「お前、いつまで寝てんだよ」

朝のまどろみの時間。
休日の至福のひとときを無愛想な声に邪魔された。
ちょっと待て。

「なな・・・何でいるのよ! 乙女の寝室に勝手に入るなぁ!!」
「誰が乙女だ。ヨダレたらして寝てたくせに」
「なぁ・・・っ!! 適当なこと言わないでよ!」
「寝言は言ってたぞ」
「嘘だ!」

睨みつけながら侑城の表情を探ってみても、からかってるのか本当なのか判断がつかない。

「馬鹿――っ!!」

起き抜けで頭が働かないせいで尚更口で勝てないから、せめてもの腹いせに手近にあったものを投げつけてやった。
何か妙に手ごたえがあると思ったら、投げたの目覚まし時計だった・・・。まずい。逃げよ。



「お母さん! 勝手に侑城部屋に通さないでよ!」
「いつまでも寝てるからでしょう?」
「休みなんだからいいじゃない!」
「いいじゃない寝顔くらい。減るもんじゃなし。結婚したらどうせ寝顔なんて見られ放題よ」
「けっ・・・」

寝ぼけてるのはどっちだ。いきなり何を言い出すのさ。

「ゆ、侑城にはそんなコト言わないでよ!?」
「どうして?」
「どうしても!」

とっさに頭に浮かんだのは小さい時のコト。

もしかしてまだ気にしてんの、あたし?

自分で呆れつつも、はあ、とひとつため息を落とした。



・・・・・・誰も相手がいなかったら、か。




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