ほんとは怖いくせに強がってるのが可愛い。
とってもこわがりです
小都はホラー映画が苦手。怯えた顔、というかそれに耐えて何でもないように振る舞おうとしてるのを見るのが楽しくて、たまに見せたりもする。
けど、苦手なものはまだあったらしい。
外は鬱陶しい雨。多分そのうち止むだろうって当てになるんだかどうだか分からない天気予報は言ってたけど、とりあえず今はけっこう荒れてて、雷まで鳴ってる。
まあ、家の中にいることだし、別に雷だろうが雪だろうがどうでもいいんだけど、どうも小都の様子がおかしい。
正確に言うと、雷がひどくなり始めてからおかしい。ということは。
「小都、雷だめなの?」
そう言うと、俺からも目を逸らした。明らかに動揺してる。
「そ、そんなことないですよ・・・?」
「さっきから窓見ようともしないのに?」
「ぐ。見れま・・・」
そう言って、窓に目を向けたと同時にぴかっと光って大きな音がした。
ついでに、電気も消えた。
停電か。
まあ、そんなことよりも。
「大胆だね、小都」
雷と突然の停電に驚いた小都が、勢いよく抱きついてきたせいでバランスを崩してそのまま倒れた。
つまり、小都に押し倒されてる形になってる。
「ふぇ・・・っ?!」
俺の言葉に、ようやく今の状況を把握したらしい小都が、暗がりの中でも瞬時に顔を赤く染めたのが分かる。
慌てて起き上がる小都の動揺っぷりがおもしろい。
「何今更照れてるの? この間は俺の腕の中で眠ったくせに」
「あ、あれは・・・っ!!」
この間、俺に抱きついたままで悠然と眠りについていたことを指摘してやる。
起きた時の小都はいじめ甲斐があったなぁ。
酔ってた時の記憶がまったくなかったから、あることないこと吹き込んでみた。
どこまで信じたのか分からないけど「もうお酒なんて飲まない・・・!」と泣きそうになりながら言ってた。
まあ、いい心がけだね。
あんなの、あちこちでやられたらこっちが困る。
そんなことを考えつつも、また落ちた雷の音に身を竦ませる小都をなだめるように撫でてやっていると小都がぼそっと「優しい先輩のが怖い」と呟いた。
へえ。
「じゃあ、期待に応えようか」
「へ?」
聞こえてなかったのか意味が理解出来ていないのか、きょとんとしている小都の顎を捉えて引き寄せる。
しばらくして唇を放すと、小都が真っ赤な顔で抗議してきた。
「いきなり何するんですか・・・!」
「予告すればいいの? それに、小都のためにしたのに」
「何がですか!」
「キスしてる間、雷のこと忘れられたでしょ?」
「―――っ! 帰るっ」
「この雨の中?」
「うっ・・・」
「そんなに俺といるのが嫌なら、他の部屋に行ってるけど?」
そう言って、立ち上がろうとする。
勿論、本気で離れる気なんてなく、押されると逃げるくせに退かれると弱いことを知ってるからこその行動。
案の定、動く前に服の端を引かれた。
小都なりの、精一杯の意思表示。何か泣きそうな顔してるけど。
ちょっと苛めすぎたかな。
でも―――
「嫌じゃ、ないもん・・・」
小都がそんなだから、悪いんだよ。

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