もうちょっと危機感持った方がいいんじゃないかと思う。
しんらいかんをもってもらうのがたいせつです
普段はいらない警戒心をむき出しにしているくせに、肝心なところで危機管理が足りない。
俺が言うのもなんだけど。
だまされる度に「もう信じない」と言いつつ、すぐにそんなこと忘れてる。
今だって、そうだ。
ついこの間その台詞を聞いた気がするんだけど、疑いもなく出された飲み物を受け取ってる。
別に、毒をもってるわけじゃない。
ただの炭酸飲料水。
「これ飲ませるとおもしろいのよ」って小都の母親が教えてくれたもの。
まあ、折角だし。
どうなるか、見てみようかと。
そんな考えに気付く様子もなく、おいしそうに飲んでる。
別にむせるわけでも何でもなく、普通に飲んでる。
と、思ったのも束の間。
何だか様子がおかしい。
顔がちょっと赤い気がするし、目もとろんとしてる。
これは、もしかすると。
「・・・酔ってる?」
熱を出したわけでも、眠いわけでもなく。
コーラで酔っ払う人がいるって聞いたことあるけど、小都もそうなのか?
「小都?」
顔をのぞきこんで呼びかけると、小都の方からぎゅっと抱きついてきた。
あー・・・これは酔ってるな。
「うー、あついー」
舌足らずな口調で、涙目になりながらそう言う。
・・・泣かせるつもりはなかったんだけど。
というか、提案者は俺じゃない。この状態を勧める親ってどうなんだ。まあ、別にいいけど。
小都の頭をぽんぽんと撫でてから、水をとりに行く。
すると何かが不満だったらしく、真っ赤な顔で、涙目で、睨みつけてくる。
「小都、おいで」
手を差し出すと、ちょっとためらいつつも寄ってくる。
何か、なつかない猫を手懐けてるみたいな気分。
「せんぱいのばかー」
「うん、ごめんね」
あやすようにして、髪を撫でながら彼女を抱き寄せる。
大人しくされるがままになってる小都はいつもより素直だ。
普段なら最初は焦って反抗してくるのに。
しばらくするとおとなしくなるんだけど。
「・・・でも、すき」
胸に顔を埋めるようにして、そう呟く。
不意をつかれて一瞬髪を撫でていた動きを止めたけど、小都も何故かぴくりとも動かない。
・・・・・・。
「・・・小都?」
勿論というか、返事はなく。
・・・やっぱり、こうなるわけだ。
警戒心ないなぁ。
普段から計算なんて出来てないけど、酔ってる小都は普段以上に純粋すぎて、油断できない。
お酒は勿論、炭酸もしばらくは禁止させよう。

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