと長い間育てれば、売り物になるだろうという長伐期林業と言う考えが出てきたというわけです。
長伐期林業では、個々の木が大きくなるように間引き、つまり、間伐を繰り返しながら、残った木の生育を図っていくという方法をとります。したがって、繰り返される間伐は収益の機会であり同時に育林の役割も果たすわけです。したがって、間伐を上手く繰り返すことができるような体制を作らないといけません。最終的にも、いっぺんに皆伐をして、従来型の再造林をするということはコストの面で困難です。従来の造林方法は成林するまでにヘクタールあたり150万円から250万円もかかってしまいます。だから、収穫・再造林も工夫したやり方をしなければなりません。それで、帯状や群状に部分的に皆伐・更新を繰り返して全面更新をするようなやり方や一部母樹を残して伐採をして、天然更新を図るとか言う方法が考えられるわけです。ドイツではそんなこともやっているのですが、日本ではあまり例がありません。
そこで、私も参加したあるグループで、このたび、長伐期育成をやるとどういうことになるのかという研究をして見ました。もちろん、時間も費用も十分ではありませんから、何もかも調べたというわけではありません。現存のデータを集めて、コンピュータでシミュレーションをしただけのものですが、その結果について、まとめたレポートをpdfファイルで提供したいと思います。レポート1、レポート2、シミュレーション用エクセル表、エクセル表の使い方
照査法施業
長伐期林業は、間伐を繰り返して残された樹木を大きく育てていくわけですが、最終的に、一度に皆伐して再造林することは、従来のようにやることは困難です。そこで、育林のやり方を工夫して、永久に間伐を繰り返して、収穫と同時に育林を行っていく方法があります。このような方法を択伐と言います。これは商業的な造林事業が行われる前には、一般的に行われていた方法です。天然の林から木を切ってくるだけの行為は昔から行われていたのです。今でも、一部の天然広葉樹林などで、大きい木だけ切り出してくる択伐という施業法がありますが、これなどは、まさに古代から変らない方法なのでしょう。
これをもっとデータに基づいて、永久的に毎年のように同じ量のできるだけ大量の収穫ができるように森林管理をしてゆく方法が考案され実行されています。この方法が照査法です。
照査法のやり方というか、教科書に相当するものは森林環境のほうからも取り出せるようにしてあります。
北海道有林で、すでに50年にわたってこの施業が行われてきた森林が北見の近くの置戸というところにあります。
この林については、北海道職員によって完全なデータが揃えられております。
これらをまとめたものをpdfファイルにして提供したいと思います。
ドイツの択伐林用ソフト
照査法の流れをくむドイツの択伐林施業では、各地に試験林を設けており、そのデータを元にした予測ソフトを開発利用している。2004年10月にフライブルク林業試験場で貰ったそのソフトにかんするペーパーを翻訳したものをpdfファイルで提供する。ペーパー1、ペーパー2 これらのソフトにより一斉林形から択伐林形への誘導方法などが示されるということである。