序章
「――……うして」
漆黒の闇の中、少女の声が静かに響いた。
最初はほとんど聞き取れないほどに小さかった少女の声はだんだん強くなり、最後には感情を抑えきれなかったかのように、叫んだ。
「何故? どうしてっ!?」
そう言った後、少女は力尽きたかのようにその場に崩れる。
「もう戻れ…な…いの……?」
そう呟いた少女は全身にひどい怪我を負っていた。
けれど、彼女が地面にへたりこんでいるのはそのせいではなかった。
彼女の中にあるのは怪我による体の痛みではなく、心の痛み。
怪我をしていることすら忘れてしまうほどの、今まで感じたことの無い、強い、強い喪失感。
少女の目からは涙が次から次へと溢れてくる。
少女は流れる涙を止める術も知らなかったし、止めようとも思わなかった。
そんなことをしている余裕なんて無かった。どうすればいいのか分からなかったから。
――どれくらいの時間そうしていただろう。
少女はゆっくりと立ち上がり、そして意志をこめるように、小さく呟く。
「諦めないから。」
少女は手を強く握り締める。
彼女の声はさっきよりもしっかりしたものになっていた。
「いつか、いつか必ず…、きっと助けるから…!」
少女の懇願とも言える誓いの言葉が闇の中に溶けていく。
一つの物語の終わりと、始まり。
全てはこの夜から―――…
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