小春日和
「あ、あのね」
隣に座っていた真衣がそう切り出した。
彼女にしては珍しく歯切れが悪い。
言いにくいのか、どう言おうか考えてるのかくるくる表情を変えながら苦悩している。
おもしろいのでそのまましばらく眺めていると、やっと口を開いた。
「一緒に出かけたいなぁと思って…」
「それってデート?」
そう返すと彼女は赤くなってうつむきながらも小さく頷いた。
かわいいなぁ。
そう言ったら照れ隠しなのか、怒りそうな気がするから口には出さないけど。
でも、言われてみれば付き合い始めてからデートなんてしたことがない気がする。
一緒に住んでるのだから会わない日というのもそうそうないし。
そして、彼が真衣のお願いを断るはずもなく。
「うん。今度の休みにでもどっか行こっか。」
笑顔でそう言うと、真衣はぱっと顔をあげて嬉しそうな顔をした。
それからしばらく二人でテレビを眺めながら話をしていたが、急に静かになったので隣を見ると、完全に寝入っていた。
すーすーと寝息を立てて、無防備な事この上ない。
前から思っていたことではあるが、彼女には警戒心というものがおおよそ欠けている。
信頼されているということなのかもしれないが、ここまで安心しきられているのも複雑である。
はぁ、とため息を吐くが何だか起こす気にはなれなくて。
しばらく経って真衣が自分で目を覚ますまでそのままでいた。
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